1、前置き
圧巻の岡山におけるデビュー戦となった31梅田 透吾。立ち上がりの苦しい時間帯に、冷静なセーブで、勝機を引き寄せたと言える31梅田 透吾のどこが良かったのか、データ迫っていきたい。
また、ここ数試合のデータを見た時に、違和感があった部分について、少し狙いに気づいたので、そこについても触れて行きたい。
2、抜群のシュートへの反応(GKスタッツ)
GKスタッツ(31梅田 透吾)
まず、着目したいのが、被枠内シュート8本に対して、エリア内シュートセーブ7本という数字。これは、つまり味方選手が一本防いだシュートを除いて、残りのシュートは、全て防いだということです。シュート7本は、試合によっては、チームのシュートの総数であっても不思議ではない数字なので、それを全て防ぐ。これは、とても凄い数字であると思います。
ただ、チームとしては、ペナルティエリア内に侵入を許した上で、シュートを7本も打たれているので、改善の余地があるのと、それだけ琉球の攻撃が良かったという事で、アウェーでの対戦では、難しい試合となると思うので、チームとして、しっかり対策して、試合に臨む必要はある。
また、パスの総数も28本も記録。成功数こそ19本だが、ロングフィードを蹴る回数を考えると、高い成功率であることが分かる。精度の高さや飛距離、弾道の球足という点では、トップレベルではないものの、非常に素直な弾道で、安定していて、純度の高いボールであった。
攻守で、抜群の存在感を個人スタッツだけで、残していた事が分かるが、もう少しだけ、違うデータで見ていく。
3、ビルトアップの関与が分かるパス関係のデータ
エリア間パス図(岡山)
時間帯別パスネットワーク図(岡山)
31梅田 透吾とDFラインの関係性が面白い。縦の関係と横の関係がこの2つデータで見てとれる。これは、単純にDFラインにつけるパス(縦の関係)を出すだけではなく、ビルトアップとして、CBのようにDFラインの1人(横の関係)のように参加している事を示している。こうしたビルトアップは、足下の技術や視野の広さといった部分への味方からの信頼だけではなく、プレーで焦らない揺るぎない自信がないとできないプレーである。
また、成功率が低くなりがちフィード途切れなく通しているので、フィード精度の高さや、何処にパスを出すのかという判断の良さも示すデータである。
4、細かいポジションチェンジと不動のポジショニング(ヒートマップ)
ヒートマップ(31梅田 透吾)
まず、着目したいのが、一番濃いエリアがゴール前に集中しているという点。これは、GKとして一番抑えるべき、中央で守るという意識の高さを示している。中央を基軸に、状況に応じて、細かいポジションの修正を繰り返して、シュートに備えている。これは、ペナルティエリア内からの枠内シュートを7本もセーブしていたのは、決して偶然ではなく、守備の状況を俯瞰的に頭の中で、整理し、危険な所にポジショニングをする事で、ビックセーブに繋げた事が分かるデータである。
また、中央から離れた位置でも左右に広がっているが、これは、先ほど述べた通りビルトアップに関与しているからである。ビルトアップも細かいポジション取りが、重要で、ましてやボールロストしてしまえば、後ろに岡山の選手はいないので、即失点に繋がる。故に、リスクを小さいポジション取りが重要にある。体の向きや、右足で蹴り易い位置へコントロールし易い位置、寄せを受け辛い位置、これらを総合的に判断し、ポジションを取る必要があり、それが出来ているデータと言える。
そして、それが出来ているからこそ、GKでありながら、これだけのタッチ数と、非常に均等というか美しいヒートマップというデータとして現れた。試合を見ていても、総合力の高いGKだとは感じていたが、ここまで4つのデータを見ても、決して足下が巧いGKだけではなく、GKとして、基礎がしっかりとした総合力の高いGKで、SGGK(Super Great Goal Keeper)ある事が分かった。データを確認する前の、実際のプレーを見ていても凄さが分かったが、データを見てみると、より凄さが分かった31梅田 透吾の今後の活躍が楽しみですね。
次にここ数試合で、岡山の選手のポジショニングの工夫が見られ、この試合では、視覚的にもより顕著に出ていたので、そこについて触れておきたいと思います。
5、流動的な意図が示す岡山の形(ヒートマップ)
ヒートマップ(6喜山 康平)
ヒートマップ(7白井 永地)
ここ数試合で、気になっていたデータがあった。それが、7白井 永地のヒートマップが濃くなっているエリアが、左サイドに寄っているという点である。6喜山 康平が、右になっているのかとも考えたが、6喜山 康平も、左が濃くなっているので、どうやら違うようだというのが、この試合で分かった。この試合に、限るのかもしれないが、次の選手をヒートマップを見て欲しい。
ヒートマップ(10宮崎 幾笑)
