今シーズン初のミッドウィーク開催となったJ1第3節。

サンフレッチェ広島はホームで大分トリニータと対戦しました。

   フォーメーション図 フォーメーション図

広島・大分ともにフォーメーションは3-4-2-1。

広島は前節負傷した柏好文に代わり浅野雄也が左ウイングバックに入った以外は、3日前の神戸戦と同じスタメンとなりました。一方の大分は鳥栖戦で2得点の田中達也を起用するなど、前節から3人を入れ替えました。


ショートカウンター炸裂

広島・大分ともに守備時は5-4-1のフォーメーションとなりますが、序盤、両チームの守備は対照的でした。

大分は高い位置でプレスに行くことはほとんどなく、自陣に全員が引いて守る場面が多かったです。そのため、広島のセンターバックやボランチは落ち着いてボールを回すことができました。

一方、広島は大分の最終ラインに対しても高い位置から圧力をかけており、2列目の4枚が敵陣内に入ってプレスをかけることも多かったです。その結果、前半10分に広島は高い位置でボールを奪い、先制点をあげます。

左サイドでショートパスを繋ぐ大分に対し、広島は前から圧力をかけ、ドウグラスヴィエイラ(上図の9番)が田中(上図の11番)のパスをカットします。ヴィエイラが奪ったボールを青山敏弘(上図の6番)がワンタッチでレアンドロペレイラ(上図の39番)へ。ペレイラはドリブルでペナルティエリアに進入し、右足を振り抜いてゴールを決めました。


ペレイラはJ1で3試合連続ゴール。ルヴァンカップを含めると公式戦4試合連続ゴールとなりました。敵陣高い位置でのボール奪取から少ない手数でゴールに迫る。広島が今季キャンプから取り組んできたショートカウンターを発動し、エースストライカーが高い決定力を発揮して幸先よく広島が先制します。


右サイドの守備

得点後も大分が前からプレスにくることはなく、広島は大分のブロックの外でボールを回しながらチャンスを伺っていました。青山敏弘のロングボールや川辺駿の飛び出しなどから敵陣深くにボールを運ぶ場面も見られたますが、シュートにつなげることはできず。

序盤は広島が攻める時間が続きましたが、次第に大分がボールを保持する時間が多くなります。前半、広島陣内でパスを繋ぐ大分に対し、決定機を作られることはありませんでしたが右サイドを崩される場面が目立ちました。

28分、右サイドのタッチライン沿いでハイネルが田中に縦への突破を許してしまいます。野上結貴と川辺が全速力で戻りペナルティエリアへの進入は許さなかったものの、クロスからシュートまで持っていかれます。また、38分、42分にも田中のドリブルからシュートを打たれます。特に42分のシーンでは、シャドーにポジションを変えた田中にハイネルの背後のスペースを利用され、自陣深くでゴール方向へドリブルされる形になりました。ヒートマップを見ても、田中が広島のゴールライン付近まで進入していることがわかるかと思います。

    攻撃スタッツ - 田中 達也 ヒートマップ - 田中 達也

また、広島の両ウイングバックのハイネルと浅野を比べると、ハイネルの方が自陣でのボールタッチ数が多くなっています。浅野に比べて出場時間が約20分長いことを考慮しても、ハイネルの方が低い位置まで下がって守備をしていたと言えるでしょう。

    攻撃スタッツ - ハイネル ヒートマップ - ハイネル

    攻撃スタッツ - 浅野 雄也 ヒートマップ - 浅野 雄也


知念慶の投入

大分は後半開始から伊佐耕平に代えて知念慶をピッチへ送り込みます。後半の知念の動きは広島にとって脅威でした。

    攻撃スタッツ - 伊佐 耕平 ヒートマップ - 伊佐 耕平

    攻撃スタッツ - 知念 慶 ヒートマップ - 知念 慶

ヒートマップを比較すると、知念の方が広島陣内で多くプレーしており、ボールタッチ数も多くなっています。また、知念はシュートやパスの本数も多く、体を張ってボールをキープする場面も随所に見られました。知念がボールを収めることによって、大分が押し込む場面が前半よりも増えたように感じました。

