第一節を鹿島視点で見たレビューを少しだけ。

今節の試合、SNSなどでは鹿島サポの評価は散々だった。それもそのはずの完敗。先制してから僅かな時間で三失点を喫し、言ってみれば「鹿島らしさ」のない負け方だ。開幕節は、今年戦うリーグ戦38試合の中でも重みが違う。ザーゴ体制になった昨年、先制しながら逆転負けという展開がなかったこともあり、低評価も当然といえる結果だっただろう。

そんな試合のデータを振り返ると、オフシーズンで忘れかけていたことを再認識できる。ネガティブな書き出しをしてしまったので、出来るだけポジティブに書きたいところ。


基本スタッツ


ゴール期待値


まず各種データから試合全体を振り返る。


基本スタッツやゴール期待値から見ると、概ね鹿島側が押す展開が続いていたことが伺える。実際得点した70分までは鹿島ペースの時間帯が多かった。この部分については、鹿島が有利に進めたとも、それでも70分間点を取れなかった(清水がゴールを割らせなかった)とも取れるが、結果として先制点をあげた以上、ある程度評価して良いのではないだろうか。


しかし、シュート数の差(22:8)ほどに決定的な得点機の差があったかといえば、そうとも言い難い。

確かに鹿島の2トップは他にない武器だ。エヴェラウドと上田の二人から繰り出される攻撃を0点でしのぎ切るのは至難の業というべきだろう。彼らの破壊力を見て知っていると、清水のDF陣は素晴らしい仕事をしたとも思うほどだ。事実、鹿島に決定機をそこまで作らせなかったロティーナ清水の守備は素直に称賛したい。

どれだけ良いFWがいても、そこに良いボールが入らなければ得点には結びつけない。この点が鹿島の課題であり続けていることはエリア間パス図のデータを提示するまでもなく明白で、メディアで散々2トップに高評価が与えられているからこそ、再認識すべきだろう。


次に「パスソナー・パスネットワーク」をどう解釈するか。


両CBとボランチのパス数が多く、しかしエヴェラウドと上田の2トップに入ったパス数は少ない。正直二人ともにここまでボールが供給されていないのは厳しく見るべきだろう。

「データなんて見なくても明白だろ」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、データ上でもビルドアップの中心となっているのはやはり右CBの犬飼。両CBの間にボランチ一枚が下りてくる形(いわゆるサリーダ・ラボルピアーナ)で安定的にボールを前に進めようとする。

下は両チームの右CBのヒートマップだが、同じ442の右CBでもタスクが違うことは明らかで、両監督両チームの思考・戦術を反映しているようだ。鹿島犬飼がより右サイドに、前によった立ち位置をとっていることがわかる。


ヒートマップ - 犬飼 智也ヒートマップ - ヴァウド


パスソナー・パスネットワーク


だが、今節の鹿島は必ずしもボールを大事にというプレーではなかった。むしろ、多少精度を欠いたとしても、前へ前へという姿勢だった。

サリーダを行うとき、重要になるのがGK、CB、そしてボランチの選手たちだ。では、このポジションの鹿島の選手たちのパスを見てみる。

まずGKの沖だが、明白だ。パス本数が多い正面及び斜め左方向へのパスの平均距離は30メートル(以上?)。GKからしっかり繋ぐというより、前線へ長いボールを使っている。あるいは右で作ろうとして戻したボールを左サイドへ長いボールを蹴っているのだろう。

同様にCBの二人、特に犬飼の最も回数の多い斜め左方向へのパスは飛距離も長い。

三竿永木の両者も、前へのパスの飛距離が長くなっている。

ここには含まれていないと思うが、ロングボールは失敗している数も多いはず。2CF、またはサイドチェンジなど長いボールを多用していたことが伺えるデータだ。


とはいえ、これ自体に問題はない。前線の高さというストロングがある鹿島からすれば(それ一辺倒になってしまっては困るが)有効な戦術だからだ。

清水は完全に自陣に引きこもるのではなく、上がってきた鹿島の最終ラインに対してある程度の圧力を加えてきた。清水対策として(あるいは蹴らされた)なのかどうかが問題となる。

前述したように、ロングボールを使って前進する方法自体に問題はない。しかし、それしかできない状態ならば、少々問題かもしれない

いくら強いFWがいても、確実ではない。折角ボランチ落ちでビルドアップを試みようというのだから、多少のリスクをとっても確実性の高い方法で進んでも良いと感じるし、その精度が求められているはずだ。


ただし、今節のロングボール多用は比較的良い選択肢であったことは追記しておきたい。

より精度を高める上で重要なのがボランチの働きだが、残念ながら現時点での鹿島ボランチ陣では容易ではないのも事実だ。丁寧に繋ぐよりも多少アバウトなボールを蹴って狩らせる方が特徴を活かせるだろう。

三竿や永木はビルドアップに特徴のある選手なわけではないし、可能性がありそうな小川や舩橋は高卒で未知数だ。その点せめてレオが復帰すれば、あるいはピトゥカが合流すれば、鹿島のサッカーは変わってくるはずだ。

だからこそ、彼らがいない今、どのようにして勝つのかを考えなければいけない。エヴェラウドと上田を活かすサッカーで序盤戦を乗り切る。前からの守備は良かった。セットプレーが点に繋がったのも好印象だ。反面引いた相手をどう崩すのかという課題は残念ながら昨年と変わらない。ザーゴが次節どのように変えてくるのか、またそれによってどのようにデータが変わってくるのかを見てみたい。


またザーゴは4411が好みのようだ(?)が、ボランチにピトゥカが入り、4411にすればパスソナーも変わってきそうだ。まだ一試合目なので、この点は次節以降の比較を楽しみにしている。

パスソナーについては、単にパスの傾向だけでなく、距離感などそこから読み取れる部分も多いはずだ。上手く使えばサッカーの新たな見方を提供してくれるだろうだけに、私もいろいろと勉強しなければいけないと思わせられた。


蛇足だが、今節の敗戦の要因は、戦術面以上に精神面にあると思っている。……データを見て考えるレビューにも関わらず、メンタルを指摘するのはどうかとも思うのだが。

ロティーナ監督は流石の采配だったと思う。守備も得点も「してやったり」という感じだろう。だが、守備的な相手に対して鹿島は先制して見せた。その後の緩みがなければ……と思わずにはいられない。チームの精神的支柱の必要性が浮き彫りになったゲームでもあったように思える。