以前、スプリント定義変更の巻(スプリント定義変更の巻 | SPORTERIA)を投稿しました。

2023シーズンが終了したため、振り返ってみる。


スプリントの定義は「時速24km以上」から「時速25km以上」に変更された。

2022シーズン、2023シーズンのチーム別スプリント数平均を下表にまとめた。

全チームの平均スプリント数は177.2から123.7と53.4減少し、2022シーズンの69.8%にまで落ち込んだ。

「時速24km以上」から「時速25km以上」とたった1km変更されただけで大きく数値は変化した。


単純な数字だけでは影響がよく分からないので、各項目(CBPなど、下表の項目欄参照)とスプリントの相関係数を計算した。

各チームの各項目ごとの平均値を計算し、その相関係数を計算した。

2019シーズン以降の相関係数を計算し、下表にまとめた。


2019~2022シーズンに一貫性がみられ、2023シーズンのみ特異な数値になるかと予測したが、そんなことはなかった。

相関分析だけの結果ではあるが、スプリント定義が変更されても、明確な変化はないように思える。

スプリントと項目ごとに関係はあるが、シーズンごとに変化しており一部を除くとあまり一貫性は見られない。


といこうとで、ここからは2023シーズンだけの相関係数を見て行く。

スプリントと最も相関関係が強かったのがスローイン(相関係数0.72)であった。

散布図は下記の通りである。

スプリント回数が多いとスローイン回数が多くなるという関係である。

双方ともに多いのが広島、双方ともに少ないのが新潟であった。


次に相関関係が強いのはパス(相関係数-0.69)であった。マイナスの符号がついているように負の関係である。

スプリント回数が多くなるとパス本数が減るという関係である。

スプリント回数が少なくてパスが多いのが新潟、スプリント回数が多くてパス本数が少ないのが名古屋や京都であった。


次に相関関係が強いのがボール保持率(相関係数-0.65)であった。マイナスの符号がついているように負の関係である。

スプリント回数が多くなるとボール保持率が減少するという関係である。

スプリント回数が少なくてボール保持率が高いのが新潟、スプリント回数が多くてボール保持率が低いのが名古屋であった。


以上3つの項目と相関関係について述べた。スプリントとパス回数やボール保持率の関係は容易に想像できるが、スプリントとスローインの関係はよく分からない。

疑似相関の可能性も捨てきれない。

そこでスプリントとスローインの関係についてもう少し調べた。

下図はスプリントとスローインの関係に、ボール保持率を加えた図である。

項目間の数値は相関係数である。

スプリントとスローインは正の相関関係、スプリントとボール保持率は負の相関関係、スローインとボール保持率は弱いながらも負の関係にある。スプリントが多くなるとスローインが多くなるのか、スローインが多くなるとスプリントが多くなるのか、因果関係までは分からないが、ボール保持率を介して見ると、スプリントとスローインの関係は疑似相関ではないように思える。

なお、符号の積【0.72×(-0.65)×(-0.38)】がプラスであるため、三者関係に矛盾はない。


次は攻撃回数を加えてみた。

スプリントとスローインは正の相関関係、スプリントと攻撃回数は弱いながらも正の関係、スローインと攻撃回数も正の関係にある。この図からは、攻撃回数が増えるとスローインが増えるのではないかと推測できる。また攻撃回数が増えるとスプリントが増え、一周まわってスプリントとスローインの関係が成り立つように思える。

スプリントとスローインの関係は、ボール保持率で説明するよりも攻撃回数で説明する方がしっくりくる。


以上、最初の目的からは大きく変わってしまったが、スプリント定義変更について調べてみました。

毎度のことながらFootball LABさんからデータを拝借しました。