新型コロナウイルスの影響で異例のシーズンとなりながらも、ついに最終節を迎えたJ1リーグ。

2試合続けて無得点に終わっているサンフレッチェ広島はアウェーで名古屋グランパスと対戦しました。

   フォーメーション図 フォーメーション図

名古屋は1週間前の試合から最前線の選手のみを変更。山﨑凌吾が7試合ぶりのスタメンとなりました。一方、中2日での試合となった広島は4人を入れ替え。4試合ぶりの先発出場となる井林章が3バックの右に入りました。


プレスがはまらず

序盤、広島は前線からのプレスが機能せず、名古屋に攻め込まれる場面が続きました。

ボールを持った名古屋の最終ラインの選手に対し、広島はトップのドウグラスヴィエイラやシャドーの2選手が積極的にプレスをかけにいっていました。ただ、要所でダイレクトを使用してきた名古屋にパスを繋がれ、敵陣でボールを奪うことがほとんどできませんでした。サイドに誘導し名古屋を追い込む場面は何度かありましたが、マテウスや相馬勇紀にドリブルでスペースへ持ち出されたり、くさびのパスを山﨑に収められたりと名古屋の攻撃を続けさせてしまいました。

また、広島のプレスが連動せず、フリーの選手に繋がれるシーンも何度かありました。特に広島のシャドーが名古屋のセンターバックに寄せた際に、名古屋のサイドバックがノーマークになることが多く、そこで時間を作られてしまいました。ボールがサイドバックに渡った後、広島はウイングバックである東俊希や茶島雄介が寄せていましたが、完全に遅れていました。画面に映っていない場面もあり推測にはなりますが、マテウスや相馬が広島のウイングバックの視界に入るような位置を取ることで東と茶島は前へ出づらくなっていたのだと思います。

特に名古屋の左サイドバック、吉田豊は何度もフリーでパスを受け、前を向いてプレー。21分には吉田豊から山﨑への斜めのパスが攻撃のスイッチとなり、マテウスのシュートに繋がりました。吉田豊のヒートマップを確認すると、ハーフウェーライン近くでのボールタッチ数が多くなっていることが分かります。広島はこの位置でパスを受ける吉田に対して、素早く寄せることができず、名古屋に攻め込まれる場面が多くなってしまいました。

    攻撃スタッツ - 吉田 豊 ヒートマップ - 吉田 豊


飲水タイム

試合を優勢に進めていた名古屋は立ち上がりの15分で5本のシュートを記録。一方、広島は良い形は作れていたもののラストパスの精度を欠き、序盤はシュートを放つことができませんでした(参考:https://www.football-lab.jp/hiro/report/?year=2020&month=12&date=19)。

ただ、飲水タイム以降は逆の展開となり、広島がシュートで終わる場面が増加しました。31分に浅野雄也がペナルティエリア内で仕掛けてシュートを放つと、32分にはコーナーキックから荒木隼人がヘディングシュート。さらに、38分にはワンタッチの連続で素早い攻撃を仕掛け、川辺駿がゴールを狙いました。ただ、荒木のヘディングシュートはクロスバーを直撃し、川辺のコースを突いたシュートはランゲラックが片手でセーブ。名古屋ゴールに迫ったものの、先制点を挙げることはできませんでした。

試合開始から飲水タイムまでは名古屋に試合のペースを握られていましたが、飲水タイム以降は広島も持ち直し、シュートチャンスを創出しました。また、飲水タイム以降は名古屋に1本もシュートを打たせず。飲水タイムの前後で両チームともにシュート数が大きく変化するという展開になりました。


ボランチによるシュート

0-0で折り返した後半、最初にゴールに迫ったのは名古屋でした。

47分、相馬が左サイドの背後へ抜け出してペナルティエリアに進入。マイナス方向への相馬のラストパスに稲垣祥がダイレクトで合わせました。強烈なミドルシュートがゴールを襲いましたが、ボールはクロスバーを直撃。惜しくも得点とはなりませんでした。

一方の広島もその直後、ドウグラスヴィエイラが個人での突破からシュート。また、50分には、名古屋ディフェンスの間でパスを受けた川辺が前を向いてシュートを放ちました。ただ、こちらもゴールネットを揺らすことはできませんでした。

47分の稲垣、そして50分の川辺と、後半の立ち上がりに両チームのボランチがゴールに迫りました。2選手はこのシーン以外でも相手のペナルティエリア近くに顔を出す場面が何度もあり、シュート数はともに3本を記録。この数字はともにチームトップであり、両選手とも果敢にゴールを狙っていく姿勢が見られました。

