約4ヶ月ぶりに無観客として再開した「東京クラシック」。ホームのヴェルディは活動を再開していたものの、非公開での練習やトレーニングマッチを行っていた。対するアウェイの町田はトレーニングマッチで浦和や鹿島に挑み、充実した準備期間を送っている。また、この2試合ともYoutubeで一般公開するなど、ここまで両者は対照的な取り組みを行ってきている。
ヴェルディは新加入の大久保とレアンドロの2人のストライカーがベンチから外れ、端戸や井出らが先発出場。町田もマソビッチ、ステファンという今季新加入のセルビア人ストライカー2人が先発を外れ、ジョン・チュングンや安藤らが今季初出場となった。
【前半】
試合開始3分、早くもアウェイ町田が先制する。だが、以降は何度かロングボールでカウンターを狙うものの、厚みを作ることができず次第に防戦いっぽうの展開に。自陣で4-4-2のシステムを維持したまま、中央のスペースを埋めるように守備ブロックを形成し、チャンスをうかがう。
対するヴェルディは、思わぬスタートとなったが徐々に持ちまえのパスワークでペースを取り戻していく。守備の局面は4-2-3-1のようなシステムで対応し、ボールを奪ったら直ぐさま奈良輪と小池がワイドに開き、佐藤優平と井手が2シャドーを組んで3-4-2-1へ可変。町田が中央に固まっているぶん、両サイドはスペースが豊富なためホームチームはピッチの幅を使った攻撃でチャレンジする。
だが町田の守備ブロックは、選手同士の距離感(選手間、ライン間共に)がコンパクトにデザインされており、ヴェルディが中央でボールを受けようとすれば数人で囲みボールを奪う。
また町田は、ヴェルディがビルドアップする際に2トップ(平戸、安藤)がホームチームの2CB(高橋、平)と2ボランチ(井上、藤田)の間に生まれるスペースを「つるべの動き」でうまくカバー。尚且つ、プレスをかけて相手のパスコースを絞り選択肢を減らす。相手が迷うことで、アウェイチームの守備時には時間が生まれ、そのぶん相手の進行を食い止めてマークの確認など微調整をすることができた。
ヴェルディも佐藤優平がうまく狭いスペースにボールを要求し、突破にトライするものの、右サイドの小池は高い位置で張ったままアクションが少なく、町田の守備ブロックを打開できない。左サイドの奈良輪や井出も同様に高い位置をとったまま動きは少なく、ボランチからも展開が難しいため孤立状態に。
https://www.football-lab.jp/tk-v/report/?year=2020&month=06&date=27
データスタジアム株式会社が運営する『Football LAB』によれば、ヴェルディは前半終了時のポゼッション率で79.9%を記録。再三にわたって右サイドから突破を試みるも無得点で前半を終えた。対する町田も、何度か平戸を起点に左サイドでカウンターを仕掛けるが、前線に人数を避けないため決定的なチャンスは作れず、1点のリードを守ったままハーフタイムへ。
【後半】
ハーフタイムが明けてヴェルディは、井手に替えて藤本、小池に替えて山下の2枚替えを決行し、右サイドの活性化を試みる。
対する町田は、選手とシステムはそのままで後半を迎えるも、前半よりはボールを奪いに行くアグレッシブな守備に変更した。依然、攻撃の局面では大きな変更点が見られなく、単発なカウンターが続く。
後半半ばを過ぎると、ヴェルディの右サイドのパス回しはテンポアップ。藤本、佐藤優平がスペースに動いてボールを受け、そこに山下もうまく絡むシーンが増えてくる。
次第に町田の守備陣は、自分のエリアを飛び出して守備対応に追われる。一人が左にズレると、次に近い選手がそのスペースを埋める設計のため、サイドに釣り出されてしまえば中央に穴(ポケット)が空いてしまう。
ヴェルディはこの狙いを更にうまく活用。町田守備陣のズレ(ギャップ)やポケットを見逃さず、ボランチの井上がスペースに飛び込んでくるなど徐々にゴールに近づいていく。
また左サイドも端戸や奈良輪がうまく関わるようになり、右サイド同様にサイドで相手選手を釣り出してから、中央のスペースを突くというパターンの攻撃を何度もトライ。
試合残り20分になると、町田はより守備に比重を置くようになる。幅をとって後方から次々に飛び込んでくるヴェルディの選手に対処できず、サイドハーフがSBの外側のスペースをカバーする場面が増えていき5バックに近い状態での対応を迫られる。
それでも同点弾が奪えないヴェルディは残り10分、井上に替えて河野を投入しシステムを4-4-2に変更してより攻撃的に出る。その結果、果敢に狙っていたスペースの飛び込みから相手のファールを誘ってPKを獲得。なんとか、勝ち点1を手にすることができた。
【試合を振り返って】
前半は町田の守備ブロックに苦しんだヴェルディだが、後半はよりスペースを基準とした攻撃で多くのチャンスメイクを作った。その結果、時間はかかったが狙いからPKを取得したことはプラス材料だと言える。しかし、相手の守備が堅い時こそ2列目のアクションが重要であり、その点を考えると井上と藤田のパフォーマンスは納得しづらい。また2人で横一列に並んで、同一のパスコースに立ち位置を置いてしまう状況もしばしば見られた。数字だけ見ると圧倒したポゼッションだが、多くの改善点がありそうだ。
対する町田は終盤にPKを与えてドローで試合を終えたものの、守備ブロックはとても整理されており見応えがあった。まだまだ、縦関係がうまくいっているとは言えないが綺麗なラインの連動は度々見られ、更なる連動した守備を期待したい。だが、浦和と鹿島とのトレーニングマッチよりもポゼッションを相手に譲ってしまったことは少し気になるところ。前線の選手の人が入れ替わったから、うまくいかなかったのか?それとも、ボールを奪取(ポジティブ・トランジション)から攻撃に繋げる時の選手の配置がよくないのか?こちらも改善が必要だろう。
コメント(2)
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GreenGreen
2020/7/3 15:21
ヴェルディはこの形で精度を高めていくのだろうけど、この試合で最前線にいた端戸とベンチ外だったレアンドロや大久保は3人ともタイプが違うので、それぞれの特徴をチームとして活かせるのか...
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yusaku_kizawa_football(鬼澤優作)
2020/7/3 17:41
トップの個性が強いですからね。