Jリーグ新戦術レポート2022(西部謙司著)を読んでいたらユニバーサリゼーションという言葉が出てきた。
詳細説明は避けるが、「ユニバーサリゼーションの完成形では、すべての選手がすべてのポジションで同じようにプレーできること・・・・」と記されている。
興味が沸いたので、Football LABのデータを使い検証(検証という言葉を使うのは非常におこがましいが)した。
「全ての選手がすべてのポジションで同じようにプレーできること・・・・」ということは、特定の選手が活躍するのではなく全ての選手が満遍なく活躍すること、データでいうと選手間のバラツキが小さいことだと解釈した。
そのため選手ごとのデータで確認していく。
Football LABには選手ごと試合ごとの下記データ(一部割愛)がある。
この中からパスCBP、クロスCBP、ドリブルCBP、パスレシーブCBPを使用していく。
攻撃CBPはパスCBP、クロスCBP、ドリブルCBPを足したものであるため除外した。
シュートCBPとゴールCBPは攻撃の結果のようなものであるため除外した。
今回は攻撃に特化するために奪取Pと守備Pは除外した。
まず始めに、出場した全選手全試合の数値をもとに、チームごとの平均値を算出した。
それぞれのCBPで数値の大きさが異なるため、偏差値にした。また4つのCBPの平均を算出した。
赤色のセルは上位3チームである。平均が最も高いのは横浜FMであり、川崎F、札幌と続く。
パスCBPとパスレシーブCBPの上位3チームは前述したチームと同様であるが、クロスCBPには広島と福岡が入り、ドリブルCBPでは浦和と広島が上位3チームに入っている。
これだけだとバラツキは分からない。
そのため、次に全選手全試合の標準偏差を計算した。
標準偏差は単なるバラツキを計算している。前述した平均値が高いチームは、標準偏差も大きくなる。
そのため、標準偏差を平均で割り返した変動係数を計算した。
これも4つのCBPで数値に大きな差があるため、偏差値に計算し直し、さらに平均値を算出した。
赤色のセルは上位3チームである。
平均値の上位3チームは浦和、横浜FM、清水である。この3チームにおける選手間のバラツキは小さい。
最もバラツキが小さい浦和は、最初に計算した平均値の偏差値は55.6であり、それほど高くない。それほど高くない数値の中でのバラツキの小ささということになり、ユニバーサリゼーションとは言い難い。清水は同様に45.2であり、かなり低い。清水は数値が小さい中でのバラツキの小ささということになり、ユニバーサリゼーションとは言い難い。
横浜FMは最初に計算した平均値の偏差値は最も大きい67.9であり、バラツキの小ささとともに考えると、最もユニバーサリゼーションを体現したチームなのではないかと思う。
Jリーグ新戦術レポート2022(西部謙司著)では川崎Fもユニバーサリゼーションとして扱われていたが、今回の計算結果(偏差値47.3)では、バラツキが平均よりも大きいため、ユニバーサリゼーションとは言えない結果になった。
Jリーグ新戦術レポート2022(西部謙司著)では鳥栖もユニバーサリゼーションとして扱われていた。その一方で、鳥栖はポジショナルプレーの壁に直面しているとも記載されていた。今回使用したデータはCBPであり、チャンスにつながった数値をもとに計算したため、ポジショナルプレーの壁に直面している鳥栖にとっては数値が低く出てしまった可能性が高い。上記表のパスレシーブCBP偏差値は鳥栖が最も高く(バラツキが小さいということ)、全ての選手が満遍なくパスを受けチャンスにつなげていることを示唆している。ポジショナルプレーの一端を示す結果だと感じた。ユニバーサリゼーションと言って良いのかどうかは断言できないが興味深い結果になった。
簡単ですが、以上で終わります。
データ借用元&文章引用元
Football LAB
Jリーグ新戦術レポート2022 西部謙司 ELGORAZOBOOKS
コメント(1)
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SPORTERIAスタッフ
2023/9/29 14:15
ユニバーサリゼーションと突き抜けた選手の存在(結果としてその選手への依存度が高まる)は、どちらが優れているかは何とも言えませんが非常に興味深いテーマですよね。
シーズン途中の移籍も活発になり、キープレイヤーがいなくなることも考えると、バラツキが小さいチームのほうがシーズン全体を通してのチーム力を維持しやすいのかもしれません?