1、走行距離・スプリント回数(ファジアーノ岡山)
図=figure:SPORTERIA提供
着目したいポイント
スプリント王「27番 木村 太哉 選手」
岡山の象徴的選手、人気のある選手として、多くのサポーターに愛されている選手が、27番 木村 太哉 選手なんですが、雉球さんが、「可視化された」と表現されていましたが、まさに仰る通りで、私は、ここを「人気のある理由が可視化された」とも表現できるのではないかと思います。
岡山は、伝統的に走る選手は愛されてきてるんですよね。今節対戦する田所 諒さんとか、現在飲食店をされている関戸 健二さんとか。もちろん、おもしろいムードメーカー的な人柄も愛されている選手なんですが、まさに名良ファジ晃さんもその点、とても推されてましたよね。
シャドースプリント王「50番 加藤 聖 選手」
ヒートマップ(50番 加藤 聖 選手):図=figure:SPORTERIA提供
ヒートマップ(88番 柳 貴博 選手):図=figure:SPORTERIA提供
この図を見ながら何か違いがないかなと思って見比べてみたんですが、実際にみた印象から仮設を立てると、50番 加藤 聖 選手が、17番 末吉 塁 選手みたいにボールを持って駆け上がったり、スペースに何度も走りこんだり、全力で戻って守備したりという印象は、あまり持っていなくて、実は、ポジショニングが良くて、最初から高い位置で受けたりとかしてる回数が非常に多いなと試合を観ながら思ってたんですよね。
実際に、最後のところで、結構きつそうな頭の動かしかたとかしてたんで、あれ?印象以上に走ってるかも感じてましたが、データとしてとんでもない数値が出て、凄く走っていたことが分かったわけなんですよね。
それがこの図を見て気が付いたのは、受ける位置が、88番 柳 貴博 選手が、ちょうど、中間の辺りで、受ける回数が多いですよね。この赤い点がボールタッチの位置ですので、50番 加藤 聖 選手は、後ろ目も多く、前も一定数多いですよ。
つまり、流れの中で、ボールがない内に、高い位置まで上がってしまっている。だから、見えないところで、かなり走ってる。ファジスキーさんもこの点、指摘されてましたし、私も試合中にXでポストしたのもそこなんですよね。
かなり高速で、打ってるので、伝えたいことが伝えきれてないですが(笑)
(ポジショニングを工夫して)上手く立ち回っている。的なニュアンスです。
ただ、もちろん、前線にずっといる訳ではなく、守備もしていたので、そのポジショニングをするために、どれだけ走っているかということですよね。
このデータだけだと、これ以上は難しそうなので、次のデータにいきましょう。
2、パスソナー・パスネットワーク(両チーム比較)
パスソナー・パスネットワーク(ファジアーノ岡山):図=figure:SPORTERIA提供
パスソナー・パスネットワーク(京都サンガF.C.):図=figure:SPORTERIA提供
・岡山で共有された意識「J1でも高い位置」
京都の選手が、横パスの意識が若干あるのに対して、岡山は、ほぼ縦へのパスだけになっています。これは、京都のプレスの影響を最低限に抑えることができていたのに対して、京都はプレスの影響を受けて、横パスを選択したシーンやバックパスを選択したシーンがあることを示していると思います。
後は、岡山の基本方針として、低い位置であまり持たない。高い位置でのプレー時間や機会を増やすという岡山のサッカーの基本となる部分を徹底できたことも意味していると思っています。
岡山対策が進んだり、前線で収まらない試合では、後ろから繋ぐことにもトライしないといけない部分はでてくるとは思いますが、それでも基本的には、J1でも「縦に縦に」という意識は、徹底されると思います。
・より明確になった左右非対称「左で作って右で決める」
データを見なくても選手の特徴を理解していれば、図をみなくてもはっきり分かるのですが、左にパスで組み立てられる選手が集中していて、右には、屈強な力技や高さ、運動量を武器にした選手が揃っていて、左と右とでは別チームみたいなんですよね。
チームによっては、一体性を持たせるため、似た選手を集めるチームもありますが、岡山は、左と右とでは全くの別チームになる。J1でもここは、変わらないのかと。パス数の部分を見ても10本近く違う選手もいますので、役割が明確に違うということは確かでしょう。
