後編です。

毎度のことながらFootball LAB(https://www.football-lab.jp/)さんからデータを拝借しました。Football LABさんのデータには多種多様なデータがあります。今回は得点や失点、CBP、スタッツを使い分析を進めます。使用するデータの対象は2021シーズンJ1リーグ、8/5時点のものです。その中でも総走行距離とスプリントに焦点を絞ります。

得点や失点、CBP、スタッツのデータをそのまま使うのではなく、今回は対戦相手を上回ったか否かという視点から相関係数を求めました。

J1全体の各項目と総走行距離、スプリントとの相関係数は下表の通りです。

ピンク色のセルは同じ項目同士で相関係数は1.00になっています。これを除くとほぼ相関関係はないということになります。面白い結果が出るとよかったのですが。全体で分析すると平均へ回帰してしまいますので、各チームごとに見て行くことにします。

ここまでは前編に記載した通りです。これ以降は各チームの数字を見て行きましょう。


神戸の総走行距離は得点0.43、勝点0.45、間接FK0.42と相関関係にあります。総走行距離が相手チームを上回ると、得点が相手チームを上回り勝点が上回るという傾向にあります。間接FKも相手チームを上回るという傾向にあります。相手チームのオフサイドが増えるということでしょうか。スプリントはシュート0.41、チャンス構築率0.45と相関関係にあります。スプリントが相手チームを上回るとシュートが相手チームを上回りチャンス構築率が相手チームを上回る傾向にあります。総走行距離とスプリントが相手チームを上回ることは攻撃力アップにつながっているようです。当然ながら下回った時は逆になるということです。


札幌の総走行距離は攻撃CBP-0.58、クロス-0.48、ドリブル-0.41、30mライン進入-0.41と負の相関関係にあります。総走行距離が相手チームを上回ると攻撃力が下がります。どうやら相手の攻撃により走らされているようです。スプリントは得点0.58、ドリブル-0.45、ゴールCBP0.41と相関関係にあります。スプリントが相手チームを上回ると、ドリブルCBPは相手チームを下回る傾向にありますが、ゴールCBPが相手チームを上回り得点が相手チームを上回る傾向があります。スプリントが相手チームを上回ることが得点につながっているようです。


清水の総走行距離はパスCBP-0.53、パス-0.49と負の相関関係にあります。総走行距離が相手チームを上回ると、パスが相手チームを下回りパスCBPが相手チームを下回ります。総走行距離が相手チームを上回るとパス攻撃が相手チームを下回るという傾向にあります。相手チームに走らされているのですかね。スプリントは全ての項目において無相関(-0.4~0.4)の関係です。


湘南の総走行距離はゴールCBP0.41と相関関係にあります。総走行距離が相手チームを上回るとゴールCBPが相手チームを上回る傾向にあります。スプリントはスローイン0.45、退場-0.42と相関関係にあります。直接攻守の項目には影響しないようです。スプリントが相手チームを上回るとスローインが相手を上回り、退場が相手を下回る傾向にあります。スプリントよりも総走行距離が相手チームを上回る方が攻撃に影響するようです。


仙台の総走行距離は失点-0.47、守備P0.58、枠内シュート-0.44、パス-0.46、クロス-0.46、スローイン-0.42、クリア0.42、30mライン進入-0.56、ペナルティエリア進入-0.58、攻撃回数-0.55、ボール支配率-0.46と多くの項目において相関関係にあります。守備の項目と相関関係にあり、総走行距離が相手を上回ることは守備に良い影響をもたらすようです。半面、総走行距離が相手チームを上回ると、攻撃の項目は相手チームを下回る傾向にあります。スプリントは失点-0.42、クリア0.44、インターセプト-0.44と相関関係にあります。スプリントが相手チームを上回るとインターセプトが相手を下回るようですが、クリアが相手チームを上回り、失点が相手チームを下回る傾向にあります。総走行距離とスプリント双方ともに守備に大きな影響をもたらすようです。