このヒートマップだけ見ると分かり辛いかもしれませんが、10宮崎 幾笑は、盤上のシステム上は、右SH(OH)ではあるが、このヒートマップを見る限りCHとも言えるエリアが濃くなっている。これは、10宮崎 幾笑が、サイドから仕掛けるのではなく、中央寄り、かつ低い位置で、CHのようにプレーしている事が分かります。
また、SBのように低い位置から高い位置まで、ヒートマップが濃くなっています。これは、守備時には、しっかり下がって、守備をこなし、攻撃時には、前線に向かって行くプレーをしている事を示している。実際に試合を見ていても、裏への抜け出しや、パス交換をしながら上がっていく10宮崎 幾笑のプレーは、印象に残っています。
守り方という点で、違う選手をみていくと違う役割を見えてきます。
ヒートマップ(2廣木 雄磨)
10宮崎 幾笑のように右サイドの深い所での守備機会をあるのかと考えていたが、中にポジション取りをしている。このデータから考えられるのは、疑似的5バックのような守り方をしているのではないかという点である。2廣木 雄磨は、CBの様に中で、受ける守備をしつつSB(WB)のように10宮崎 幾笑がスライドして対応。
10宮崎 幾笑は、攻撃的な選手ではあると思うが、チームのバランスを考えて、10宮崎 幾笑が、中央のやや右と、自陣の深い右SBでの守備を担当している事が分かるデータである。もちろん、イレギュラーな事もあるが、この試合のヒートマップを見る限りは、そういった意図を見る事ができる。これは、逆サイドの同ポジションの選手のヒートマップと比べると分かり易いと思いますので、こちらをご覧ください。
ヒートマップ(41徳元 悠平)
ヒートマップ(11宮崎 智彦)
ご覧の通り、SBがサイドの深い所、SHが、サイドの高い位置が、ヒートマップ上では、濃くなっています。これは、左と右で、選手の特性を生かした攻め方と守り方している事が良く分かるデータではないかと思います。もう少し掘り下げていきます。次の選手のヒートマップに行きましょう。
ヒートマップ(22安部 崇士)
CBながらSBの様に高い位置でのプレーもある。11宮崎 智彦の代わり上がるのも岡山の攻撃の選択肢。41徳元 悠平のSH起用を含め、左サイドでは、人数を集めた攻撃で、局面の打開や、ゴールに迫る仕掛けをしている事が分かる。せっかくなので、同じCBの5井上 黎生人も見て見ましょう。
ヒートマップ(5井上 黎生人)
22安部 崇士と違ってばらつきがありますが、高い位置にも運んでいますね。ばらつきがあるのは、10宮崎 幾笑や2廣木 雄磨との関係性を含め、周りの選手と関係性がありそうですが、CBは、大体こんな感じになるので、22安部 崇士のデータが、特殊であると思います。最後にFWの2選手を観て行きましょう。ここまで来るとフルチェックです。
ヒートマップ(20川本 梨誉)
ヒートマップ(14上門 知樹)
20川本 梨誉は、試合毎に大きく変化する選手ですが、この日は、右サイドに偏っています。ここまで見ていて分かる事は、左サイドは、繋ぐ崩しを主体にしている様に感じます。繋ぐということは、それだけ人数が必要ですが、6喜山 康平、7白井 永地、11宮崎 智彦、22安部 崇士、41徳元 悠平、14上門 知樹といった選手が、状況によって絡む事で、1つの形にしているというのが、ここまでのデータだと思います。
また、20川本 梨誉は、ロングパスでのターゲットでありますので、右サイドが、低く構える事で、ある程度スペースを空けているのではないかと考えています。これに近い主張は、以前のフォーカス(左高右低)で触れたと思いますが、この試合では、その辺りのデータが良く出たのかと思います。
基本的には、右サイドは、10宮崎 幾笑、2廣木 雄磨が、スペースに機を見て飛び出していく事と、20川本 梨誉が、マークを分散、もしくは、薄い所という点で、岡山の選手が少ない(人数をかけた逆サイドの)右サイドにポジショニングし、ロングパスを収めるというのを意識して、プレーしていることが分かります。
後は、10宮崎 幾笑や2廣木 雄磨は、1人でボールを運べる選手のように力押し出来る選手ではないので、20川本 梨誉のように収めて、周りの選手を活かす事ができるポストプレーができる選手の近くに、配置するのは理に適っている。
そして、14上門 知樹は、20川本 梨誉に、パスを受けに近づいてくる事もあるが、岡山において、左右SHとOHの全てを任された経験があることを活かして、状況に応じて、ポジション取りをしているようで、攻撃のフリーマンとしてプレーしている。
この様に、岡山が、選手の特性を活かして、機能するように戦っている事が分かる。これは、監督の指示だけではなく、選手同士でもお互いの特徴を理解できた事で、そういったプレーやポジショニングになっている部分もあると思います。今後の連携や戦術的な意図を含め、より完成度を高めて欲しい。
5、総評
31梅田 透吾の凄さ、ヒートマップから見た岡山の戦い方、選手の活かし方について触れてきましたが、如何だったでしょうか?
