はじめまして!なういず(Twitter:@nowism_sports)と申します。柏サポ3年生です。


さて、もうやく再開したJ1ですが、待ち受けるは過密日程。例年以上に選手層の厚さや若手選手の活躍が各チームの命運を分けると予想されます。

そこで本記事では、レイソルの期待若手選手の1人であるマテウス・サヴィオ(以下、サヴィオ)に焦点をあてこの試合をレビューしていきたいと思います。


目次

  1. おおまかレビュー
  2. レイソルのシームレス攻撃とその不発
  3. サヴィオの特徴
  4. サヴィオとクリスティアーノの比較

※本ブログのデータはSPORTERIA及びFootballLABから引用しています。


1.おおまか振り返り


昨シーズンの2位のFC東京とJ1に復帰した柏の1戦。

スターティングメンバーはお互いレギュラー選手を数名欠く形。過密日程を見据えたのでしょうか。


どちらのチームも前線の選手で完結するカウンターがストロングポイントで、お互いがお互いの良さを消すことに注力した試合となりました。

参考までに1節の札幌戦のスタッツと比較すると、シュート数、走行距離、スプリント数は大きく減っていて、再開明けのコンディションを考えたとしても、お互いを牽制しあった1試合と言えるでしょう。

フォーメーション図フォーメーション図


基本スタッツ

基本スタッツ

試合はディエゴ・オリヴェイラの負傷やヒシャルジソンの退場などのパプニングはあったものの、CKから千載一遇のチャンスを掴んだFC東京が勝利しました。


MOMは決勝ゴールを決めた渡辺剛でしょう。

この選手は去年のルヴァン杯でもレイソルからゴールを決めていて、柏レイソルのセットプレーにおける脆さを1年前から把握していたと思われます。おそろしやおそろしや。


攻撃スタッツ - 渡辺 剛


渡辺のルヴァン杯でのゴール


さて、相手の警戒を打ち破ることができなかった柏レイソル。

しかし去年の戦場はJ2。レイソルを全力で警戒して対策してくるチーム、時には攻撃を捨ててスコアレスドローを狙って来るチームをなぎ倒してきました。

警戒され、それを打ち破るのは慣れているはずです。

では、どうしてこの試合では警戒網を越えられなかったのでしょう。


主な要因として、

  1. FC東京の選手のクオリティが単純に高い
  2. 再開明けでコンディション不良
  3. クリスティアーノの欠場及びサヴィオの動き

などが考えられます。どの要因も一理あると思いますが、SPORTERIAから分析できる要因として本日は③に注目していきます。


J1に復帰して間もないレイソル、そのスーパーサブであったマテウスサヴィオをご存知ない方もいらっしゃるはずなので、

レイソルの攻撃の特徴→サヴィオの特徴→サヴィオとクリスの比較

という順で、この試合とサヴィオに切り込んでいきます。



2.レイソルのシームレス攻撃とその不発


J2時代の柏レイソルは、シームレス(複数の選手が途切れなく滑らかに連動したポジショニングをする)な攻撃でレイソル攻撃網を破ってきました。

具体的には

  • 右サイドのクリスティアーノが左サイドに流れて起点を作る
  • 江坂がフィールドを広く歩いてマークを撹乱させる
  • 左SBの古賀太陽が内に絞って右SBを高くあげる(3バック化)

など、選手が本来のポジションから大きく離れたポジショニングをし、他の味方もそれに連動して攻守に意外性のある動きをすることで、J2の警戒網と戦ってきました。


まずは、クリスティアーノが左サイドで起点を作ったゴールを2つほど紹介します。

1つ目は77秒ごろ。


2つめはサヴィオのゴールです。



次に、江坂のポジショニングの特徴について、第1節札幌戦の江坂のヒートマップを表示します。比較用に同じく4123で左サイドハーフをつとめるイニエスタ・大島僚太のヒートマップも掲載します(同じく1節)。

ヒートマップを比較すると江坂は右サイドや低い位置でもボールタッチをしており、ピッチ上を広く使うことで、クリスティアーノやオルンガがより活躍できる下地を整えていると捉えられるでしょう。

ヒートマップ - 江坂 任

ヒートマップ - アンドレス イニエスタヒートマップ - 大島 僚太


続いて、江坂のこの試合のヒートマップを表示します。

前節同様ピッチ上のいたる箇所でボールタッチをしているものの、濃い緑色の部分が前節に比べて右サイド前方の1箇所に固まっていることがわかります。


ヒートマップ - 江坂 任


つまり、今節の江坂はレイソル警戒網を崩すような動きができていない、レイソルはお得意のシームレス攻撃ができていないと考えられます。

その原因の1つとしてこの記事ではクリスティアーノの不在(=サヴィオの動き)が考えられるのではないでしょうか?

