前回クラスター分析を行ったから、その流れで因子分析もやってみたいと思います。

Football LABさんのデータの中には下表の通りチームスタイル指標ごとの指数が掲載されています。指数一覧という項目で、ここに(https://www.football-lab.jp/summary/team_style/j1/?year=2020)、掲載されています。指数とは偏差値のことで、実数ではありません。攻撃回数を指数(偏差値)化していますので、同じ指数でも同じ回数攻撃しているわけではありません。平均からどれだけ離れているかという指標になります。よってこのまま分析するのもどうかとは思いますが、筆者は実数データを持っているわけではないため、指数のまま分析してみます。

上記数値を因子分析します。因子分析に関してはググって下さい。なお計算はソフトが自動でやってくれるため簡単です。結果は下記の通りです。

まずは分かりやすいところから。因子4は右サイド攻撃そのもの。

次は因子2。左サイド攻撃が入っていることから左サイド攻撃である。攻撃セットプレーが因子2に入っていることから、攻撃セットプレーは左サイドとの関連が強いと思われます。左サイドからの攻撃に対して、DFが対応しきれずにファウルを犯す。ファウルによりセットプレーになってしまう。そんな構図が浮かび上がります。因子2において、敵陣ポゼッション因子負荷量が0.337、同様に右サイド攻撃因子負荷量が0.239、攻撃セットプレーにおいて因子4の因子負荷量が0.487であることから、攻撃セットプレーは他の攻撃地域でも起こっていることはわかりますが、左サイドが特に多いのでしょう。それだけ左サイドでは有効な攻撃が行われているのだと思います。「左サイド攻撃」の巻でレビューした結果と少し異なってしまいました。この関係を数値で示すことが出来たらレビューします。

次は因子3。中央攻撃因子負荷量が0.606、敵陣ポゼッション因子負荷量が0.848であることから、因子3は敵陣中央を責める攻撃であると思います。

最後に因子1。ロングカウンター因子負荷量が0.915、ショートカウンター因子負荷量が0.835、中央攻撃因子負荷量が0.678、自陣ポゼッション因子負荷量が-0.749です。このことから因子1は攻撃スピードの速さであると思います。因子1における敵陣ポゼッション因子負荷量が-0.191であること、因子3におけるロングカウンター因子負荷量が-0.154、ショートカウンター因子負荷量が0.174であることから、因子3は中央から攻撃するけれども、因子1ほどのスピードある攻撃ではないことが分かります。中央攻撃は因子1と因子3に大きな因子負荷量がありますが、中央攻撃は攻撃スピードと攻撃地域の2つの側面があることも分かります。因子2~3は主に攻撃する地域に関係する因子ですが、因子1だけは尺度が異なる攻撃スピードという因子になります。

因子5まで計算しましたが、表の通り因子負荷量が小さかったです。そのため、因子6以降を計算する必要もありませんし、分析としても因子4までで十分だと思います。

因子ごとの寄与率も載せておきます。

因子1の寄与率が高いです。攻撃スピードの速さの重要性が分かります。2020シーズンのJ1リーグの傾向のイメージにピッタリな感じがします。

因子1と因子2をグラフ化すると下記の通りになります。こういったグラフもソフトが自動で作成してくれます。便利ですね。

因子1と因子2だけで作図すると、ロングカウンター、ショートカウンター、中央攻撃の近似性がよりはっきりします。因子1の軸の反対に自陣ポゼッションが位置していることも特徴的です。因子1において敵陣ポゼッションは自陣ポゼッションに最も近い指標であることも分かります。

自陣ポゼッションは、上表の因子負荷量において、因子1に対する-0.749の因子負荷量以外は大きな因子負荷量はありません。Football LABさんのチームスタイル指標の説明の中に下記がありました。

「自陣ポゼッションは他3つの攻撃に当てはまらなかったもので条件を満たすものが対象となります」と記載されています。こういった定義や上表の自陣ポゼッション因子負荷量、以前レビューした「自陣ポゼッション」の巻(https://sporteria.jp/blog/yagoto-10/6725921314504183809)、「自陣ポゼッション」の巻に対するSPORTERIAスタッフ様のコメントなどから、自陣ポゼッションを数値的に上手く表現することはやはり難しいなと感じます。今回の因子分析結果からはスピードある攻撃とは逆の位置にあることはわかりました。

まとめ

あくまでJ1リーグの傾向としてのまとめです。チームスタイル指標の因子分析から、攻撃は①攻撃スピード、②敵陣中央攻撃、③左サイド攻撃、④右サイド攻撃の4つの軸に分かれます。自チームの特徴を活かして有効に攻めることが、攻撃成功に結びつきます。