リーグ戦11試合勝利なしと長いトンネルを抜け出せずにいるレノファ山口FC。

第39節ではホームでギラヴァンツ北九州と対戦しました。

   フォーメーション図 フォーメーション図

山口はここのところ中盤を逆三角形とする4-1-2-3を採用していましたが、この試合では佐藤健太郎と高宇洋をボランチに起用し、4-2-1-3のシステムに戻しました。キーパーには山口加入後初出場となる林瑞輝が抜擢されました。一方、北九州は前節からスタメンを3人変更。今季15ゴールを挙げているディサロ燦シルヴァーノが前線に入りました。


ハイプレス / 背後のスペース

前半は北九州がボールを保持する時間が多くなっていました。15分単位で見ると北九州のボール支配率は常に60%前後をマーク(参考:https://www.football-lab.jp/r-ya/report/?year=2020&month=12&date=06)。北九州は自陣からショートパスを繋いで前進しようとしていました。

後方からのビルドアップをしてきた北九州に対し、山口はハイプレスで対抗。前線の選手が高い位置からプレッシャーをかけ、ボールを奪いにいっていました。序盤は前線からのプレスが機能し、北九州を苦しめることに成功。相手ゴールに近い位置でパスカットする場面もあり、ショートカウンターからチャンスを作れていました。

前からの守備がハマっていた山口でしたが、北九州が背後のスペースを狙い出すとピンチが増加。13分、16分とハーフウェーライン手前(ヒートマップの最も色が濃い位置)から加藤弘堅に最終ラインの背後へパスを出され、危ない場面を作られてしまいました。オフサイドにも助けられ失点には繋がりませんでしたが、加藤からのロングパスは山口にとって脅威になっていたと思います。

    攻撃スタッツ - 加藤 弘堅 ヒートマップ - 加藤 弘堅

さらに27分には、敵陣でのプレスを掻い潜られると、生駒仁のパスで裏を取られピンチを招いてしまいます。新垣貴之に抜け出されると、キーパーとの1対1を制され失点。山口は先制を許してしまいました。

    攻撃スタッツ - 新垣 貴之 ヒートマップ - 新垣 貴之

生駒のパス直前、山口は左サイドバックの安在和樹も敵陣に入ってプレスをかけていました。しかし、北九州に上手くパスを繋がれたことでボールを奪えず、逆に安在の背後のスペースを狙われてしまいました。ボランチの佐藤健太郎もカバーしようとしていましたが、新垣に前へ入られてしまい、失点を防ぐことはできませんでした。


前半のうちに逆転

裏のスペースを使われて先制を許した山口でしたが、わずか1分後に同点に追いつきました。

北九州のバックパスに対しイウリが猛然とプレス。キーパーの永井堅梧にプレッシャーをかけてミスを誘います。ペナルティーアークにボールがこぼれると、走り込んできた高井和馬がシュート。これがゴール左に決まり、同点ゴールとなりました。

前線からのプレスでボールを奪い、ショートカウンターで仕留める。この試合、序盤から狙っていた形で山口はゴールを決めました。山口が前半に得点を挙げたのは実に9試合ぶり。失点直後の同点弾ということもあり、非常に大きな1点だったと思います。

その後、両チームともに1点目と同じような形、すなわち北九州は”最終ラインの裏へのパス”、山口は”前線のプレス”からチャンスを迎えました。

北九州は32分、加藤が自陣からロングパス。ディサロが完璧なタイミングで抜け出しており、北九州の決定機になりかけました。ただ、キーパーの林がペナルティエリアの外まで飛び出してダイビングヘッドでクリア。林の果敢な飛び出しにより、北九州の2点目とはなりませんでした。

    守備スタッツ - 林 瑞輝 ヒートマップ - 林 瑞輝

一方、山口は35分、ハーフウェーライン付近で高井がプレスをかけてボール奪取。素早く前方のイウリに繋ぐと、イウリのヒールパスに抜け出してキーパーとの1対1を迎えました。高井はループ気味のシュートでゴールネットを揺らし、この試合2点目を記録。山口がリードを奪うことに成功しました。

