重症化する川崎のアンカー問題


 昨年の川崎は平均保持率が54.6%とボールを持ち相手を圧倒するスタイルが目立っていた。しかし、勝利を挙げたもののこの試合の保持率は47%と川崎らしくない試合運びとなった。この原因は永井謙佑選手を初めてとするインテンシティの高いFWがFC東京には在籍していることや松木玖生選手を1つ前に出すことで4vs4のプレスで前線で奪いきりにいくスタイルをFC東京が好んでいることも1つの原因である。しかし、それをも打開できるビルドアップ力が川崎フロンターレにはあったはずだ。なぜ、川崎の思うようにボールが動かせなかったのか、それは絶対的なアンカーが今のチームにいないからだと考える。この試合のスターティングメンバーは開幕に先駆けて行われたFUJIFILMSUPERCUPの後半と同じメンバーであった。鬼木監督がジョアン・シミッチ選手からマルシーニョ選手に変えざるを得なかった理由からこのアンカー問題を紐解いていきたい。昨シーズン主にアンカーを務めた橘田健人選手(現在もベンチ外となっている)のポジションにはシミッチ選手が入っていた。そのシミッチ選手に対しても浦和レッズは激しいプレスとマークで自由を奪っていった。昨年度の主な川崎攻略としては、パス交換で打開されるのを避け、後ろを5枚にするなど予め引いてゴール前を固めるというのが多かった。しかし、浦和レッズやFC東京は前からハメていく積極的な守備が目立っていた。そのため、今の川崎には相手が厳しいプレスを仕掛けてきてもプレス回避ができる程のビルドアップ力が必要になってくる。その後方での組み立ての中核を担うのがアンカーである。この場合、カゼミロ選手のような守備的なスキルよりかはジョルジーニョ選手のようなNo.6の動きで相手の第一プレッシャーラインを回避し攻撃の初期段階を引っ張るタイプが求められる。そんな役割が求められるシミッチ選手が厳しいマークに逢ったことで大島僚太選手が入れ替わりでNo.6の役割を担うことでプレス回避を試みたが、↓の図のようにかなり後ろに重たい状況になってしまった。結果前への推進力を失い、後半開始からはほぼ4-2-1-3と言えるようなNo.6の役割を外しロングボールを多用する戦術を用いるためシミッチ選手からマルシーニョ選手に交代がされた。橘田選手も復帰できず、新たなビルドアップも見出だせないまま迎えた開幕戦もSUPERCUPと同じ試合運びになり、チャナティップ選手や車屋選手からマルシーニョ選手の裏という中長距離のパスを多用してきた。当然ショートパスに比べてパス成功率は落ちるため、その原因からもポゼッション率の低下が生じたとも言えるだろう。得点もセットプレーからであり崩して流れからの得点を奪うにはかなり苦戦しているように感じ取れた。


 さて、ACLの前倒しとなる次節の対戦相手の横浜F・マリノスも前から積極的に奪いに来るチームとなるが果たしてこのアンカー問題は解決されているのか、何か新しいビルドアップは見出だせているのか、いずれにせよ橘田選手の復帰は待ち遠しいが橘田選手の復帰で改善できるのか、このアンカー問題をいち早く解決しなければ川崎のリーグ3連覇は厳しくなるだろう。