1、前置き


 DFラインの高さが、低いという声があったので、有馬ファジの完成形の21シーズンの41節の長崎戦と町田戦の時間帯別パスネットワーク図を比べて、そこから更に深堀りしていこうというコラムです。よろしくお願いいたします。


2、図対比


 まずは、この試合の町田戦の時間帯別パスネットワーク図から


時間帯別パスネットワーク図

時間帯別パスネットワーク図(岡山:22シーズン4節町田戦)


続いて、21シーズンの41節長崎戦の時間帯別パスネットワーク図。


時間帯別パスネットワーク図(岡山:21シーズン41節長崎戦)


ポイント(22シーズン)
①ハーフラインより手前の選手も多い。
②全体的に間延びしている。
③選手間の距離が遠い。


ポイント(21シーズン)
①ハーフラインより前に選手が多い。
②全体的にコンパクト。
③選手間の距離が近い。


3、図対比2


 時間帯別パスネットワーク図とは違う角度でみるためにボールロスト位置の図を見てみましょう。


ボールロスト位置

ボールロスト位置(岡山:21シーズン4節町田戦)


続いて、21シーズンの41節長崎戦のボールロスト位置の図。


ボールロスト位置(岡山:21シーズン41節長崎戦)


ポイント(22シーズン)
④自陣でのボールロストが一定数ある。
⑤前に行くほどボールロストが増えている。
⑥ボールロストのパス方向が比較的少ない。


ポイント(21シーズン)
④自陣でのボールロストが少ない。
⑤中盤でのボールロストが一番多くなっている。
⑥ボールロストのパス方向が比較的多い。


4、考察


 図から見えてくることに対する考察をしていきたいと思います。


22シーズン


 「②全体的に間延びしている」と、「③選手間の距離が遠い」からロングパスの比率が多いことが分かります。

 ターゲットやパス方向が限られるため、「⑤前に行くほどボールロストが増えている」と、「⑥ボールロストのパス方向が比較的少ない」に繋がっています。

 対戦相手としては、この狙いを防ぐために、DFラインにプレッシャーをかけるチームが出てきます。町田は、このプレスのブロックの構築の巧いチームであるので、「④自陣でのボールロストが一定数ある」というデータに繋がります。

 「①ハーフラインより手前の選手も多い」のも、DFラインの選手が、どう前方にパスを入れて行くかという攻防があったことが分かります。


21シーズン


 「⑤中盤でのボールロストが一番多くなっている」と、「⑥ボールロストのパス方向が比較的多い」から、細かくパスを繋いで前に運ぶサッカーであることが分かります。

 パスコースを作り、パスの成功率を高めるため「②全体的にコンパクト」と、「③選手間の距離が近い。」状態をキープすることを可能にしています。

 対戦相手としては、岡山陣地でのボール奪取したいもののパスを繋ぐ事が整備されているので、多くのチームのプレス網を突破した結果、「④自陣でのボールロストが少ない」というデータに繋がります。

 「①ハーフラインより前に選手が多い。」であるのも、ビルドアップが非常に安定していた事が分かります。


5、考察2


 考察1から見えてくるサッカーの違いを見て行きましょう。


22シーズン
⑦前線に如何に運ぶかが主眼。
⑧前線に人数を揃える事で前からプレス網を形成。
⑨ハイリスクなサッカーで攻撃的なサッカー。


21シーズン
⑦自陣でのプレー機会を少なくすることを主眼。
⑧コンパクトに保つことで強固な守備ブロックの形成。
⑨ローリスクなサッカーで、安定的なサッカー。


両シーズンの⑨に関しては、解釈が別れる事かと思いますが、木山ファジは、爆発力。

有馬ファジに関しては、安定感が、それぞれの武器であると感じます。


6、総括


 最後にこのサッカーの違いがはっきりと分かる二つの図を見て今回のフォーカスを締めたいと思います。


基本スタッツ

基本スタッツ(22シーズン4節町田戦)


基本スタッツ(21シーズン41節長崎戦)


ゴール期待値

ゴール期待値(22シーズン4節町田戦)


ゴール期待値(21シーズン41節長崎戦)


 22シーズンの町田戦に関しては、リードを許して、シュート6本に抑えられて、3-1で敗れたもののゴール期待値自体は高く、如何に前まで運ぶかで、怖さを90分間通して与える事ができるという攻撃的なサッカーを良く表現しているデータと言え、内容を超越した魅力のあるサッカーができている。


 一方で、21シーズンは、前半はゴール期待値が低いこと示す通り、スコアも0-1という最少得点差での勝利に終わっている。リードを着実に広げて、安定感のサッカーを90分間通してすることで、内容と結果が伴ったサッカーをできていた。


 有馬ファジは、3年間の完成したサッカー。木山ファジは、1年目の4節時点のサッカー。有馬ファジのような完成したチームになった時に、どういったサッカーを展開していくのか。想像すると、今後のファジのサッカーは、とても楽しみである。


 この試合の町田のような安定感があるのに爆発力のあるサッカーを木山ファジでも見たい。そう期待したくなるほどの町田の強さを感じた試合で、完敗でした。


 本日の横浜FC戦では、どういった試合になるか楽しみですね。そして、この試合で町田には完敗でしたが、ホームに迎える時に向けて、1戦1戦を大事にすることで着実に前進していくことで、勝てるようなチームへと成長していって欲しい。


 最後まで、読んで下さり有難うございました。


文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様


2022ファジアーノ岡山にフォーカス10

J2:第4節:A:FC町田ゼルビア vs ファジアーノ岡山

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