守備スタッツ(24番 藤田 息吹 選手):図=figure:SPORTERIA提供
右で欠かせない選手が、24番 藤田 息吹 選手です。右の選手が競り勝ったり、プレスで追い込んだところの回収役として、抜群の活躍をみせたのが、24番 藤田 息吹 選手です。
右には、守備が上手い選手、特にセカンドボールを回収できる選手を採用することで、右のフィジカル的な武器はより活きると感じますね。
岡山の24シーズンの安定感があったのもやはりこの24番 藤田 息吹 選手の存在があったからで、J1でもその力を存分に発揮して欲しいと思う一方で、負担も大きいので、3番 藤井 海和 選手とかが、どこかでレギュラー争いに絡んでこれたら面白いですよね。
3、ボールロスト位置
ボールロスト位置(京都サンガF.C):図=figure:SPORTERIA提供
・無失点に繋がった岡山の守備の鍵のかけかた「危険な芽を摘む守備」
正直、ここまで出るかという感じなんですが、なんというか、FWに入る手前で、ほぼ奪っている。ここが、この試合で勝負を分けたポイントであったと思っています。
色々な仮説を立てることができますので、1つ1つ説明していきましょう。どれが正解というよりも複合的な部分で、何パーセントその可能性が占めるかというイメージで、受け止めていただけたらと思います。
・中盤でのセカンドボール回収
このデータが次の内
①京都のパスやドリブル→岡山の選手が触ったタイミングでボールロストと判定
②京都のパスやドリブル→岡山の選手が触った→五分五分のボールを岡山がマイボールにできた時、ボールロストと判定
③また、②が①のタイミングか、それとも②が②のタイミングなのか。
この辺りは、中の人ではないので、分からないですが、仮に②で、③が②の場合。
セカンドボールを回収できていたことで、そこのボールロストが多くなっていると解釈するのが、自然に感じます。
・FWの前でのパスカット
岡山の武器は、プレスでパスコースを限定して、DFへパスなどが来た時に、FWの選択肢を減らすことで、パスが入ってもそこで奪える可能性が高いことにあります。ここが、上手く機能していた可能性もあるでしょう。
実際は、ここで、止めきれないシーンもありましたが、J2でも機能していた守備の形ですし、この試合でも3トップにあまりいい形でパスが入っていなかったですから、それがデータとして、出ていたとも解釈できるでしょう。
・空中戦での勝利
パスカットではないですが、高いハイラインで、空中戦で競り勝ったことで、ここが赤くなった説も有力かなと思います。自陣深くで、競り合うというよりは、結構前で競り合って、競り負けても、周りの選手がカバーして防ぐという岡山の基本的な守り方。
これの成功率も一定数あったことで、ここが赤くなった説。
・まとめ
個人的には、この辺りが上手くいったことで、ゴールの前の4エリアが赤くなったのかなと。ただ、守備が上手くいったと手放しで喜べない理由としては、J1だとやっぱり、ここで守備する回数が増えるということもデータとして出てしまったかなという部分はあると思います。
岡山が前でプレーすることも前のプレスで奪うことも簡単ではない。そういったデータでもありますので、その辺り、J2でも昨季ライバルであった横浜FCにどこまで戦えるか、実践できるか。注目ですね。
4、総括
今回、はっかり出ているポイントにフォーカスして、作成してみました。実際には、中の集計する側では、より深い分析をしたうえで、勝利にどう繋げるかという分析が行われています。
何が正解とかではなく、色々な可能性を見出し、データをどう勝利に繋げるのか。そういった分析を中の人はしている訳で、そのデータがない中で、開幕に勝利できたことは大きいですね。
後は、開幕の1試合を挟んで、チームがどう変わるのか?SPORTERIAさんで、公開されているデータにどういった変化がでるのか。楽しみですね。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino
図=figure:SPORTERIA提供
主観を重視したレビューもよろしくお願いします。
コメント(0)