ザスパの今シーズンの6勝は、すべて先制した試合となっている。

つまり、今シーズンのザスパはまだ逆転勝ちをしたことがない。


今節も町田はセットプレーの流れから先制すると、そのあとは守備を固める。ザスパに許したシュートは3本。スタッツの面では完勝となった。

では、ザスパはどうしてシュートが打てなかったのか。本記事では相手を動かす工夫が少なかった可能性について検討していく。


基本スタッツ



町田の群馬対策


町田は得点後、5バック気味に引き、守備を固めた。

左右の両CBである奥山と岡野は、群馬の両シャドーである田中加藤を徹底的に監視していた。

特に、岡野は加藤が降りる動きを見せた際に、センターサークル付近まで付いていく果敢なマークを行っていた。

この両CBの動きで、加藤がボールを運び攻撃を主導することが難しくなった。



フォーメーション図


守備スタッツ - 奥山 政幸守備スタッツ - 岡野 洵



群馬の対抗策


もちろん、町田の徹底マークに群馬も対抗策をみせた。

相手のCB2枚がシャドーを意識しているので、1トップの平松がキープをしやすい状況だった。

ヒートマップをみると、平松が右に流れることが多いことがわかる。クロスも3本と攻撃の起点となっていた。



攻撃スタッツ - 平松 宗ヒートマップ - 平松 宗


ただし、平松が攻撃の起点となることで、フィニッシュに関わる人数が減るという問題が発生した。これがシュート数の少なさにもつながった。


顕著だったのが、33分のシーン。

平松が右に流れキープをすると、田中とのコンビネーションで小島が裏に抜け出す。小島がPA内で相手をかわすも、中にいる加藤・山根と距離感があわずクロスを送ることができなかった。


このシーン、加藤・山根はPA内でフリーで受けることにこだわり、足を止めてしまった。その結果、相手DFに周囲を確認する余裕を与えてしまった。

加藤はニアに走り続け、相手DFを動かし続けるべきだったと私は考える。これは平松が得意なタスクだが、平松が起点になっている以上、誰かが替わりをする必要があった。

おのおの得意な動きがあるのは承知の上だが、得点を取るためにはタスクを流動的に入れ替える工夫が求められる。


同様のことが左サイドの立ち位置にも言えるのではないか。



左サイドの密集


以下に、左サイドで活躍した4選手のヒートマップを示す。

注目してもらいたいのが、CB(山中)・WB(山根・天笠)・シャドー(加藤)の立ち位置とヒートマップの形が似ていることだ。


3人の関係性で左サイドを前進したが、大外のレーンでの連携が多いのでシュートまで遠くなっている。

もう少し内側のレーンを使って、相手を動かし隙を作る工夫が必要だろう


例えば、39分のシーン。

加藤・山根で大外でボールをキープすると、山中がさらに外をオーバーラップした。

山中の攻撃参加のタイミングや勢いは素晴らしかったが、ここで内側に走る選択肢もあっただろう。

特に山中は育成年代をMFとして過ごした選手。内側でもたしかな違いを作れるはずだ。



ヒートマップ - 加藤 潤也ヒートマップ - 山中 惇希

シャドーの加藤と左CBの山中

ヒートマップ - 山根 永遠ヒートマップ - 天笠 泰輝

WBとして出場した山根・天笠


風間の復帰


以上が、シュートが遠かった町田戦のレビューだ。

前進はうまくできている。そこからの局面でタスクを流動化し、相手を動かす工夫が必要といえるだろう。

守勢に入った相手を崩せなかったのは残念だったが、風間が8戦ぶりに復帰すると攻撃が活性化するという朗報もあった。


すべての試合を0点で終えられるわけではなく、逆転が求められる試合もある。

今節の反省をどのように活かし、次節以降につなげれるかに注目だ。



攻撃スタッツ - 風間 宏希