7試合連続失点中と守備に課題があるレノファ山口FC。

第9節は7試合続けて得点を取っているヴァンフォーレ甲府と対戦しました。

   フォーメーション図 フォーメーション図

甲府は中3日の前節から8人を変更。一方の山口は5人を入れ替え、前節ゴールを決めた16歳の河野孝汰が初めてスターティングイレブンに名を連ねました。また、大卒ルーキーの浮田健誠と眞鍋旭輝の2人がともに今季2度目のスタメンとなりました。


ディフェンスラインの背後

前半は山口がボールを保持する時間が多かったです。守備時には5-4-1となりブロックを形成する甲府に対し、山口はショートパスを繋ぎながら攻めていきます。甲府は自陣で引いて守ることが多く、ブロックの外でボールを持つボランチやセンターバックにはあまりプレッシャーをかけていませんでした。そのため、山口は高宇洋や池上丈二らが余裕を持ってパスを回せていました。

一方、山口の守備は甲府とは対照的でした。前線の選手は敵陣でもプレスをかけ、全体をコンパクトに保つためにディフェンスラインの位置も高くしていました。ただ、全体が前目になっている分、山口の最終ラインのとキーパーの間には大きなスペースがあり、甲府はそのスペースを狙っていました。

7分のシーンでは、武田将平がハーフウェーラインから山口の最終ラインの裏へパスを出します。これに松田力が反応しキーパーと1対1の状況を迎えましたが、ループシュートを試みたボールは山田元気に止められ得点とはなりませんでした。

その後も山口はディフェンスラインの背後にパスを通され、自陣深い位置まで攻め込まれてしまいます。ただ、守備陣が集中して対応し、決定的なチャンスは作らせず。先制点は与えませんでした。


ワンタッチの意識

甲府と同様に、山口も最終ラインの背後を狙う動きが多かったです。上述したように甲府はブロックを形成して守っており、山口は攻撃時にボランチやセンターバックが敵陣でボールを持てていました。最終ラインと中盤の間にポジションを取った河野に縦パスを入れたり、吉濱遼平が下がってボールを受けたりするなど細かくパスを繋ぎながら相手の出方を伺っていました。

その中で、相手の守備を崩すために山口も甲府同様、最終ラインの背後を狙っていました。小松蓮や浮田が何度も裏へ走り出し、吉濱や高らが浮き球のパスを供給していました。低い位置でショートパスを繋ぎながらワンタッチでディフェンスラインの背後へパスを送るシーンが何度もあり、前線の選手たちもしっかり動き出していました。パスが通らない場面もありましたが、チームとして背後への狙いとワンタッチパスの意識が統一されているように感じました。


サイドハーフの役割の違い

23分、ディフェンスラインの背後への狙いが山口の先制点につながります。

右サイドでパスをつないでいた山口は吉濱(上図の14番)がパスを受けて前を向きます。この時、ペナルティエリア内にいた小松(上図の18番)と浮田(上図の16番)が前方へ動き出し、吉濱はキーパーとディフェンスの間に浮き球のボールを蹴りました。ディフェンダーの前に入った浮田がダイレクトでゴールへ押し込み、山口が先制に成功しました。

得点シーンに表れているように、この試合ではサイドハーフの攻撃時の動きが非対称でした。

    攻撃スタッツ - 吉濱 遼平 ヒートマップ - 吉濱 遼平

    攻撃スタッツ - 浮田 健誠 ヒートマップ - 浮田 健誠

アシストした右サイドハーフの吉濱は中盤に下がってパスを受けるなど低い位置でのボールタッチが多かったです。一方、ゴールを決めた左サイドハーフの浮田はヒートマップから分かるように、ボールタッチ数が吉濱と比べて少なかったです。浮田はボールを受けに下がってくることはほとんどなく、最終ラインの背後へのランニングが何度も見られました。

攻撃スタッツにも両選手の役割の違いが表れており、吉濱のパス数は浮田の3倍以上になっています(吉濱は87分、浮田は62分に交代)。逆にシュート数は吉濱の1本に対して浮田は3本と多く、より前線でプレーしていたことが分かります。

正確なパスを供給できる吉濱とストライカータイプの浮田。タイプの異なる2人のサイドハーフがそれぞれの特徴を発揮したことで、山口に7試合ぶりの先制点がもたらされました。


課題のコーナーキック

得点後、甲府・山口ともにチャンスを作りましたが、お互いの守備陣が粘って試合は動かず。山口はへニキや池上が相手のシュートに対して体を投げ出しブロックするなど、体を張った守備でゴールを死守しました。6試合続けて前半に得点を奪われていましたが、今節は無失点で終え、0-1と1点リードで試合を折り返しました。

後半開始直後、山口は河野がゴール前中央から強烈なシュートを放ちましたが、岡西宏祐がセーブ。甲府はフリーキックから内田健太が直接ゴールを狙いましたが、山田が止めてゴールとはならず。両チームのキーパーがしっかりゴールを守り1点差のまま試合が進みます。

リードを守っていた山口でしたが、67分、今シーズンの課題であるコーナーキックから同点に追いつかれてしまいました。

ファーサイドからニアサイドへ動いた松田に安在和樹がついていこうとしましたが、松田との接触で転倒してしまいます。松田がフリーでヘディングしたボールはファーポストの方向へ。これをゴール前にいた泉澤仁が触ってコースを変え、ゴールに押し込みました。

   得点パターン 失点パターン

前節までの甲府の得点パターンと山口の失点パターンを確認すると、セットプレーからの得点/失点がどちらも多いことが分かります。今シーズンの甲府の得点源となっており、かつ山口の総失点の40%近くを占めるセットプレー。両チームの今季を象徴するゴールで試合は1-1の同点になりました。


勝ち点1を分け合う

時間が進むにつれ、徐々にオープンな展開となり両チームにチャンスが生まれます。ただ、守備陣の集中した対応もあり得点は生まれず。終盤、甲府が194cmのハーフナーマイクを投入しパワープレーに出るも、山口はへニキや途中出場のヘナンらがしっかり対応して勝ち越しは許しませんでした。試合は1-1で終了し、勝ち点1を分け合う結果となりました。

この試合ではボランチの高が攻守ともに素晴らしい活躍でした。攻撃ではパスの配球役として両チーム通じて断トツの114本のパスを記録し、成功率も90%を超えています。守備では7回のこぼれ球奪取に4回中4回のタックル成功。また、相手のパスをカットする場面も何度も見られ、ボランチとして攻守両面で奮闘していました。

   攻撃スタッツ - 高 宇洋 守備スタッツ - 高 宇洋


総括

基本スタッツ

山口は7試合ぶりに先制しましたが、後半にコーナーキックから失点し勝利を得ることはできませんでした。ただ、19本もシュートを許しながらセットプレーからの1失点のみに抑えられたのはキーパーの山田をはじめとした守備陣が奮闘した結果だと思います。一方、攻撃ではワンタッチパスやディフェンスラインの背後への飛び出しなどから良い形は作れていましたが、複数得点を取ることができませんでした。


第10節は8/8(土)、ホームで栃木SCと対戦します。

複数得点かつ無失点での勝利を願っています。