ヴィッセル神戸は世界トップクラスのメガクラブFCバルセロナからイニエスタとサンペール、他で言うとベルギー代表のディフェンダーフェルマーレン、元日本代表の山口蛍と酒井高徳などのスター選手を積極的に補強した。しかしこれらの戦力を集めても序盤は神戸のチームスタイルが明確ではなく、補強後のファーストシーズンは苦戦したイメージが強い。今シーズンの順位も17試合終了時点で12位につけているが、チームの戦術は明確になっただろうか。7月4日の第2節のサンフレッチェ広島戦と9月30日の第29節の名古屋グランパス戦のデータから読み解きたいと思う。


<試合データ>

7/4(第2節) vs広島

スコア:0-3(負)


<スターティングメンバー>


<スタッツ>


チーム全体パス成功率 629/890=71%


<選手ごとのパス成功率>

-MF-

・イニエスタ

パス成功率85% 

パス割合17%

・サンペール 

パス成功率91%

パス割合 12%

・山口蛍

パス成功率 89%

パス割合 12%


-SB-

・酒井高徳

パス成功率 85%

パス割合 11%

・西大伍 

パス成功率84%

パス割合 10%


〈その他の人との比較〉

・田中順也

パス成功率50%

パス割合2%

・古橋

パス成功率85%

パス割合5%


9/30(第2節) vs名古屋

スコア:1-0(勝)


<スターティングメンバー>


<スタッツ>


チーム全体のパス成功率558/899=62%


<選手ごとのパス成功率>

-MF-

・イニエスタ

パス成功率80%

パス割合12%

・サンペール

パス成功率99%

パス割合13%

・山口蛍

パス成功率87%

パス割合14%


-SB-

・西大伍

パス成功率89%

パス割合12%

・酒井高徳

パス成功率81%

パス割合14%


〈その他の選手の比較〉

・古橋

パス成功率82%

パス割合6%

・菊池流帆

パス成功率82%

パス割合4%


<分析>

 この2試合は勝ち負けで結果に差は出てしまったものの、データにおいて共通する点がいくつかある。

 まずはパス成功数だ。スタッツを見ると広島戦は629:261、名古屋戦は558:341となっている。これに加えてどちらの試合もボール支配率が上回っている。そしてさらに選手別のデータを見るとMFのイニエスタ選手、サンペール選手、山口選手パス成功率とパス割合が高いことがわかる。

 これらのデータを見てわかる通り、ヴィッセル神戸はパスを用いてポゼッションサッカーを戦術にしているだろう。これは主にイニエスタ選手とサンペール選手が大きな影響を与えているのだろう。この2選手は上記の通りFCバルセロナから移籍してきた選手だ。このFCバルセロナは伝統的なティキタカサッカー、つまりパスを回すスタイルのチームだ。このティキタカを知る彼らを中盤に置くことでチーム全体でパスをつなげ、相手の守備の隙を探すサッカースタイルをヴィッセル神戸は戦術にしているのだろう。

 もう一つ注目すべき点はサイドバックの2選手だ。上記の選手別データを見てわかる通りどちらの試合もサイドバックの西選手と酒井選手のパス成功率と割合が中盤の選手とあまり変わらないのだ。ここからわかることとしては中盤の3選手とサイドバックの2選手の主に5人でパスを回しているのだ。これはプレミアリーグのリヴァプールのサイドバックであるアレクサンダー・アーノルド選手とロバートソン選手を生かす戦術と似た様な戦術が見られる。

 さらにフォワードである古橋選手、菊池選手、田中選手のパス割合が少ないことから、ティキタカサッカーで中盤でボールを回し、隙を見てフォワードにパスを出す戦術であることが読み取れる。


今は順位が低迷していて調子が悪そうに見えるヴィッセル神戸だが、イニエスタ選手加入当初のころと比べると戦術が明確になり、チームのスタイルが確立している。欧州トップクラスのFCバルセロナやリヴァプールの戦術も取り入れている今後のヴィッセル神戸のサッカーからは目が離せないだろう。