1、前置き


 どうも。データでフォーカスでは少しだけ久々ですね。さて、この間の大きなトピックは、やはり【48石毛 秀樹】選手の完全復活ですよね。ここ数シーズンは、怪我などもあり、試合から遠ざかっていましたが、早くも攻撃の重要なピースとして、清水ではなく、育成期限付き先の岡山においてですが、レギュラー奪取に成功しました。その彼の凄さを、データでは、どう出ているのか。じっくり見て行きたいと思います。


2、48石毛 秀樹の色


 やはり、良い選手とすぐ分かる選手というのは、分かり易い特色がデータとしてはっきりと出ると思いますが、攻撃スタッツでの数字ではどうでしょうか?では、こちらを見て下さい。

攻撃スタッツ - 石毛 秀樹

攻撃スタッツ(48石毛 秀樹)


 試合とデータの一致点とズレが、どこか生じがちですが、個人的には、イメージ通りのデータに感じましたが、皆さんの目には、どう映ったでしょうか?

 私の中の【48石毛 秀樹】選手は、「右足の技術の高さと視野の広さを併せ持ったクリエイティブな選手」という認識でしたが、データでもまさにその感じです。

 まず、着目したいのですが、クロスが0本という事です。クロスというプレーは、基本的にサイドレーンの深い位置からのクロスであれば効果的でもあり、サイドレーンからアシストを狙うためには、クロスをあげるしか、手段はありません。しかし、それが、0本という事は、「プレーエリアが、右サイドハーフでありながら、中央寄りである」事が自然と導きだされます。

 それもその筈です。ラストパスが3本。つまり、シュートに繋がったパスが3本もあるという事です。それも「クロスに分類されないスルーパスのようなパスが3本もある」という事です。これは、つまり何を意味するのか?

 そうです。「攻撃のチャンス時には、中央付近でプレーしている」事が分かりますね。これは、シュート2本の内2本が枠内で、更にその1本で、得点も決めている。これだけ見ても「攻撃的なMFとして、優れた選手である」事が分かりますね。

 ここで、要点を整理しておきましょう。

「48石毛 秀樹の攻撃スタッツの特徴」
①クロスが0本=プレーエリアが中央寄り?
②ラストパスが3本=攻撃のチャンスにはプレーエリアは中央寄り?
③シュート2本(枠内2本で1ゴール)=インサイドハーフの適性が高い?


3、実際のプレーエリア


 さて、攻撃スタッツでは、中央でのプレー機会が多いのではないかという予測と、そこでスペシャルな仕事ができる非凡な攻撃的なMFという予測でしたが、ヒートマップでは、この辺りどう出ているのか?では、確認していきましょう。

ヒートマップ - 石毛 秀樹

ヒートマップ(48石毛 秀樹)


 思った以上に右よりという印象が、私の正直な感想ですが、皆さんは、この辺りをどう解釈されますか?今季の岡山の試合を全試合チェックしている私からすると、これは、チームの守備スタイルに起因しているのではないかという予測を立てます。

 岡山は、基本スタイルは、前に2枚が何らかの守備的アクションを起こしますが、主な選択肢として、「プレスによってボール奪取を狙うパターン」と、「適度にプレスをかけてボールの奪い処に誘導するパターン」、そして、「スペースを消して、パスミスを待つパターン。」岡山は、1と2を軸にしている傾向にありますが、対戦チームのリサーチや岡山の前線の組み合わせなど、状況によって、守備スタイルを変えて試合に入っています。そして、この辺りは、チームもある意味、生き物なので、展開によっても使い分ける事もあります。

 つまり、何が言いたいかと言うと、「右でのタッチ数の多くは、ボール奪取してすぐのパス交換が多い」のではないかという事です。試合を見ていても、右サイドに張り付いて、攻撃を組み立ててというよりは、効果的なタイミングで、中にポジションを取り、ゴールとアシストのどちらも狙っているプレーが多いからです。

