1、前置き
一通りデータをチェックした時に、このデータが気になった。それが、ゴール期待値である。これだけ、厳しいデータで、どう勝つことができたのは、岡山の細い分かり辛い勝利の道筋で、データで、探っていきたい。それでは、よろしくお願いいたします。
2、極端に低かった岡山のゴール期待値
正直、ここまで差があるデータとは、考えていなかった。これだけ見ると勝利は、難しい試合であったと感じますね。では、何故、ここまで低くなったのか、理由に迫っていきたいと思います。
3、ゴール期待値の差(パスソナー・パスネットワーク図)
パスソナー・パスネットワーク(岡山)
パスソナー・パスネットワーク(新潟)
まず、1つ目は、新潟の圧倒的なポゼッションにあります。後方からサイドの裏を突く、仕掛ける攻撃に至るまでのビルトアップのミスが新潟は、極端に少なく安定している。よって新潟は、基本的に、サイドを攻略し、中で仕留めるという過程まで、到達していた。それを示すのが両SHの10本間 至恩と33高木 善朗のタッチ数である。中で、どう合わせるかという形まで、新潟は、持っていく事ができていた事を示しています。
次に、この新潟の狙い通りの攻撃に対して、岡山がどう対抗してくのか、チェックしていきたい。
4、DFラインの攻防(個人スタッツ)
守備スタッツ(5井上 黎生人)
守備スタッツ(22安部 崇士)
CB2人の個人スタッツですが、今季最多の両CB合わせて15回を記録。両サイドからクロスが上がって来る事は、リサーチによって織り込み済みで、ボールウォッチャーになることなく、しっかり準備できていたことが分かるデータです。これは、15回のペルティエリア付近での守備でのクリアがほとんどかと思いますが、クロスに対してのクリアだけではなく、毀れ球のクリアや、スルーパスのクリアもあると思いますが、味方同士の距離感や相手選手の位置に対して、しっかりチームとして守れていたことが大きく、その頑張りが分かるデータですね。
もちろん、対応できたのは、CB2人の頑張りだけではありません。
守備スタッツ(11宮崎 智彦)
守備スタッツ(2廣木 雄磨)
SBの2人も高い守備スタッツを記録。これは、後方の守備機会が多いと思います。東京V戦のようにサイドで嵌めたシーンはほぼなく、対戦チームのビルトアップで捕まえることは、ほとんど出来なかった試合で、これは、ある程度運ばれた中で、1対1での対応や、サイドを崩されて、クロスや毀れ球が流れて来た時の対応が多いと思います。これだけを見てを、CBだけではなく、SBを含めたDFラインが如何に集中して守れていたか分かるデータですね。
守備スタッツ(6喜山 康平)
守備スタッツ(7白井 永地)
また、違った角度でみることができるのが、ボランチの2選手の個人スタッツです。このポジションは、普段であれば、毀れ球奪取数が、増えるポジションではありますが、この試合では伸びていません。これは、やはり新潟の攻撃が、サイド攻撃が主体であった事を示すデータだからであり、横からの攻撃に対して、シンプルにクリアする場合は、やはり余裕がなければ、中央にクリアすることは難しい。だからCBが、クリアした場合には、サイドにクリアしがちで、SBやSHの選手がセカンドボールを回収する機会が増えます。よって、毀れ球奪取数が、いつもより少なくなっている。
また、この試合では、高い位置にポジションを取っていたので、ビルトアップの過程で、中央からのスルーパスを許さないための攻防や、サイドから中に侵入してくる際の攻防。そういったものが、主体になっていた事を示すデータです。チームとして、中央をしっかり締めて、サイドからの攻撃に備えるといった岡山の守備の意図を感じます。
攻撃スタッツ(33高木 善朗)
クロス数7を記録。ラストパスも2本。サイドからの主体の攻撃だけではなく、中に侵入しようとしていたことが、データから窺えますね。スタートは、新潟から見て右側であったので、そこからのクロスが入って、中で生え返して11宮崎 智彦が拾うというシーンは多くなった事は、データ通りですね。
守備スタッツ(41徳元 悠平)
守備スタッツ(10宮崎 幾笑)
やはり、両SHの守備スタッツの毀れ球奪取数が多くなっていますね。クリアし切れず、斜め後方に流れることもあるので、それを示すデータでもありますね。
攻撃スタッツ(10本間 至恩)
クロス数が、33高木 善朗より少ないですね。ラストパスも2本記録している上にパス成功数も53本中47本を記録。驚異的な数値ですね。パス交換やドリブルで、中に侵入しようと試みていた事が分かるデータです。岡山として、それを許さない激しい攻防が、行われていた事が岡山のボランチ2人のバランスの良い数字として、出ていました。
さて、新潟のサイド攻撃に対して、攻撃的MFまで交えて守り切った事が分かりました。流石にこれだけ、新潟に持たれて狙い通りの攻撃をされれば、ゴール期待値は、伸ばすのは難しい。では、如何にゴールに近づけたのか。今度は、攻撃面で見て行きましょう。
5、左高右低スタートの攻撃(時間帯別パスネットワーク図)
時間帯別パスネットワーク図(岡山)
前半0~後半15分をピックアップ
ボールが持てない岡山が取った選択は、41徳元 悠平の左SHでの起用であった。狙いは2つ。
1つ目は、クロスを早く入れる事で、ボール奪取後にゴールに迫って行く中で、時間と空間の有効利用である。ゴール前に届いていなくてもクロスが上がっている中で、到達点に到達すれば良く、組み立てて上りを待っておく必要を省く事が可能である。また、そのセカンドボールを回収して、波状攻撃を狙います。
