どうも。さかりーにょです。

クラブ初となる欧州出身者のㇾネ・ヴァイラー監督を招聘し、伝統に対する悪い意味での固執からの脱却を図ろうとする鹿島アントラーズ。

コロナウィルスの影響で入国が遅れていたにも関わらず蓋を開けてみれば7節終了時点で6勝1敗の成績で見事首位を走っている(2022年4月9日現在)。

今回は、そんな名門鹿島アントラーズの改革を任されたㇾネ・ヴァイラー監督の4-4-2戦術をJ1第8節鹿島アントラーズ対横浜Fマリノスの一戦を基に分析していく。

2022J1リーグ第8節 鹿島アントラーズVS 横浜Fマリノス

スタメン、スタッツは以下の通り。

スタメン

スタッツ

ㇾネ・ヴァイラー式『プレーモデル』 

『ポジショニングと運動量の追及したアグレッシブなサッカー』

ㇾネ・ヴァイラー監督はこのサッカーを実現するために

①局面における各選手の立ち位置の明確化

②90分間アップテンポのサッカーを継続できる運動量

を必要条件として、トレーニングで落とし込んでいる。

特に①の立ち位置に関しては非常に細かく、

攻撃面では、

・3ラインの全選手がボールに対して『斜め後方』に入り、常時サポートする

・両CHは横並びにならず、縦関係や斜めの関係を作る

ということが徹底されている。

守備面では、

・ボールの位置によって定められた位置までスライドする

・ハイプレス、リトリート時の使い分けとその時の立ち位置

などにプレーモデルの原則が落とし込まれている。

局面①:攻撃分析

『立ち位置で数的優位を実現しながら攻撃する』

これはㇾネ・ヴァイラー監督の志向する攻撃原則であるが、横浜Fマリノス戦では『ロングパスとカウンターアタックを多用したダイレクトフットボール』が展開されていた。

主な攻撃のパターンとしては、

①ハイプレスからのショートカウンター

②リトリートからのロングカウンター

➂ロングボールを打ち込んで個の力で局面を打開する

④2列目の飛び出しとSBのオーバーラップ

という大きく4つのパターンを持つ。

特に攻撃の起点として目立ったのが鈴木優摩選手。相手SB背後のスペースに抜けて幾度となく攻撃の起点となっただけなく、39分には自陣のゴール前からドリブルで独走し、ロングカウンターを発動さえて決定機を演出した。

さかり―にょ豆知識

樋口雄太選手が蹴るセットプレー時のボールは非常に精度が高い。しっかりとデザインすれば大きな得点源になる可能性があると分析。

局面②:ネガトラ分析

『即時奪回』をテーマに凄まじい強度でボールを失った瞬間に取りにいくという約束事が徹底されており、個の切り替え時のプレスが上手く決まらない場合にはリトリートして自陣前にブロックを形成する。

局面➂:守備分析

ㇾネ・ヴァイラー監督の守備戦術の原則は4-4-2の『立ち位置』に拘ったコンパクトな3ラインから繰り出される連動した守備である。

相手とボール、味方の位置によって守備者の立ち位置が変わる。

主な守備パターンは

①ハイプレス

②リトリート

であり、共通して1対1対応時の強度が恐ろしいほどまでに強い。限定ではなく、ボールを奪いきることができる強度で1対1を対応する姿からㇾネ・ヴァイラー監督の守備強度に関する要求の高さが伺える。

①ハイプレス時

2トップの鈴木優摩選手と上田綺世選手のワンサイドカットプレスを「トリガー」としてパスの出しどころを制限し、その際の「ボールの位置」と「仲間の位置」によって後方の選手の立ち位置が決まる仕組みとなっている。特に鈴木優摩選手の献身的で連続したプレスはこの

ハイプレス時には「中盤サイドエリア」を「ボールの取りどころ」として定め、相手のSBやSHにボールが入るように誘導し、激しい1対1のディフェンスでボールを刈り取る。

一方で、後半は運動量が激減したためにハイプレスの連動が上手く決まらないシーンが多く、間延びした3ラインの「ライン間」をマリノスに使われるシーンが目立った。

②リトリート時

リトリート時には4-4-2のブロックを自陣に形成し、一糸乱れぬスライドとコンパクトなライン間距離の調整で相手からスペースを消す。

この時に、縦に入る楔のパスへの強度が非常に高いことが特徴である。一方でCBの関川郁万選手の1対1の対応は「前に強く後ろに弱い」という古典的なCBであり、アジリティ能力にも疑問符が付く。細かなステップで狭いスペースでも前進できるタイプを対峙させられた時には大きな痛手を負う可能性があると分析。また、その特性上大きなサイドチェンジ時にスライドが間に合わずにピンチを招くシーンも散見された。今後サイドチェンジへの対応も講じる必要もあるであろう。

局面④:ポジトラ分析

「相手ディフェンスラインの背後」をポジトラ時の最優先事項に設定していると分析。

2トップの個の能力が高いために前の準備が整っていなくてもアバウトなボールを相手の背後にどんどん打ち込んでいくのが鹿島アントラーズのポジトラの特徴である。

実際に、この試合で2トップはこのようなロングボールをことごとく収め、時には相手DFと入れ替わるなどしてチャンスを演出し続けた。

さかりーにょeyes『鹿島アントラーズ敗戦の原因』を分析!

結果として0-3で終了したこの試合の敗因はどこにあるのか?

その答えは「ゲームコントロール能力の低さ」である。

前半だけ見れば圧倒的な運動量と前線からのプレスで試合を優位に進めていたのはむしろ鹿島アントラーズと言えた。しかし、中2日の過密日程でハイプレス&カウンターのアップテンポのサッカースタイルは前半45分で鳴りを潜めた。

その後はリトリートで横浜Fマリノスの攻撃をサウンドバックのように受け続け、頼みの綱の鈴木優摩選手も70分過ぎで足を攣り、自ら監督に交代を志願した。

今後鹿島アントラーズがリーグ戦で勝ち続けるためには「ゲームのテンポ」をコントロールする術、つまりボールポゼッションの仕組みを落とし込み、ボールを保持する時間を確保することが急務であると分析。

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