 「攻撃時には中に絞る。」「守備時には、外のスペースを埋める。」こういった意識が根底にあることで、こういったヒートマップになったと思われます。

 そして、ここでのポイントは、【48石毛 秀樹】選手のポジションがCFと錯覚する可能性もあるヒートマップであるという事です。それだけ攻撃のキーとなるポイントでのタッチが多く、岡山の攻撃に深く関与している事が分かりますね。

 それでは、ここでの要点も整理しておきます。

「48石毛 秀樹のヒートマップの特徴」
①右でのタッチ数が予想以上に多い=岡山の守備スタイルが関係?
②奪取・誘導・受けでの守備意識の高さ=守備機会が多くなる?
③右での守備機会が多い=中央でのタッチは攻撃への関与?
④中央で高い位置で多いタッチ数=岡山の攻撃に深く関与?


4、チームの中の役割


 さて、いよいよ【48石毛 秀樹】選手が、チームの中で、どういった役割を担っているのか。パス成功数や時間帯別のチームの平均ポジションを解析していく事で見えてくるここ数試合の【48石毛 秀樹】選手を、見ていきましょう。

時間帯別パスネットワーク図

時間帯別パスネットワーク図(岡山)


 「エリア間パス図」「ボールロスト位置」という図を採用する手もありましたが、この図が分かり易かったので、この「時間帯別パスネットワーク(岡山)」を深く見て行くことにしました。

 今回の図は面白かったです。データでフォーカスは2試合ぶりですが、【48石毛 秀樹】選手との台頭によって、チームに明らかな変化が生まれています。

 結論から言うと、岡山は、「可変式システムに近いサッカー」を展開しているのではないかという事です。

 攻撃時に、【48石毛 秀樹】選手は、【16河野 諒祐】選手に右サイドレーンの全権を預ける事で、中に絞る。これにより、岡山は、中央の人数不足の解消に成功しています。

 全方向への守備への関与を厭わない献身性のあった【7白井 永地】選手の様な守備の安定感こそ失いましたが、その分、得点力UPに繋がっている。5試合連続の失点と4試合連続得点は、決して偶然ではなく、【48石毛 秀樹】選手効果の1つと言っても良いでしょう。もちろん、【19ミッチェル・デューク】選手や【9李 勇載】選手の存在も大きかったですが、【48石毛 秀樹】選手の存在も決して小さくないでしょう。

 それが、今回の図で分かった事です。それでは、ここまでの流れでの結論として、まとめたいと思います。

「48石毛 秀樹のもたらした効果まとめ」
①右サイドレーンは16河野 諒祐に全権委任。
→残りのレーンで良い距離感を実現。
②攻撃時には48石毛 秀樹は、中央寄りでプレー。
→課題であった中央からの攻撃が改善。
③可変式で攻守のバランスを取れる。
→局地的優位性の代償として安定感の低下。


5、後書き


 如何だったでしょうか?「可変式システムに近いサッカー」だと、難しく感じるかもしれませんが、イメージ的には、弱い所に人数をかけて対応する。強い所に人数をかけて、より強力な武器とする。つまり、攻守での数的優位を作りだす事を目的としたシステムチェンジと考えて頂けると簡単で良いかもしれない。1人で出来る事が多い選手を集める・分散することで、攻守での数的優位を作らせない。数的優位を作る。この基本原則をよりシンプルにする細かい工夫が今の岡山には散りばめられているという事が、今回のデータでフォーカスを書いていく中での発見。

 もちろん、東京Vの監督が交代していた事もあり、戦術的な上積みが進んでいなかった事もあるかもしれないが、東京V戦では、攻守での数的優位という点で、狙い通りのサッカーができた試合の1つである。

 しかし、そういった試合でもPKの判定になっていれば、引き分けに終わったかもしれない。そう考えると、サッカーで勝つことは凄く難しいスポーツだし、感動が生まれるスポーツであると改めて認識できた。


文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様


2021ファジアーノ岡山にフォーカス37 J2:第33節:東京ヴェルディvsファジアーノ岡山(Away) 「勝敗を左右したリスクを巡る攻防」は、こちら(別サイト:note)。

URL:https://note.com/suginote/n/n0ac7164ab0fc