クリスティアーノとサヴィオの比較に入る前に、知らない人のために俺らの宝マテウスサヴィオの紹介をさせてください。



3.サヴィオの特徴


マテウス・サヴィオ。ブラジル出身。23歳。

昨シーズンは期限付き移籍でフラメンゴから加入。今季から完全移籍。

U20ブラジル代表の10番を背負った経験もあり、そのポテンシャルは計り知れません。

昨シーズンはたった1043分の出場で7ゴール4アシスト、主に左サイドや中央のスーパーサブとして1試合0.6ゴールのペースでゴールを積み上げました。

柏サポの多くは、周りがオルンガに警戒している間にサヴィオが覚醒してJ1をぶち抜けると信じているに違いありません。


さて、そんなサヴィオの魅力はパスやシュートの正確さ、キープの上手さです。

個人的なベストシーンはこれです(1分32秒ごろ)。後ろからのボールを上手くキープし、クリスティアーノへドンピシャなクロス(ロングパス?)をあげました。このクロス難易度めちゃくちゃ高そうですよね。


クリスティアーノが"剛"だとしたら、サヴィオは"柔"の選手。そんな印象があります。

では、クリスティアーノに変わって出場したFC東京戦、サヴィオはどのような成績を残したのででしょうか?

ちなみに去年は左サイドや中央がメインで、クリスティアーノにかわっての出場はほぼない選手です。




4.サヴィオとクリスティアーノの比較


まずは攻撃の個人スタッツを見ていきましょう。

サヴィオはパス成功率73%と自慢のパスセンスを象徴する結果でした。

シュートが少ない試合展開であったものの、シュート0本(チーム総シュート10本)とラストパス1本は寂しい結果でもあります。良くも悪くもサヴィオの堅実さが伺えます。


比較用にクリスティアーノの第1節のスタッツを掲載します。

パス成功率は41%であったものの、シュートは10本(チーム総シュート26本)でした。クリスティアーノは、荒削りでもとにかくゴールにつながる難しいプレーを好み、サヴィオと対称的であることが伺えます。


攻撃スタッツ - マテウス サヴィオ


攻撃スタッツ - クリスティアーノ


続いて、ボールタッチです。

サヴィオのボールタッチゾーンは「Y」を横に倒したような形です。このことから、サヴィオはセンターサークルの高さでボールを受け、縦に攻めるか内に切り込むかという2択のプレーをしていた可能性が考えられます。

比較用にクリスティアーノのボールタッチです。

注目は「PA内」と「中央~左レーン」でのボールタッチです。

クリスティアーノはPA内で複数回ボールタッチをしていますが、サヴィオはPA内タッチが0です。クリスティアーノは中央~左レーンに流れるプレーが見られますが、サヴィオは中央より左のボールタッチが少ないです。

ヒートマップ - マテウス サヴィオ

ヒートマップ - クリスティアーノ


つまり、サヴィオはクリスティアーノが得意だった意外性のある動きが苦手であることが伺えます。これによって柏レイソル得意のシームレス攻撃は機能せず、江坂やオルンガのポジショニングが変化し破壊力が減少してしまったと考えられるでしょう。


レイソルは攻撃のリスク管理がしっかりしているチームで、クリスティアーノが前目でプレーする分、瀬川(や控えの神谷)の守備意識が高く、誰かが意外性のある攻めをする時は江坂が絶妙にバランスをとります(詳しくはこのブログ)。なので、サヴィオはもっとオラオラ攻めても守備にほころびがでることはないと思われます。

サヴィオが自身の堅実なプレーの殻を脱ぎ捨て、”剛”なプレーをできるようになった時、柏レイソルは更なる爆発力を持ってJ1を勝ち進むことができるでしょう。レイソル包囲網を破る鍵、過密日程を握る鍵はサヴィオにあると思っています。


5.最後に


ところでみなさん、サヴィオのチャントの原曲をご存知でしょうか。

正解は、細川たかしの「北酒場」です(歌詞)。


「北酒場」はアバンチュール(火遊び的・冒険的)な恋愛を歌った歌で、一夜限りの恋愛ロマンを求めて酒場で煙草をふかしながら素敵な女性を待つ、そんな大人な男性向けのおとぎ話です。

23歳のサヴィオ青年にはまったく似合わない歌ですし、彼の堅実なプレースタイルとも大きく乖離しています。


ですが、この「アバンチュール」こそサヴィオに求められているものなのではないかと思います。大人のやんちゃで冒険的な色気、選手を後押しするサポーターとして素敵なチャントだと思います。リモートマッチが終わってスタジアムに行けたら、全力で北酒場チャントを歌いたいですね!



"アバンチュール"なマテウスサヴィオがJ1を席巻し、昇格即優勝。そしてサヴィオがレアンドロ・ドミンゲスの再来として評価される。そんな日を私は信じて待っています。