また、ヒートマップを確認すると2選手ともボールタッチ位置が広範囲に及んでいることが分かります。ボランチとして攻撃を組み立てながら、ここぞという場面では前線に飛び出してシュート。さらに、両選手とも守備でもハードワークしており、攻守両面で動き回っていました。

    攻撃スタッツ - 稲垣 祥 ヒートマップ - 稲垣 祥

    攻撃スタッツ - 川辺 駿 ヒートマップ - 川辺 駿


山﨑のキープ

後半になっても両チームは集中を保ち続けていました。それどころか時間が経過するにつれ、お互いの守備が良くなっている印象すら受けました。ブロックを敷いた際の守備は堅く、攻撃から守備への切り替えも非常に速い。今シーズン失点が少ない両チームを象徴するかのような展開となり、0-0のまま試合が経過していきました。膠着状態が続くなか迎えた終盤、この試合唯一の得点となる先制点は稲垣のボール奪取から生まれました。

広島陣内でボールを動かしていた名古屋は一度はパスをカットされたものの、稲垣が素早い反応から前向きにインターセプト。再び攻撃を始めるとサイドから中央へとパスを繋ぎ、ペナルティエリア内の山﨑にボールを預けます。山﨑はディフェンダーを背負いながらキープして時間を作り、落としたボールを前田直輝(途中出場)がシュート。左足から放たれたシュートがゴール左上に決まり、名古屋の先制点となりました。

    攻撃スタッツ - 前田 直輝 ヒートマップ - 前田 直輝

前田のシュートはこれ以上ないというような軌道・スピードでゴールに吸い込まれていきました。もちろん、前田のシュート技術があってこそのゴールですが、同時に山﨑の高いキープ力もこのゴールに欠かせないものだったと思います。山﨑はペナルティエリア内でディフェンダーを背負いながら約1秒半キープ。その間に前田はダイレクトでシュートを打てる位置に走り込んでおり、山﨑が時間を作れていなければ前田のシュートはなかったと思います。

    攻撃スタッツ - 山崎 凌吾 ヒートマップ - 山崎 凌吾

失点後、広島は2度に分けて4選手を投入しましたが時すでに遅し。同点に追いつくことはできず、敗戦となりました。


試合総括

基本スタッツ

前半は両チームともにゴールに迫る時間帯がありましたが、得点を取ることはできず0-0での折り返し。後半はお互いの守備が堅く、膠着状態が続きました。ただ、終盤に名古屋が先制。広島はゴールを決められず1点差で敗れました。



シーズン総括

この試合が広島の今季最終戦ということで、簡単に今シーズンを振り返りたいと思います。

リーグ戦では13勝9分12敗で8位。ルヴァンカップでは1勝1敗でグループステージ敗退という結果でした(グループステージ第3節は新型コロナウイルスの影響により中止)。

広島は2月の開幕節、そして中断明けの第2節と、ともに3-0で勝利しリーグ戦は最高のスタートとなりました。ただ、その後は4試合勝ちなし→2連勝→4試合勝ちなしと勢いに乗ることができませんでした。シーズン中盤を過ぎてからは前線からの守備が機能し始め、1ヶ月負けなしという時期もありました。しかし、終盤は得点力不足が顕著となり、最終節を含めて3試合連続無得点。結果的には5試合勝ちなしでシーズンを終えることとなりました。

今シーズン、広島はルヴァンカップを含め、逆転勝利が一度もありませんでした。シーズン終盤には2点差を追いつく試合がありましたが、ビハインドをひっくり返した試合は0。得点力不足と合わせて、上位へ進出できなかった要因だと思います。

※以下は第33節までの得点パターン・失点パターンとなります。

   得点パターン 失点パターン

今年は4ヶ月半に及ぶ中断期間や試合の延期、超過密日程など異例の一年となりました。それでも、医療従事者の方々を始め、試合開催に関わる多くの方のご尽力により、リーグ戦全試合が開催されました。そして、選手・監督・チームスタッフの方々の奮闘により、毎試合素晴らしいプレーを見ることができました。Jリーグに携わったみなさま、本当にありがとうございました。


謝辞

最後に、このような機会を与えてくださったSPORTERIA関係者のみなさまに心より感謝申し上げます。スポーツアナリティクスに興味を持ち始めた自分にとって、Jリーグの実際の試合データを使用して分析できたことは非常に大きな経験となりました。2020年のJリーグが終了したこのタイミングでお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。

そして、未熟な分析・拙い文章にも関わらずブログをお読みいただいたみなさま、いいねを押してくださったみなさま、コメントしていただいたみなさまに深く感謝いたします。

長文となってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。