はじめに

 この試合の総合のSTATsからも分かるように最終的な得点はF C東京の0点に対して横浜F Mは4点と圧倒しているが、シュート数、枠内シュート数は共にFC東京の方が多くなっている。しかしパス成功率やボール保持率は横浜の方が上回っており、精度の高いチャンスを作り出した、横浜が着実に得点を重ねて勝利を手にした試合と言っていいと思う。

また両チームのこれまでの得点パターンや失点パターンを見てみると、FC東京はショートパスからやクロスからのシチュエーションで失点を多くしている。対して横浜FMは得意の得点パターンとしてショートパスからとクロスからを持っていると予想できる。この両チームの得点パターン、失点パターンからも横浜側が優位に試合を進めることを予想できたかもしれない。それではこの試合の得点シーンについて分析していく。基本スタッツ

得点パターン失点パターン得点パターン失点パターン

1点目

 1点目は9マルコスジュニオールから17エリキへのパス、そしてエリキの右サイドからの37ジュニオールサントスへのクロスから生まれた。これは前節までの横浜の得点パターンの中で22.2%を占める得点のパターンで横浜にとって良い形を作れた得点を言える。

まずマルコスジュニオールからのエリキへのパスは東京側のディフェンスが上がった状態で大きく敵のコートエリアに食い込んだパスとなったため、東京側の戻りが遅れた。ここからエリキが東京の6小川と3森重を完全に引きつけ、さらには45アルトゥールシルバ、4渡部を自分に少し寄せた状態で踏ん張りながら中央にいるマークの薄くなったジュニオールサントスにパスをした。パスをした時点でジュニオールサントスにはマークが4渡部の0.5枚ついているだけの状態だった。東京の22中村は逆サイドの他選手のマークをしていたこともありゴール前への戻りは完全に遅れていた。この一点はラッキーポイントではなく、入るべくして入った一点だと言える。

横浜はこの1点目が入るまで、相手に攻め立てられており、非常に苦しい試合展開が続いていたが、多くのチャンスがありながらも得点をできなかったFCに対して、着実に1点目を入れた横浜はここで良いリズムを掴んだはずだ。

 

2点目

 2点目は後半55分、FC東京のゴール側で東京のパスを回していたが横浜マリノスのプレッシャーにより9マルコスジュニオールがセンターに出したパスをはじき、37ジュニーオールサントスがボールを受け2人の間を綺麗に通したコントロールシュートを決めた。

37ジュニオールサントスが決めたシュートは人が混み合って焦る状況の中キックフェイントを一回入れた事で騙された敵チームは間を開けてしまい点を決めた。

 

3点目

 3点目は後半46分、45アルトゥールシルバの退場によりFC東京が数的不利になった後である。マリノス45オナイウがCBからの縦パスをフリーで受け、前方にスムーズにターン。相手のプレッシャーが迫るが、その選手の前方にボールを運びフリーで前へ。その後、18水沼に、相手CBの間を通す華麗なスルーパス。その後、クロスを選択するが相手DFにあたりオウンゴールとなる。このゴールは、試合終了間近のFC東京のDFの集中力の欠如が生み出したものである。何故なら、まず45オナイウがフリーでパスを受けれる状態にしてしまったこと。FC東京の左サイドハーフとボランチとの間が広く開いているのだ。FC東京の中盤は、横浜のボールサイドに合わせてスライドしなければならなかった。終了間近のキツイ時間帯こそ、スライドをサボるべきではなかったのだ。また、パスを受けた45オナイウは後半36オウンからの途中出場で、とてもフレッシュな状態で走ることができている点も得点の要因の1つであろう。また、45オナイウの相手DFを無効化する相手選手の目の前へのボールの運び出しも素晴らしかった。そして、18水沼をチェックしていた東京3森重のミスである。東京側は最終ラインを高く設定していたため、3森重は18水沼の相本ではなく背後のスペースを守るべきであった。最初、相本を守ろうとして途中で判断を変えスペースのディフェンスをしようとボールから目を離した瞬間にパスを出されているのだ。試合終盤もあり、体が重く後一歩ボールに足が届かなかった。サッカーというスポーツは大変時間が長く走行距離もとても長い。そのため、一瞬の判断で最も効率的に守る選択肢を決めなければならないスポーツなのだ。その一瞬のズレがこの失点を招いたのだ。つまり、3点目は、FC東京のディフェンス時の集中力の欠如から生まれたのだ。

 

4点目

 アルテュールシルバが退場し、試合はいつ終わってもおかしく無い95分、完全に勝負は決した中でもマリノスは攻撃の手を緩めなかった。東京の途中出場のFWアダイウトンのミドルシュートは、余裕を持って引いて守っていた横浜のDF陣に当たりゴールならず。試合を通じて東京は横浜より多いシュート数、75分以降に限れば倍以上のシュートを放っている。そして、その東京の攻撃的な姿勢に最後の最後までつけ込んでいくのがマリノスの攻撃陣だ。こぼれ球を拾ったDF畠中がすぐさまマルコスジュニオールにパス。この時点でマリノスは前線にマルコス、エリキ、オナイウの3人がいるにも関わらず東京のDFは2枚。数的優位によるパスを繋いでのカウンター、この試合を象徴づける攻撃がまたも繰り返される。反転したジュニオールの速いパスエリキ、オナイウが走り込んでDFを1枚引きつける中、左サイドからエリキが切り込み、逆サイドから走り込んできた18水沼に警戒するDFをかわし一瞬フリーになったところでシュート。横浜Fマリノスの4点目である。勝敗の決した中でもカウンターチャンスに逃さずパスを繋ぎ、完全に足の止まっていた東京守備陣を崩したマリノスに入るべくして入った1点だ。

 

総括

 この試合を全体的に見るとシュート数、枠内シュート数共に東京FCが上回っているしかしパスが通った数を見てみるとFC東京256本に対して横浜マリノス654本と倍以上のパスを通している。そのパスをカットしようとスプリントを入れたりしているためFC東京の体力が削られ後半戦に体が動きが鈍くなりマークが曖昧になったりしてしまう事が多く見えた。それが結果的に4-0と言う得点差になって現れたのだろう。