今季4度目の5連戦を締めくくるJ2第29節。

レノファ山口FCはホームで水戸ホーリーホックと対戦しました。

   フォーメーション図 フォーメーション図

前節0-3で敗れている山口はスタメンを5人入れ替えました。フォーメーションも4-4-2に変更し、サイドハーフには田中パウロ淳一と橋本健人が起用されました。一方、前節1-1のドローだった水戸はスタメンを7人変更。山口との前回対戦でともにゴールを決めている中山仁斗と山口一真が2トップを組みました。


最弱の盾 vs 最強の矛

この試合はリーグ最多失点の山口とリーグ最多得点の水戸による対戦となりました(参考:https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j2/?year=2020)。「ゴール」という観点から考えると、J2で最も弱い盾とJ2で最も強い矛。当然、最弱の盾では最強の矛を防ぐことができず、山口は15分、16分と立て続けに失点を喫してしまいました。

1点目は右サイドのクロスからでした。山田康太によってゴール前へ供給されたボールに、中山がヘディングシュート。ボールは山田元気の手の届かないコースへ飛び、ゴールネットを揺らしました。

2点目はカウンターからでした。コーナーキックのクリアボールを拾った山口一真がトップスピードでドリブル。一気に相手のペナルティエリア近くまでボールを運ぶと、最後は左足でコースを狙った技ありのシュートを放ちました。対応した高宇洋がシュートコースを切っていたように見えましたが、ボールは高には当たらず、山田の手の先を抜けてゴールに吸い込まれました。

   攻撃スタッツ - 中山 仁斗 攻撃スタッツ - 山口 一真

1点目の場面、クロスが上がる前に中山をマークしていたのは菊地光将でした。ただ、中山のボディフェイントにつられ、菊地はマークを外してしまいました。その結果、菊地はクロスに対して競り合うどころか、ヘディングする中山に触ることすらできず。フリーでヘディングを許してしまい、先制点を決められてしまいました。

2点目はコーナーキックでのリスク管理の甘さが招いたものだったと思います。山口のコーナーキックに対し、水戸の選手は10人がペナルティエリアの中に入っており、山口一真のみがペナルティエリアの外にいました。その山口一真の左右には安在和樹と川井歩の2人がいましたが、2人と山口一真との間にはともに5m程の距離がありました。どちらか一人がもう少し山口一真の近くあるいは後方にいれば、トップスピードでのドリブルを許すことはなかったと思います。


数的不利

水戸の強力な攻撃陣を止めることができず、山口は試合開始から16分で2点のビハインドとなってしまいました。それに加え、18分にはヘニキがこの試合2枚目のイエローカードをもらって退場。山口は前半途中から10人での戦いを余儀なくされてしまいました。

守備スタッツ - ヘニキ

センターバックとして17試合連続でフル出場していたヘニキですが、この試合では18分で退場となってしまいました。2度目の警告を受けた場面は、決してファウルをしてでも止めなければならない状況ではなく、非常に不必要なファウルでした。

試合はその後、水戸がボールを保持する時間が多くなりました。山口は一人少なくなったため、相手の最終ラインには強いプレスをかけず。水戸は2点リードという状況だったこともあり、攻め急ぐことはしませんでした。前半のラスト15分に限れば、水戸のボール支配率は74.2%(参考:https://www.football-lab.jp/r-ya/report/?year=2020&month=10&date=25)。3点目こそ生まれなかったものの、水戸が試合の主導権を握ったまま前半が終了しました。


PKで1点差に

後半開始早々には水戸に大きな決定機が訪れました。

中山が最終ラインの背後へ抜け出してパスを受け、ペナルティエリアに進入。ゴール前に走り込んできた山口一真にラストパスを送りました。山口一真は流し込むだけという状況でしたが、シュートはクロスバーを直撃。3点目とはなりませんでした。

失点を免れた山口は51分に一本のパスからチャンスを作りました。

右サイドのハーフウェーライン付近から、川井歩が最終ラインの裏へロングパスを送ります。反応した小松蓮はトラップしましたが、直後に水戸の選手と交錯して転倒。ただ、これが相手のファウルとなり、山口はPKを獲得しました。このPKを田中パウロが決め、山口が1点を返しました。

    攻撃スタッツ - 田中 パウロ淳一 ヒートマップ - 田中 パウロ淳一

PKを決めた田中パウロは試合を通して何度もサイドで仕掛けていました。クロス数は両チーム合わせて最多となる8本を記録。クロスが得点に結びつくことはありませんでしたが、積極的な仕掛けからチャンスを作っていました。

田中パウロはこの日、YouTubeでの収益を利用して山口県の子どもたちをスタジアムに招待していました(動画:https://www.youtube.com/watch?v=YNmtv24Nu58&feature=youtu.be)。「子どもたちにサッカーの楽しさを伝えたい」という想いが強く、この試合ではいつも以上に気合が入っていたように感じました。勝利することはできませんでしたが、田中パウロの想いはきっと子どもたちの心に届いたと思います。


5試合で15失点

1点差とした山口はその後、同点に追いつくために勢いを持って水戸ゴールに迫っていきました。60分には菊地のフィードを受けた途中出場の浮田健誠が左足でシュート。67分には田中パウロのフリーキックにサンドロが合わせヘディングシュートを放ちました。しかし、どちらも枠を捉えることはできず、ゴールとはなりませんでした。

山口は選手交代やシステム変更などの策を講じましたが、最後まで2点目を取ることはできませんでした。逆に80分、90分と失点を重ね、計4失点。1-4で敗れ、ホームで2連敗となってしまいました。

第25節から今節までの5連戦、山口は1勝4敗という成績になりました。勝利した試合は無失点でしたが、他の4試合は全て3失点以上。5試合で15失点という今季ワーストの結果となってしまいました。


総括

基本スタッツ

序盤は全くと言っていいほど守備が機能せず、2失点。直後に10人となったことでさらに厳しい戦いを余儀なくされ、最終的には1-4での敗戦となってしまいました。


次節は11/1(日)、山口はアウェーで松本山雅FCと対戦します。

1週間でどのように守備を立て直すのか、そこに注目したいと思います。