今回は、趣向を変えて、今節で、岡山が苦しんだ秋田のデータにフォーカスを当てて、この試合を振り返ってみましょう。


秋田のサッカーを知る事ができる1つ目のデータは、こちら。

エリア間パス図

これが、どれだけ異質なデータであることが、分かりますでしょうか?


そうです。中央でのパスがほぼ皆無なのですよね。中央での裏でのロングパスがあったとは思いますが、岡山が粘り強く守っていました。ただ、サイドの方には、なかなか密集した守備をするのも難しいですし、サイドからサイドの相手陣地へのパスの方が通り易い事もあって、一定のパス成功率になったというデータでした。


そして、繋ぐための横パスは、ほぼなく、所謂縦ポンを徹底したサッカーであることを示すデータですよね。


後は、ロングパスが多いサッカーであった事をより証明をするには、パスの方向性を示すデータが必要ですよね。こちらを見て見ましょう。

パスソナー・パスネットワーク

どうでしょうか?こちらは、ストレートにデータとして出ていますね。


見ての通り、ほぼ縦方向のパス一辺倒になっています。凄く徹底されていますね。


27稲葉 修士のパス数42もボール奪取力の高さを示すデータでもあります。岡山の攻撃の芽を何度も摘まれて苦しみましたよね。


次にロングボールを入れた後にボールを失った時の守り方と、ロングボールを入れられた時の守り方を示すデータは、こちら。

時間帯別パスネットワーク図

如何でしょうか?分かりますか?


基本的に、前線とDFラインが分断しがちな傾向にありますよね?これは、2つの守り方による事が理由です。


まず、1つ目。ロングパスを入れたが、ボールをロストした場面。この時は、秋田の前線や中盤の選手が、ボールホルダーに対して、ボールを奪って、波状攻撃するために、ハイプレスに人数をかけて行う事で、前線に選手がいる時間が長くなっていたのです。


そして、2つ目。前線でのプレス網を掻い潜られて、ロングパスを自陣に蹴り込まれた、もしくは、運ばれた時に、ボールを奪いに激しく寄せる。そして奪うと、すぐクリア、もしくは、ロングパス。これによって、自陣から中盤、前線へと運ぶ過程が省かれるので、前線とDFラインとでの分断が生じていたのですね。


これで、秋田の攻め方と守り方の基本スタイルは、見えて来たと思います。


では、そこに対して、岡山がどう攻めたか見て行きましょう。

こちらを見て下さい。

エリア間パス図

ヒートマップ - 山本 大貴ヒートマップ - 川本 梨誉

どうでしょうか?岡山の攻撃の意図が、分かりますか?


左右のサイドから攻めようとしていたが、右サイドの方が、効果的に攻めることが出来たいたことが分かりますね。


秋田の32増田 繁人がある程度、中央をケアしていた事に関係しているかもしれないですね。試合を見ていたイメージでは、左右バランスよく攻めていた印象が強かったですが、右の方が効果的だったようです。


以下のデータを見てみましょう。右深くまでいけた理由が分かります。

ヒートマップ - 増田 繁人

ヒートマップ - 加賀 健一

どうでしょうか?ポイントは2つです。


両CBのデータですが、32増田 繁人が中央の競り合いは、両サイドを担当していますが、50加賀 健一は、主に右をケアしていますね。


岡山から見て、左サイドだと、数的不利になりがちになるため、必然的に左サイドより、右サイドの方が深く侵入できたようです。


また、右サイドが多くなったのを示すデータは、もう1つあります。

パスソナー・パスネットワーク

どうでしょうか?ある2選手がポイントですが、どの選手か分かりますか?


41徳元 悠平と28疋田 優人選手です。他の選手が、ロングパスを蹴らされている傾向にある中で、この2選手は、方向や距離が幅広いですよね。


これは、この2選手が、プレスを受ける中でも何かしようと試行錯誤していた事を示すデータです。その結果、縦に近いロングパス以外にも右サイドへの攻撃に移るシーンも少し生まれたと言えそうです。


これを裏付けるデータがありますね。こちらです。

攻撃スタッツ - 疋田 優人

攻撃スタッツ - 徳元 悠平

どうでしょうか?この2選手のある数字がポイントです。どのデータか分かりますか?


そうです。ラストパスが2選手とも2本あります。これが、セットプレーのキッカーのデータを含むのか。それとも流れの中の数のみなのか。


どちらにせよ、2選手とも、セットプレーでもどこに蹴るのか。流れの中でも色々と考えながらプレーする選手なので、そういったサッカーIQの高さが、データとして出たのかもしれないですね。


ラストパスを記録した岡山の選手では、この2選手のみでした。


最後に、セットプレーでなんとか先制できた岡山が、33阿部 海人を投入して、どう守ったのか触れて、今回のフォーカスを締めたいと思います。


狙いが分かるデータは、こちら。

時間帯別パスネットワーク図

どうでしょうか?ちょっと情報量が多いので、分かり辛いかもしれませんが、明確な変化が出ています。分かりましたか?


実は、距離感に明確な変化が出ています。33阿部 海人が入ったフルタイムのデータの後半15分以降では、距離感が近くなっています。


これは、秋田が、ロングパスを前線に蹴り込んで、ボールロストしてしまった時に、セカンドボールやボール保持者に対して、秋田がハイプレスしてきますが、それに対して、岡山は、人数を集める事で、ボール奪取力やボール支配率を少しでも高めるというのが、後半の比較的早い時間帯にFWを一枚削って、CBの33阿部 海大を投入して3バック(5バック)にした狙いです。


これは、攻撃というよりは、明らかな守備固めで、岡山のディフェンディングサードにロングボールを入れられる事を受けて立つという岡山の作戦です。


しかし、ディフェンディングサードにボールを入れられる事を前提とした守備なので、それによって、当然リスクはあります。


それが出たデータは、こちら。

ゴール期待値

どうでしょうか?うん。これは見事なまでに、データに表れますね。


33阿部 海人投入後から、明らかに秋田のゴール期待値が高まっていますよね。でも、これが狙いであった。ある意味、賭けではあったが、それに勝ったのが、岡山。


本来は、自陣でプレーする時間を短くする事が、理想的だが、それが難しいと考えた故の判断であった。難しい取捨選択ではあったが、岡山のここまでの11試合を見ると、相手に合わせて、ある程度形を変えてきている事でも分かる通り、分析に相当力を入れて、準備している事は間違いない。


この試合も分析した上で、試合に臨んだ岡山ではあったが、本当に難しいゲームで、最後のプレーがファールでなければ、ドローどころか逆転もあったかもしれない。


秋田にやりたいサッカーをやられた。でもセットプレーで、得点できた事で、自分達のサッカーの良さを出せなくても、しっかり勝ち切った。


内容が悪い中で、勝利出来たという試合は、今季初で、今までの勝利よりもある意味、次に繋がる勝利かもしれない。


この勝ち点3を活かしての3連勝に期待したい。


文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様


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