前節の逆転負けを教訓にして

 J1第7節の2日目。福岡のベスト電器スタジアムでアビスパ福岡と北海道コンサドーレ札幌が激突した。両チームがリーグ戦で対戦するのは2015年以来6シーズンぶりである。

 リーグ戦では3戦負けなし中の福岡と4試合勝ちなしの札幌という対照的な戦いぶりを見せていた両者の対戦はアウェイの札幌が2-1で勝利した。札幌は3点リードから逆転負けを喫した前節のヴィッセル神戸戦同様に後半は前線でボールが収まらず、押し込まれる展開が続いたが、粘り強くリードを守り切ることに成功した。


両チームのスタメン

フォーメーション図フォーメーション図

 福岡は前節から4選手を変更。センターバックのドウグラス・グローリが累積警告により出場停止。代役には新加入の奈良竜樹が加入後初先発。左サイドバックには志知孝明が2試合ぶりの先発となり、左サイドハーフには本職DFの湯澤聖人を起用。前線には新加入の渡大生が入った。

 札幌は前節から3選手を変更。GKには菅野孝憲が3試合ぶりに、ボランチには深井一希が2試合ぶりに先発復帰。U-24日本代表招集中に負傷した田中駿汰の代役には新加入の岡村大八がリーグ初先発を飾った。


予想通りの展開構図となった前半

 両チームのスタイルは対照的である。堅い守備からの速攻が持ち味の福岡とボールを保持しつつ攻撃的なスタイルを貫く札幌。試合はポゼッションを高めて押し込む札幌とブロックを形成しつつカウンターを狙う福岡という戦前の予想通りの構図となった。

 ボールを保持する札幌だが、福岡の強固なブロックを崩すことができず、シュートチャンスを作ることができなかった。そんな中、試合が動いたのは30分。中盤から駒井善成がクロスを送ると、ファーサイドでアンデルソン・ロペスが頭で合わせて先制点を奪った。その後もボール保持率を高めた札幌がリードして前半を終えた。

 福岡はサイドバックを本職とする湯澤聖人をサイドハーフに据えるなど攻撃的な札幌を意識した選手起用を見せたものの、なかなか攻撃の形を作れずビハインドで前半を終えた。


一進一退の展開となった後半の立ち上がり

 後半に入ると福岡が前への意識を強めて攻めに出た。51分には湯澤聖人のクロスを山岸祐也が頭で合わせるも菅野孝憲に防がれる。しかしこのプレーでコーナーキックを得るとエミル・サロモンソンのクロスに中央で奈良竜樹が頭で合わせて同点とする。移籍後初ゴールは下部組織時代からプレーした古巣相手に貴重な同点ゴールとなった。

 セットプレーから追いつかれた札幌だったが、すぐに攻めに出た。同点ゴールから僅か2分後、深井一希のパスを受けた福森晃斗が金森健志のスライディングを交わすとミドルレンジから左足を一鮮。グラウンダーのシュートがDF2選手の股を抜けてゴールに吸い込まれて貴重な勝ち越しゴールとなった。


猛攻を見せた福岡

 追いついた直後に勝ち越しゴールを許すという苦しい展開となった福岡だが、地元との気温差に苦しみ運動量が落ちた札幌を押し込む。61分には石津大介、吉岡雅和、高さのあるファンマ・デルガドを投入。するとその3分後には志知孝明のクロスにファンマ・デルガドがフリーでヘディングシュート。決定機だったものの、菅野孝憲がゴールラインギリギリでビックセーブ。その後も福岡のペースが続き、札幌は前線でボールが収まらず、苦しい展開が続いた。さらに主将の宮澤裕樹が足を攣り途中交代というアクシデントに見舞われた。

 その後も福岡の時間は続くが、札幌はギリギリのところで粘り強くリードを守っていった。福岡は88分、エミル・サロモンソンのグラウンダーのクロスに山岸祐也が合わせるも枠を捉えることができず。後半アディショナルタイムにはファンマ・デルガドのラストパスを受けた志知孝明がフリーで左足を振り抜く。強烈なシュートだったが、ポストに弾かれて同点ゴールとはならなかった。

 試合はこのまま2-1で終了し、札幌が5試合ぶりの白星を掴んだ。福岡は迫力のある攻撃を後半は見せたものの、あと一歩及ばなかった。


決定力とあと一歩の寄せ

 この試合の明暗を分けたのは決定力とあと一歩の寄せだといえるだろう。決定機の数は福岡の方が多かったが札幌との決定力の差を痛感させられた展開だった。勝ち越しゴールのシーンでももう一歩寄せることができれば結果は変わっていたかもしれない。

 一方の札幌は前節の大逆転負けから見事にチームを立て直した。決して褒められた内容ではなかったものの近年の札幌に足りなかったのはこういったゲームをものにする力だ。ハマれば大量得点もできる高い攻撃力に粘り強い戦いぶりが加われば更に上の順位を目指すことができる。今後の両チームの戦いぶりは要注目だ。