    攻撃スタッツ - 高井 和馬 ヒートマップ - 高井 和馬

山口は再びショートカウンターから得点。奪ってからゴールまでのスピードと相手選手の股を抜くイウリのヒールパス、そして高井のシュートと全てが完璧だった快心のゴールだったと思います。

前半は2-1で終了。山口は実に12試合ぶりにリードしてハーフタイムを迎えました。


北九州の時間

前半のうちに逆転した山口ですが、前半終了間際に森晃太とサンドロの2選手が負傷。交代を余儀なくされてしまいました。やや暗雲が立ち込めるなか迎えた後半、立ち上がりは北九州に押し込まれる時間が続きました。

47分には左サイドで新垣が縦に仕掛けて深い位置からクロス。ゴール目の前で佐藤颯汰(途中出場)がヘディングしようとしましたが、わずかに届かず得点とはなりませんでした。53分にも左サイドのクロスからチャンスを創出。サイドバックの永田拓也が上げたクロスにディサロがファーサイドで合わせました。ただ、シュートはクロスバーを直撃。55分には右サイドバック福森健太のクロスから新垣がシュートを放ちましたが、こちらも枠内に入れることはできませんでした。

山口は北九州の人数をかけた攻撃に苦戦。自陣に押し込まれクロスから何度もピンチを迎えました。ただ、ゴール前では集中した対応を続け、フリーでシュートを打たせるような場面はほとんどありませんでした。相手のシュートが枠外だったことにも助けられ、山口はリードを保ったまま後半の立ち上がりを終えました。


12試合ぶりの勝利

北九州の時間帯をしのいだ山口は58分に3点目を挙げ、リードを広げました。

自陣深い位置からボールを運んだ高井和馬が前線へロングパスを送ります。最終ラインの背後へ抜け出したイウリが相手の前に入ってボールを収めると、ペナルティエリア手前からループシュート。これがキーパーの頭上を越え、ゴールへ吸い込まれていきました。

体の強さを活かしてディフェンダーの前に入り、柔らかいタッチでのループシュート。強さと巧さの両方を兼ね備えたイウリのスーパーゴールが決まり、山口のリードが2点となりました。後半は北九州の時間が続いていただけに、同点に追いつかれる前に3点目を決めることができたのは非常に大きかったと思います。

その後、攻勢を強めた北九州にチャンスを作られる場面もありましたが体を張った守備でゴールは許さず。終盤には再び自陣からの素早い攻撃で北九州ゴールに迫ると、イウリが得点を決め4点目を挙げました。

    攻撃スタッツ - イウリ ヒートマップ - イウリ

試合の2日後、ご家族の健康状態によりイウリが帰国することがクラブから発表されました(参考:http://www.renofa.com/archives/67894/)。イウリにとっての今季最終戦で2ゴール。ご家族に対する心配や不安もおそらくあったと思いますが、そんな中でチームの勝利のために戦ってくれたイウリには感謝しかありません。来シーズンの契約がどうなるかは現時点では分かりませんが、再びレノファ山口の一員として戦ってくれることを願っています。

試合は4-1で終了。山口は長く暗いトンネルをようやく抜け出し、12試合ぶりの勝利を挙げました。


総括

基本スタッツ

山口は先制こそされましたが、前線からの守備が機能し前半のうちに逆転。後半には自陣からの素早い攻撃で2得点を追加し、4-1で勝利を収めました。今季最多タイとなる4得点を挙げ、12試合ぶりの勝ち点3を掴みました。


次戦、山口はアウェーで大宮アルディージャと対戦します。

霜田正浩監督の退任や4選手の退団など悲しいニュースも発表されていますが、残り3試合全力で応援したいと思います。