以前、自陣ポゼッションの巻(https://sporteria.jp/blog/yagoto-10/6725921314504183809)を投稿した際に、SPORTERIAスタッフ様から

「自陣ポゼッション」は、捉え方がなかなか難しい指標ですね。

・後ろから繋いでいきたいけど、プレッシャーを掛けられてなかなか前に運べない結果、そうなっている

・後ろでパスを回しながら相手を喰いつかせて釣り出して、急所に縦パスを入れて一気に攻める

どちらなのかがデータだけだと判別できないんですよね…。(表裏一体と言えばそうなのですが)そういうところが、「シュート率は低くてゴール率が高い」要因なのかもしれません?🤔(結局ボール保持側が苦しくなってシュートまでいけない、でも良い縦パスが通れば大チャンス、みたいな)

というコメントをいただきました。特に「後ろから繋いでいきたいけど、プレッシャーを掛けられてなかなか前に運べない結果、そうなっている」部分に関して、その後少し考察し、自分なりの答えが出た気がするため投稿させていただきます。

2021シーズンJ1リーグのデータを使用します。5/3(月)現在、Football LABさんに掲載されていたAGI(https://www.football-lab.jp/pages/kagi/)と自陣ポゼッションを使用します。

各チームごとのAGIと自陣ポゼッションのデータが下表になります。やはり川崎FのAGIは抜きん出ています。

AGIの説明の中に指標という言葉が出てきますので、この数字は偏差値ではないかと思われます。偏差値ではなく集計された生データだとしても、このままでは使用しづらいため基準値に計算し直します。自陣ポゼッションの数値は偏差値ですので、そのまま基準値へ計算し直します。結果は下表の通りです。

基準値の良いところは、平均が0になり、Excelで散布図を作成したときに0値でラインが自動的に引かれ理解しやすいところにあります。

散布図は下記の通りです。

大きく2つのグループに分かれます。右下はAGIが高く自陣ポゼッションが低いグループです。左上はAGIが低く自陣ポゼッションが高いグループです。よって左上のグループは前にボールを運べない(運ばない)チームということになります。

この相関係数は-0.73であり、強い負の相関関係にあります。散布図をもとに近似曲線を引くと上図の左上から右下に引かれた点線になります。決定係数は0.738です。

ここで注目するのは近似曲線の上に位置するか下に位置するかということになります。左上のグループの内、神戸、鳥栖、徳島、浦和は近似曲線の上に位置しています。大分、清水、横浜FC、G大阪は下に位置しています。同じグループでも近似曲線を引くことで、更に分割することが出来ます。

大分、清水、横浜FC、G大阪はズバリ自陣でボールを持たされていると思います。神戸、鳥栖、徳島、浦和は自陣でボールを自ら保持していると思います。

・後ろから繋いでいきたいけど、プレッシャーを掛けられてなかなか前に運べない結果、そうなっている

・後ろでパスを回しながら相手を喰いつかせて釣り出して、急所に縦パスを入れて一気に攻める

この2つに分けるのだとすれば、前者が大分、清水、横浜FC、G大阪。後者が神戸、鳥栖、徳島、浦和ということになるのでしょう。試合を見ていませんので、本当のところはどうだかわかりませんが。

右下のグループでは、横浜FM、広島、仙台、C大阪は自陣でボールを自ら保持し、早いタイミングで自陣から抜け出しているのでしょう。また川崎F、鹿島、FC東京、柏、湘南、福岡は自陣でボールを持たされはするものの、早いタイミングで縦パスを入れ相手ゴールに攻め込んでいくと思われます。川崎Fが自陣でボールを保持しているときは、前に進めずボールを持たされているのではないかと推測できます。

札幌は横浜FM寄りかなと思います。名古屋は大分、清水、横浜FC、G大阪寄りかなと思います。


AGIと敵陣ポゼッションを散布図にすると下図の通りになります。

相関係数は0.28であり、あまり傾向が見出せません。AGIの定義は

  • 攻撃時間のうち、相手ゴールに近い位置でボールを持っていた時間の割合が高い
  • 攻撃が始まってから、敵陣のペナルティエリアまで到達するのにかかった時間が短い

ということから、敵陣ポゼッション以外でもAGIを上げることが出来るため、敵陣ポゼッションだけでは傾向が見いだせないのかと思います。他のチームスタイル指標は計算していませんが、おそらく結果は敵陣ポゼッションと同様かと思われます。


いつものことながらFootball LABさんからデータを拝借しました。