前節までの3連戦は1勝1分1敗だったレノファ山口FC

2度目の3連戦がスタートする第11節、山口はFC町田ゼルビアとリモートマッチで対戦しました。


スタメン

フォーメーション図  フォーメーション図

3試合連続完封勝利と好調な町田は連戦からメンバーをほとんどいじらず。ボランチに入った森下怜哉以外は前節と同じスタメンでした。一方の山口は前節からスタメンを5人変更。高井和馬と小松蓮が今季初めて2トップを組みました。


スタッツ

基本スタッツ

シュート数はともに12本。それ以外のスタッツでは山口がやや上回る結果となりました(PK数は除く)。

ボール支配率が高かった山口ですが、2得点はいずれも速攻から。3試合連続クリーンシート中の町田を相手に、第5節以来となる複数得点を挙げ、勝ち点3を掴みました。

ゴール期待値

ゴール期待値のグラフを見るとわかるように、序盤は町田が立て続けにゴールに迫りました。1分には長谷川アーリアジャスールのシュートがクロスバーを直撃。さらに、14分には平戸太貴のシュートがポストに当たるなど、山口がヒヤリとさせられる場面が何度もありました。町田のゴール期待値は20分までに0.8を超えており、山口としてはこの時間帯に失点しなかったことが勝利に繋がったと思います。

20分以降は山口がゴール期待値を積み上げ、後半に2得点。最終的なゴール期待値でも町田を上回る結果となりました。


序盤の守備

山口はクリーンシートを達成しましたが、序盤の守備は反省しなければならないと思います。特にクロスへの対応が悪く、ピンチが連続。1分や18分のシーンではサイド深くまで進入され、マイナスへのクロスからフリーでシュートを打たせてしまいました。どちらも最終ラインの前のバイタルエリアがガラ空きになっており、中盤の選手が素早く戻ってスペースを埋める動きが必要だったと思います。

また、16分には右サイドからのクロスに対し、へナンと高木大輔の間に入ってきた三鬼海にシュートを打たれてしまいました。クロスは三鬼の腰に当たり、威力が強くなかったために関憲太郎が弾き出すことができましたが、しっかりミートされていればゴールに入っていてもおかしくなかったと思います。前節も同じような形から失点しており、選手間の距離を空けすぎないことや、相手の位置を把握し、声をかけて共有することが重要になってくると思います。

得失点パターン

今シーズンはクロスからの失点数が最も多く4失点。今節のように、失点とはならなくても決定的なシュートを打たれる場面も何度もあるので、クロスへの対応は早急に改善してほしいです。


縦パスを狙う選手と受ける選手

攻撃面では、前半から町田のボランチ脇を狙う縦パスが何本も通っており、思いきってトライする姿勢が見られました。特に、自由に動き回る池上丈二や中盤に降りてきた2トップに対し、渡部博文が何本も縦パスを入れていました。パス成功率も90%と高く、カウンターを招くような失い方をすることもありませんでした。

攻撃スタッツ - 渡部 博文   ヒートマップ - 渡部 博文

渡部が縦パスを狙っているのは決してこの試合に限ったことではありません。スペースに受けにくるよう味方の選手に要求していた場面を何度も見ていますし、前への意識は非常に高い選手です。ベテランらしい落ち着きでプレスにくる相手を剥がしたり、利き足でない左足でも正確なパスを入れたりと、ボールを保持したい山口にとって欠かせない選手の一人となっています。

渡部のパスソナーを見ると、前方へのパスが多くなっていることが分かります。また、色の濃さは、佐藤謙介やヘナンよりも薄くなっており、相手の背後を狙うロングボールだけでなく、中距離の縦パスを送っていたことを示すデータになっています。

パスソナー・パスネットワーク

パスネットワーク図のデータからもう一つ述べておきたいのは、トップ下の池上についてです。池上は佐藤謙介や両ウイングバックに加え、センターバックとのパス交換も多く、さまざまな方向に矢印が存在しています。

ヒートマップを見ると、敵陣右サイドがやや多くなっていますが、左サイドや自陣でのボールタッチも一定数存在しています。このデータからも攻撃時はかなり自由に動き回っており、さまざまな場所に顔を出してボールに関わっていたことが分かります。町田のボランチの周辺にポジションを取ることも多く、相手の嫌な位置でパスを引き出せていたと思います。

攻撃スタッツ - 池上 丈二   ヒートマップ - 池上 丈二

ゴールに関わるスタッツでは、ラストパス3本にクロス5本と、どちらもチーム最多を記録。さらに、2点目のシーンでは最終ラインの背後へのパスで小松の得点をアシストしました。

なお、この場面では山口陣内でのルーズボールを渡部がワンタッチで池上に繋いでおり、アシストのアシストというプレーでしたが、非常に価値の高いプレーだったと思います。

両足で正確な縦パスを供給できる渡部とスペースで受けることができる池上の2選手が、これまで以上に持ち味を発揮したことが、勝ち点3の最大の要因だったと個人的には思います。


最後に

リモートマッチの中、無人のスタンドに向けて挨拶し、山口一番を踊っているのを見て、勝利以上に感動しました。次節はホームでの試合なので、是非とも連勝して再び山口一番を見せてほしいです。