徳島の総走行距離はドリブルCBP0.45、奪取P-0.41、パス-0.49、インターセプト0.41と相関関係にあります。総走行距離が相手チームを上回ると、その走力からドリブルCBPが相手チームを上回り、インターセプトが相手チームを上回ります。またドリブルCBPが相手チームを上回る影響からパスが相手チームを下回るようです。総走行距離は攻撃に影響をもたらすようであり、逆に奪取Pは相手チームを下回る傾向にあります。スプリントは得点0.64、勝点0.49、ゴールCBP0.49、ゴール期待値0.65、タックル0.43、警告0.48と相関関係にあります。スプリントが相手チームを上回ると、ゴールCBPが相手チームを上回り、ゴール期待値が相手チームを上回り、得点が相手チームを上回り、勝点が相手チームを上回る傾向にあります。その一方でスプリントが相手チームを上回ると、タックルが相手チームを上回り、その影響か警告が相手チームを上回る傾向にあります。スプリントが相手チームを上回ることは諸刃の剣のような感じですね。


名古屋の総走行距離は勝点0.48、ゴールCBP0.42、スプリント0.65と相関関係にあります。スプリントはゴールCBP0.42、総走行距離0.65と相関関係にあります。解釈の軸は1本になります。名古屋はスプリントにより総走行距離が増え、相手チームを上回ると、ゴールCBPが相手チームを上回り、勝点が相手チームを上回るということになります。名古屋の総走行距離やスプリントが相手チームを上回ることは守備ではなく攻撃に良い影響をもたらします。


広島の総走行距離はドリブルCBP-0.44、ゴールCBP0.49、間接FK0.44と相関関係にあります。総走行距離が相手チームを上回ると、ドリブルCBPが相手チームを下回り、逆にゴールCBPが相手チームを上回る傾向にあります。また間接FKも相手チームを上回る傾向にあります。スプリントはほぼ相関なしという結果になりました。


福岡の総走行距離はゴールCBP0.49、ドリブル0.59、タックル-0.58と相関関係にあります。総走行距離が相手チームを上回るとドリブルが相手チームを上回り、ゴールCBPが相手チームを上回る傾向にあります。総走行距離が相手チームを上回ると攻撃力が増すことからか、タックルが相手チームを下回ります。スプリントはシュートCBP-0.48、枠内シュート-0.48、直接FK-0.43、スローイン-0.43、インターセプト-0.49、攻撃回数-0.56と相関関係にあります。スプリントが相手チームを上回ると、攻撃回数が相手チームを下回り、枠内シュートが相手チームを下回り、シュートCBPが相手チームを下回る傾向にあります。またスプリントが相手チームを上回ると、直接FKとスローインとインターセプトが相手チームを下回る傾向にあります。どうやらスプリントは守備に使われているようです。


横浜FCの総走行距離は失点-0.42と相関関係にあります。総走行距離が相手チームを上回ると、失点が相手チームを下回る傾向にあります。総走行距離が相手チームを上回ることは守備に良い影響をもたらすようです。スプリントは攻撃CBP0.69、パスCBP0.51、セーブP-0.44、ゴール期待値0.50、30mライン進入0.51、ペナルティエリア進入0.50、ボール支配率0.44と相関関係にあります。スプリントが相手チームを上回ると、セーブPを相手チームを下回らせ(多分セーブ機会を減らしている)、スプリントによりボール支配率が相手チームを上回り、30mライン進入が相手チームを上回り、ペナルティエリア進入が相手チームを上回り、パスCBPと攻撃CBPが相手チームを上回り、ゴール期待値が相手チームを上回ることにつながっているようです。スプリントが相手チームを上回ることは攻撃に良い影響をもたらします。総走行距離は失点に対して、スプリントは攻撃に対して良い影響をもたらしており、総走行距離とスプリントが相手チームを上回ることは殊の外大切だということになります。

再掲しますが、得点や失点、CBP、スタッツのデータをそのまま使うのではなく、今回は対戦相手を上回ったか否かという視点から相関係数を求めました。

前編後編を通じて、J1リーグ全体で相関係数を求めると平均へ回帰してしまいますが、チームごとに相関係数を求めると特色がよく表れました。

以上、終わり。。。