2つ目は、14上門 知樹と41徳元 悠平の完成された連携での崩しである。41徳元 悠平が、出場していた時間帯は、14上門 知樹と41徳元 悠平が近くでプレーしている。14上門 知樹とも良い関係性を構築できつつある20川本 梨誉もその近くでプレーしている。
この時、41徳元 悠平と14上門 知樹を軸に左サイドが高い中で、10宮崎 幾笑は、守備をある程度意識して、低い位置のスタートが多くなっている。20川本 梨誉も絡んだ左からの攻撃が巧く行った時に、裏を狙うプレーも必要最低限に留まっていた。
ちょっと文章が長くなったのとキリが良いので、項目を分けて同じ図を再度あげて、更に見て行く。
6、41徳元を下げた後のプラン(時間帯別パスネットワーク図)
時間帯別パスネットワーク図(岡山)
後半0~30分をピックアップ
41徳元 悠平を速い時間帯で下げて、10宮崎 幾笑の活用を含め、更にリスクを冒して攻めの効率化を計る岡山。41徳元 悠平に任せがちであった左サイドの組み立てをある程度11宮崎 智彦に任せる。加えて、27木村 太哉が、中に侵入していくプレーを含め、中央でのプレー機会を増やしている。
更に14上門 知樹が、左によりがちであったが、中央でのプレーが増えた。これは、温存していた10宮崎 幾笑の活用である。両チームの意図した攻撃のプランでの攻防の中で、時間帯によって攻撃の変化をつけることで、守備の落ち着きを許さない岡山と意図を感じられた。
岡山としては、10宮崎 幾笑の裏への抜け出しや、細かいパス交換での崩しで、攻撃の活路を見出そうというプランであったと思うが、この時間帯から、10宮崎 幾笑がMFからFWに変化したともとれる平均ポジションとなっている。
この変化により、岡山は、少ないチャンスによって、先制に成功した。10宮崎 幾笑を前に押し出す事と、14上門 知樹を中央でプレーさせるこの2つの意図が、実を結んだ形となった。
7、逃げ切った岡山のプラン(時間帯別パスネットワーク図)
時間帯別パスネットワーク図(岡山)
後半30~45分をピックアップ
高いラインを維持して行く中で、この時間帯は、低く守勢に回っている。このデータから分かる通り、守備を意識している中でも下がり過ぎない。これを1つのテーマに、チームとしてコンパクトに保つ事を意識し、バランスを巧く保てていた事が分かる。
これは、長澤 徹監督の時もそうであったが、自陣でのプレー時間を少なくするという意図で、堅守を構築していた。そういった堅守を築いた岡山の良さを有馬 賢二監督が、前に運ぶ力や、ロングパスに頼らない主導権を握る力を入れる事で、チームをアップデートしようと試みていた事が分かる。
9李 勇載に頼る攻撃の脱却。それが、ここにきて攻守で良い方向に出できた。そういったデータである。
8、総括
基本スタッツ
新潟のポゼッションに対して、守備的な組織力でボール奪取力は、岡山になく、新潟のように繋いで、ラストパス(クロス)まで構築できる力では勝てない。そういった難しい状況の中で、勝ち筋を探して、我慢して掴んだ勝利であった。最後に、ここまでの項目を整理して総括したい。
「岡山のプラン」
・新潟の左右からのサイド攻撃に対応するDFラインの守備意識の高さ
・チームとして中央で自由なプレーを制限する守備の形
・左高右低の効率よくリスクを小さくゴールに迫る攻撃プラン
・時間帯によって攻撃に変化をつけるプラン
・ラインを高く保つ事でリスクを小さくする守備方針
・安心安定の5バックプランで逃げ切りの守備プラン
9、ちょっとデータでフォーカス(おまけ)
おまけとして、気になったデータをピックアップ。
守備スタッツ(5舞行龍 ジェームズ)
このスタッツでは出ないが、スルーパスを何度もカットされてまさに壁であった。新潟の堅守を支えている三拍子(高さ・速さ・巧さ)揃った素晴らしいCBであったと思います。
エリア間パス図(新潟)
こうしてみると、新潟のポゼッションサッカーの凄さが分かる。気持ちいいほどパスを回されてしまった。
エリカ間パス図(岡山)
こうして新潟と比べてみると寂しいデータだが、最終ラインを高く保てている事も分かる。チームとして、強く勇気を持って戦えた事が分かる。
個人スタッツ(13金山 隼樹)
シュートセーブ数4(エリア内1)、クロスキャッチ4
まさに岡山の最後の壁として、ゴールを守ってくれた。本当は、項目で入れる予定であったが、忘れていた。今回は、ここでちょっとだけ触れるだけでしたが、素晴らしい活躍であったと思います。まさに守護神。
文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様
コメント(2)
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SPORTERIAスタッフ
2021/6/19 14:36
やっぱり今の新潟の強みは攻撃よりも守備(特に守備の切り替えのところ)だと思うので、逆に悪いボールの奪われ方をしてカウンターのカウンターみたいな状態を作り出さないことが重要なのかなと思いました。
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SPORTERIAスタッフ
2021/6/19 14:38
>5、左高右低スタートの攻撃(時間帯別パスネットワーク図)
その点では、やはりボールを長い時間持たせておきつつ、良い守備の切り替えができない形の攻撃に繋げるのが近道なのかもしれませんね。
そのアプローチはチームや選手の特徴によって変わってくると思いますが、今回の岡山はキッチリそれを遂行できたのかなと💡
>6、41徳元を下げた後のプラン(時間帯別パスネットワーク図)
の部分、たいへん勉強になりました!
ありがとうございます☺