ヒートマップは、スタメン全選手チェックした関係で、長くなってしまったので、まとめ方が難しかったですが、岡山の戦い方というのが、少しだけ分かってきました。チームとして、上位に勝利できた事で、ある程度、自信を取り戻すことができたと思いたいところである。
また、琉球戦のサッカーをデータで改めて見てみると、チームとして戦えていることが良く分かったので、本日の京都戦での勝利する事も可能であると信じたい。今日のフォーカスで、触れた戦い方は、あくまで対琉球という意味合いもあったと思うが、京都戦では、どういったデータがでるのか。今から楽しみである。
6、後書き(気になったデータ)
パスソナー・パスネットワーク(琉球)
エリア間パス図(琉球)
上位と対戦が続いている事もあるが、相手にパスを回されている試合が目立つ。岡山が、主導権を握って勝つ。そういったサッカーができると、やはり、チームとして、より高みにいけるとも感じるが、現状のクラブの状況であれば、難しいと言えそうだ。ただ、こういったサッカーでもやれるというのを今後の試合で勝利することで、証明して欲しい。
攻撃スタッツ(20川本 梨誉)
安定したチャンスメーク力が光る20川本 梨誉。ラストパス2本とクロスが3本。パス24本の内、計5本が、アシストを狙ったパスである。もはや、20川本 梨誉抜きに前線の攻撃は、成り立たない域に到達しつつある。
攻撃スタッツ(7田中 恵太)
攻撃スタッツ(14沼田 圭悟)
攻撃スタッツ(16阿部 拓馬)
攻撃のキーマンであった3選手。両SBが、攻撃に積極的に関与し、サイドからクロスやラストパスを配給。16阿部 拓馬も中央で、フィニッシャーとしてだけではなく、チャンスメーカーとしてもラストパスとクロスを記録。3選手とも、この数値の合計が、10本に迫る。岡山としても難しい対応に迫られたが、SGGK31梅田 透吾を中心とした堅守で、なんとか守り切ることができた。
攻撃スタッツ(18清水 慎太郎)
シュートを7本も打たれてしまったが、SGGK31梅田 透吾の活躍があり、無失点に抑える事ができた。絶対決められてはいけない選手。元岡山の選手という事もあり、気持ちが入っていた事も分かる。それにしてもシュート7本も打てている辺り、琉球のサッカーにフィットしていることが良く分かる。ワンタッチでのシュートの巧い選手だから、クロスや速い展開は、相性が良さそう。
攻撃スタッツ(20上里 一将)
琉球の攻撃の中心。彼を経由して、攻撃は展開していく。パス96本で、成功数が91本という抜群の安定感。岡山としても抑えたかったが、なかなか制限できなかった。
基本スタッツ
こうしても見ると、劣勢で、押され気味であったことが分かる。ここ数試合、シュート数やパス成功数、ボール支配率で、大きく負けている。もっている個の力ではもしかすると、負けているのかもしれないが、チームとして、粘り強く守るという守備の安定感では、上位チームにも負けないものがある。それが、証明された2連勝であった。
課題である、得点力もここ数試合で、劇的に改善されて、一筋の光が見えて来た。久々に岡山の夏がやってくるのか。ピッチコンディションの厳しく難しい時期がやって来るが、どういった成績で、夏場を乗り越えて、終盤戦に迎えるのか。そういったものが問われる本日の京都戦となる。そういった意味では、首位→4位→首位とまさに、リーグトップとの試合が続き、岡山として上位を目指せるかどうからのラストチャンスとも言えて、もう後がないという不安と、ここから非常に楽しみと感じる状況でもある。岡山のジャイアントキリングに期待したい。
文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様
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2021ファジアーノ岡山にフォーカス22
J2:第19節:岡山vs琉球(Home)
「岡山の勝利の方程式3バック」
は、こちら(別サイト:note)。
URL:https://note.com/suginote/n/nb2f0bd8731b7
コメント(2)
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SPORTERIAスタッフ
2021/6/27 14:31
琉球はハマった時の得点力は爆発的なので、これだけシュートを打たれながらも無失点に抑えた守備は素晴らしいですね!
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杉野 雅昭(masaaki sugino)
2021/7/4 15:53
コメント有難うございます。
攻撃陣もしっかり3得点でまさに快勝でしたね👏
複数の選手のヒートマップが左下から右上に↗️なっているのは特徴的ですね💡
前半戦ベストゲームでした。
攻撃と守備が噛み合う試合がもっと増えると良いが、難しい。
有馬監督の試行錯誤や工夫の跡を感じますね。