ルヴァンカップを含む17連戦が終盤に差し掛かってきたサンフレッチェ広島

連戦の15試合目となる第15節では、アウェーでセレッソ大阪と対戦しました。


スタメン

フォーメーション図  フォーメーション図

中7日のセレッソは前節から2人を変更。左サイドに高木俊幸と新井直人が入りました。一方、連戦中の広島はシステムを4バックから3バックに変更して試合に臨みました。


スタッツ

基本スタッツ

ヤンマースタジアム長居でのラストマッチは広島の逆転勝利となりました。

シュート数はセレッソが広島の2倍となる14本を記録。ただ、枠内シュート数の差は1本であり、シュート精度では広島が上回っていたと言えます。

ゴール期待値

前半はお互いに低いゴール期待値で終わっていますが、後半はセレッソが1.4以上、広島が0.7程ゴール期待値を積み上げました。後半の立ち上がりには両チームともにコーナーキックから得点。その後はセレッソの方が多くのシュートを放ちましたが、広島がカウンターから2点目を決め、勝ち点3を獲得しました。

カウンターのシーンでは、ダンクレーに後ろから引っ張られながらも倒れなかったジュニオールサントスの強靭なフィジカル、そして推進力が勝ち越しゴールに結びつきました。サントスは久しぶりの得点も記録しましたし、ここから勢いに乗ってゴールを量産していってほしいです。


3バックにした効果

広島は今シーズンから4バックにトライしており、4-2-3-1や4-4-2、4-1-2-3などで戦ってきました。開幕後は8試合負けなしと悪くない滑り出しでしたが、その後の8試合では1勝2分5敗と苦しい状況でした。そんな中、城福浩監督は広島のスタイルとも言える3バックに戻すことを決断。あくまで1試合ですが、3バックに戻した効果は攻守両面であったと思います。

攻撃では、幅を取る選手がサイドバックからウイングバックに変わったことで、これまでよりも高い位置を取ることができていました。藤井智也と柏好文のヒートマップを見ても、両選手ともにアタッキングサード内でのボールタッチが多くなっていることが分かります。

ここのところ積極的に仕掛ける姿勢を見せていた藤井はもちろん、柏もドリブルで相手2人を抜いてチャンスを作るなど、両ウイングバックの個人技からチャンスが生まれていました。ただ、2選手合わせてクロスを7本記録しながらもラストパスの数は0本。中の選手との意思疎通も含め、最後の質の部分には課題が残りました。それでも、藤井・柏ともにサイドでの仕掛けに加え強烈なミドルシュートを放つなど、攻撃での貢献は少なくなかったと思います。

攻撃スタッツ - 藤井 智也   ヒートマップ - 藤井 智也

攻撃スタッツ - 柏 好文   ヒートマップ - 柏 好文

また、守備では常に最終ラインに吸収されるわけではなく、1列前へ出てボールホルダーへ寄せる場面も多くありました。イメージとしては、ウイングバックが最終ラインに入りシャドーがサイドハーフになる「5-4-1」と、シャドーが3トップのウイングのようになりウイングバックが2列目に上がる「3-4-3」の両方を状況に応じて変化させていたような感じです。

特に広島の左サイドでは、やや低めの位置にいる坂元達裕にボールが入った瞬間に藤井が素早く前へ出て距離を詰めることが多く、簡単に前を向かせないことで坂元の特徴であるドリブル・スピードを封じ込めることに成功していました。

時間帯別パスネットワーク図を見ると、特に前半0分-前半15分や前半30分-前半45分の時間帯で藤井(15番)・柏(18番)が高い位置でプレーできていたことが確認できます。この試合では3バックの野上結貴(2番)や佐々木翔(19番)もタイミングを見て高い位置まで上がり、攻撃参加する場面も見られました。2選手が同時に前へ出ることはほとんどなく、ボールと逆サイドの選手が基本的に後ろに残ることで、攻守のバランスも上手く取れていたと思います。

時間帯別パスネットワーク図


セレッソの背後狙い

さらに、3バックにしたことは最終ライン、特に中央の荒木隼人にとっても良い効果をもたらしていたと思います。

今季は4バックの右で出場することが多かった荒木ですが、昨シーズンまでの安定感ある守備はあまり発揮できていませんでした。ただ、この試合では昨年のポジションに戻ったこともあり、危なげないプレーを披露。セレッソの清武弘嗣や藤田直之が何度もディフェンスラインの背後へパスを出していましたが、飛び出す選手(パスの受け手)にしっかりとついていき、仕事をさせてませんでした。

また、広島がリードした後には、セレッソがクロス攻撃を多用してきましたが、中央で跳ね返し続け同点ゴールは許しませんでした。守備スタッツでは、クリア数13回を記録。荒木が中央にいる安心感によって、野上や佐々木も最終ラインを離れて相手選手についていくことができるようになりますし、良い相乗効果になっていたと思います。

守備スタッツ - 荒木 隼人   ヒートマップ - 荒木 隼人


最後に

広島はシステムを変えたことが良い結果に繋がり、逆転勝利となりました。後は、流れの中からサイドを崩してのゴールなどが生まれれば、もっと勝てるチームになっていくのかなと思います。というか、個人的にそういうゴールが見たいです。