明日試合という事で、1時間半で仕上げたコンパクトコラムです。本当は、町田のパスコースに対して、雉プレスがどれだけ効果的であったのかという点だけにする予定でしたが、もう1点プラスにしたいと思います。


雉プレス(ファジアーノプレス)

 90分間のフルタイムの間、岡山式のハイプレスを続けること。2トップ、2列目、アンカーの7選手が積極的に、前からプレスをかけて、相手の組み立てを大きく牽制し、ボールを奪えれば、強力な2トップと2列目の選手が襲いかかる。そのプレス網を抜けても最終ラインの選手が、前に出て対応し、プレスバックで、自由を与えない攻守一体の岡山式プレス。


2022ファジにデータでフォーカス9

『天空の城の攻城戦@岡山の陣』

2022 J2第34節 岡山 - 町田 プレビュー

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1、基本スタッツ


基本スタッツ

基本スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


試合情報(図=figure:杉野 雅明)


ゴール期待値ゴール期待(図=figure:SPORTERIA提供)


 岡山が、主導権を握っていたことが良く分かる。


2、雉プレスの核となった34輪笠 祐士


パスソナー・パスネットワーク

岡山のパスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


 この図を見ても34輪笠 祐士あっての「雉プレス」であり、岡山の補強が如何にピンポイントであったのかという事を感じます。また、同時に今まで、岡山の主軸であった17関戸 健二、6喜山 康平や期待の若手であった28疋田 優人の出場機会が少なく、本職がSBであった26本山 遥をアンカーで起用してきたことからも、ここに求めれる武器が有馬ファジとは違うことが感じられる。


 34輪笠 祐士は、アンカーとしての対人守備力の強さだけではなく、展開力やキープ力もあり、対人守備では26本山 遥に分があっても、総合力で、チームの力を押し上げた選手であり、岡山の雉プレス完成に繋げた選手と言える。


攻撃スタッツ - 輪笠 祐士

攻撃スタッツ(34輪笠 祐士)


守備スタッツ - 輪笠 祐士

守備スタッツ(34輪笠 祐士)


ヒートマップ - 輪笠 祐士

ヒートマップ(34輪笠 祐士)


 主導権を握っていたので、守備機会は少な目で、そこまで特別な数字ではなかったものの、攻撃では、チームナンバー1のパス数。そして、クロスやラストパスでのチャンスメークもできる。ヒートマップを見ても広いプレーエリアに特徴のある選手であることが良く伝わって来る。


3、天元(囲碁における目の中央)を抑えた岡山


 町田の中央からの崩し、つまりパスワークをどれだけ抑えたのか分かる次の町田のデータを見て欲しい。


パスソナー・パスネットワーク

対岡山のパスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


対横浜FCのパスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


 中央でのパス数及び総数が激減していることは、一目瞭然ですね。岡山の雉プレスの核となっていた先ほど、34輪笠 祐士と比べても、町田のサッカーの核となるはずの中央でのパス交換ができず、サイドからの形を迫られていたことが良く分かります。


エリア間パス図

対岡山のエリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)


対横浜のエリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)


 この二つの図のポイントは、自陣に近い所でのパス数が激減しているという事です。つまり、自由に組み立てができず、長めのパスの選択や縦へのパスの選択を迫られてい事が分かります。また、先ほどの図と同様に中央でのパス交換があまり出来ていません。つまり、町田の繋ぎながら、チームとして前進し、人数をかけた攻撃ができていなかった事も意味した事に加えて、左右が分断していたとも言えそうです。


ボールロスト位置

対岡山のボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)


対横浜FCのボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)


 対横浜FC戦では、仕掛ける所や仕掛けた所でのボールロストが多くなっている。一方で、岡山戦では、その手前でのボールロストが多くなっており、横浜FC戦のようにゴールの一番深い所が赤くなっていない。

 つまり、町田の持ち味である主導権を握り、ゴール前でのパス交換やクロスでの深くに進入していくという事があまり出来ていなかったことを意味します。


4、高い迎撃力を誇る岡山の壁


守備スタッツ - 徳元 悠平

41徳元 悠平の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - ヨルディ バイス

23ヨルディ・バイスの守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - 河野 諒祐

16河野 諒祐の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - 柳 育崇

5柳 育崇の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 10平戸 大貴のクロスを中心としたチャンスメークの斜めへの攻撃に対して、41徳元 悠平が高い身体能力を発揮して跳ね返す。

 中央や縦に付けるパスに対し、23ヨルディ・バイスが、攻撃の芽を潰す守備やロングパスに対しては、しっかり跳ね返した。

 右サイドからの28太田 修介や22翁長 聖のスピードを活かした攻撃に対して、この試合では冴えた守備の読みで、クロスをブロック。16河野 諒祐の勝負に出る守備を突破された時の予備の防衛線の5柳 育崇の守備の機会は、この試合は、そこまで伸びなかった。


守備スタッツ - 佐野 航大

22佐野 航大の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 攻撃で目立ったが、守備でも高いスタッツ。攻守の切り替えの早さと前からの献身的な守備も光った。攻守で大車輪の活躍。また、チームの前から行く守備が上手く機能していたことも良く分かる。


4、攻撃の核(町田)


攻撃スタッツ - 平戸 太貴

10平戸 大貴の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


シャドーでありながら、このボール関与率。クロスにパスに、シュートに攻撃の中心としてチームを牽引した。


攻撃スタッツ - 翁長 聖

22翁長 聖の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 10平戸 大貴が、この日は左側のシャドーであったこともあり、より攻撃に関与できた。


5、総括


 フルボリュームのレビューではないが、岡山の守備が良く嵌っていたことで、岡山が主導権を握る事ができたことが少しでもデータから伝わっていると幸いです。雉プレスが、山形に対しても有効なのか?22佐野 航大の欠場は影響がどれだけ出てくるのか。それとも町田と相性が良かった事で、こういった守備と攻撃ができたのか。34輪笠 祐士が、岡山のサッカーを劇的に変えたとも言える的確過ぎた補強であった事は、早くも証明できたと言っても過言ではない。


 町田との今季の対戦は、今後の試合の両チームの結果次第だが、流石にこの試合のように再び岡山が、攻守で圧倒出来るほど、町田と相性が良いわけではなく、万が一プレーオフで対戦することも考えて、改善と成長を止めるわけにはいかない。とはいえ、残り8試合全勝を目指すしかない岡山にとって、このサッカーを信じて、残り試合を戦いきるしかない。


文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様


2022ファジアーノ岡山にフォーカス30

2022 J2 第34節 岡山 vs 町田(H)

『雉プレス』

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