いつものことながらFootball LAB(https://www.football-lab.jp/)さんからデータを拝借した。Football LABさんのデータの中にはチームスタイル指標(https://www.football-lab.jp/pages/team_style/)という分析方法があり、下位項目として様々な分析指標が掲載されている。


今回はその中からロングカウンターに的を絞り少しレビューさせていただく。

ロングカウンターの定義については下記の通り。こちらの画像もFootball LABさんから拝借した。


ということである。

分析は「ショートカウンター」の巻(https://sporteria.jp/blog/yagoto-10/6719615842830520321)の手法を踏襲した。

ロングカウンターの指数と各項目の数値は下記表の通り。

指数はロングカウンターの回数を偏差値にしたもので、指数が最も高いのは横浜F・マリノスで66。最も低いのはセレッソ大阪の34である。指数以外の項目の単位は%であったり、人数、メートルなど様々である。このままであると分析しづらいため、単位を統一する。指数同様、全て偏差値に計算し直す。

全ての項目を偏差値に計算し直した結果は下記の通り。

赤色のセルは偏差値60以上。緑色のセルは偏差値40以下。理屈上偏差値60以上は、上位16%以内、偏差値40以下は、下位16%以内に入ることになる。


上記表を各項目ごとに相関係数を計算すると下記表の通りになる。

上記表の各項目ごとに相関係数を計算すると下記表の通りになる。赤色のセルは相関係数0.7以上、-0.7以下、緑のセルは相関係数0.4~0.7、-0.4~-0.7である。黄色のセルについては後ほど・・・。

ロングカウンター(定義:ディフェンシブサードでのボール奪取から15秒以内にアタッキングサードを狙った攻撃)を成功するためには、指数の相関係数に注目する。相関が最も強い項目はコンビネーション使用率であり、相関係数は-0.51である。そこそこ強い相関関係にある。といってもマイナスの符号がついているようにコンビネーションを使用すれば使用するほどロングカウンターは成功しないという傾向にある。その他の指標については相関係数の絶対値が0.19以下であり特筆するものはない。


次にゴール率であるが、相関係数が最も高い指標はシュート率の0.72である。ゴール率とシュート率は切っても切り離せない関係のため除外する。その他の指標では、3つの黄色のセル、ドリブル使用率(相関係数0.39)、21km/h以上の走行平均人数(相関係数0.30)、24km/h以上の走行平均人数(相関係数0.37)は相関係数が0.4以下ではあるが比較的高い傾向にある。このことから、ロングカウンターを成功させてゴールを決めるためには、ドリブルを織り交ぜながら、スプリントを行う選手の人数を増やすということになる。ドリブルとスプリントの関係では、「ドリブル使用率-21km/h以上の走行平均人数」の相関係数は0.18、「ドリブル使用率-24km/h以上の走行平均人数」の相関係数は0.15でありほぼ無相関。よって高速ドリブルということではないだろう。

ドリブル使用率とロングパス使用率の相関係数は-0.43であり相反する関係にある。ドリブルをすればロングパスが減り、ロングパスが増えればドリブルが減る傾向にある。

コンビネーション使用率について補足すると、指数偏差値は-0.51であるが、ゴール率偏差値は0.16であり少し上昇している。ロングカウンターを実施することに対してマイナスに要因になるコンビネーション使用率も、ゴールを奪うという視点に立てば大きな影響を及ぼすのだろう。最後の詰めにはコンビネーションは不可欠であると思う。


以上を踏まえて、チームスタイル指標:ロングカウンター偏差値の表を一部修正し再掲する。

赤色のセルは偏差値60以上、黄色のセルは偏差値55以上60未満である。四捨五入の関係で見かけ上55であるが色がついていないセルもあることは留意願いたい。

この中でロングカウンターが最も成功しているチームはFC東京といって良いだろう。指数偏差値62、ゴール率偏差値56、シュート率偏差値59である。ロングカウンターを行い(指数偏差値62)、シュートまで持っていき(シュート率偏差値59)、そしてゴールを決める(ゴール率偏差値56)。その背景には、J1リーグ全体におけるロングカウンター成功要因の21km/h以上の走行平均人数偏差値75、24km/h以上の走行平均人数偏差値81がある。また21km/h以上の走行一人当たりの平均距離偏差値74、24km/h以上の走行一人当たりの平均距離偏差値66であり、スプリントにおいて長い距離を走ることも実践している。ドリブル使用率偏差値は50でありリーグの平均ではあるが、スプリントを駆使することによってロングカウンターを成功させている。下記画像の通り、チーム別スプリントランキングは横浜F・マリノスを抑えて堂々の1位である。


選手別に見ても、3位に中村選手、6位に永井選手がランクされている。

上記2つの画像はJリーグ公式サイト(https://www.jleague.jp/)から借用した。


ゴール率偏差値ダントツ1位に川崎フロンターレは、指数偏差値は43であり、ロングカウンター自体志向していない。

指数1位の横浜F・マリノスはゴール率偏差値43、シュート率偏差値42であり、ロングカウンターを実践しても結果が伴っていない。指数2位のサンフレッチェ広島、指数3位の浦和レッズも横浜F・マリノスと同様の傾向にある。柏レイソルは指数偏差値60、ゴール率偏差値58、シュート率偏差値64でありロングカウンターの戦術が成功している。特筆すべきはロングパス使用率偏差値が66であり、オルンガ選手の存在が大きい。


ロングカウンターも様々な志向のチームがあって面白い。よって全体的な傾向については少しぼやけた結果になるのだろう。