ただ、広島もゴールは割らせませんでした。決して防戦一方だったわけではなく、攻撃では自陣からショートパスを繋いで敵陣に攻め込み、森島司や川辺がシュートを放ちます。また、71分には、途中出場の藤井智也が左サイドから何度も仕掛けて相手を翻弄し、最後はハイネルがペナルティエリア内からボレーシュート。シュートはクロスバーに当たり惜しくも得点とはなりませんでしたが、両ウイングバックがともに高い位置をとったことでチャンスを作り出しました。


センターバックの交代

終盤、アクシデントから広島はセンターバックの交代を余儀なくされてしまいます。前節から中3日での試合、前半に果敢に仕掛けた田中への対応による疲労といった影響もあってか、野上が足をつってしまいます。広島は野上に代わって井林章が3バックの中央に入り、荒木隼人が野上のポジションに入りました。

一方、大分は三平和司や高澤優也といった前線の選手を投入。結果的にこの交代が大分の得点につながることとなります。

85分、荒木の背後へ走り出した高澤に三竿雄斗からロングボールが送られます。キーパーの大迫敬介がキャッチを試みて飛び出しますが、大迫の前で高澤がヘディングしボールは無人のゴールへ。広島は今季の公式戦で初失点となり、1-1の同点となりました。

ロングボールに対して飛び出したからには、大迫は高澤よりも先にボールに触れなければなりませんでした。しかし、目の前で相手にヘディングされたため、大迫の飛び出しは判断ミスと言えます。ただ、大迫のミスだけが失点の原因ではなく、右センターバックにポジションを変えた荒木が早めに大迫に処理を任せたことや、三竿に対するヴィエイラの寄せが甘かったことも失点の要因だと思います。アクシデントからセンターバックの交代を行ったことや、運動量が落ちていたヴィエイラを最後までピッチに立たせ続けたことが失点につながったと言えるでしょう。


勝ち点3を狙った結果の勝ち点0

同点に追いついた大分はさらに攻勢を強め、広島ゴールに迫ります。87分には高澤、90+1分には三平がシュートを放ちますが、大迫がしっかり弾き出しました。広島は89分にカウンターから攻め込みますがシュートまでは持っていけず。90+3分には相手のFKをキャッチした大迫が勝ち越しを目指してロングカウンターを狙い、右サイドを駆け上がる荒木の前方へパスを送りますが、大分にインターセプトされてしまいます。

ボールを奪った大分は素早く前方へパスを送り、左サイドの香川勇気(途中出場)が中央にグラウンダーのクロスを入れます。最後は三平がワンタッチでゴールに流し込み、90+4分に大分が2点目を奪いました。

この場面では、香川(上図の2番)のクロスに対して知念(上図の9番)と三平(上図の27番)の2人がペナルティエリア内で待っていました。知念がニアに走ることで佐々木翔(上図の19番)を釣り出し、空いた中央のスペースに三平が走りこんでシュートを決めました。香川・知念・三平は全員途中出場であり、大分の交代策が見事にハマったと言えます。

広島としては勝ち点3を狙いにいった結果、ミスから逆転を許してしまいました。試合はこのまま1-2で終了し、広島は今季初黒星となりました。


総括

基本スタッツ

広島は前半にショートカウンターから先制しましたが、終盤に2失点し逆転負け。大分は高澤や三平など途中出場の選手が結果を残しましたが、広島は交代策を有効に使うことができませんでした。その結果、走行距離やスプリント回数で大分に差をつけられたのではないでしょうか。

広島の2失点はともに大迫のミスから生まれています。しかし、大迫は得点になってもおかしくないシュートを何本も止めており、大迫がチームを救った場面もありました。だからと言って、ミスが許容されるわけではありませんが、この試合の経験を次節以降に生かして欲しいです。


第4節は7/12(日)、広島はアウェーでサガン鳥栖と対戦します。

再び中3日での試合となるため、スタメンの変更や途中出場選手の活躍に期待したいと思います。

大分戦の鬱憤を晴らすような勝利を見たいですね。