1、前置き
2021シーズンの一桁回、最後の9回目の「ファジにデータでフォーカス」。今回は、27木村 太哉にフォーカスを当てていきたいと思います。タイトル通り、中への意識が、強くなってきていると感じられている方も多いのではないでしょうか?
そこについて、データではどうかを、私なりに解析して、文章として整理して行く中で、確認していきたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
2、27木村 太哉のヒートマップ
どういったポジションを取りをしているかどうかは、ヒートマップが分かり易いと思います。今までは、データの後に結論を書いていましたが、今回は、着目点を予め、答えをだした上で、整理していく事で、データを見て行きましょう。
まず、これが左SHの27木村 太哉のヒートマップ。
そして、対比するヒートマップとして、最適である逆最後の右SHの14上門 知樹のヒートマップを見てみましょう。
14上門 知樹の分布には、恐らくプレースキックも混ざっているので、中央も混ざっていますが、両選手を比べた時に27木村 太哉の方が、内よりで、かつ高い位置である事が分かると思います。
エリアとレーンで整理してみると・・・
27木村 太哉は、「アタッキングサード」で、「ハーフスペース」。
14上門 知樹は、「ミドルサード」で、「サイドレーン」。
左SHの時の14上門 知樹は、もう少し攻撃的な位置で、プレーしていました。
10節前の山口戦での「14上門 知樹」の「ヒートマップ」
URL:https://sporteria.jp/data/2021032111/113148
は、こちら(同サイト)。
3、ヒートマップで見る左サイド
では、この狙いや、大宮戦における近いポジションの関係性をヒートマップで、詳細に見てみましょう。
まずは、27木村 太哉の左サイドから行きたいと思います。
再確認のために、再び27木村 太哉のヒートマップから。
左SBの41徳本 悠平。
少し低めの位置が、中心となっています。前目の位置が多くなっているのは、SHに上がった時間も関係していますが、どちらかと言えば、機をみた攻撃参加の回数が一定数合った事も関係していそうですね。27木村 太哉との関係性ですが、ある程度自立した縦の関係の時間が長いと、言えそうです。
そして、20川本 梨誉のヒートマップ。
最近の試合では、バランスよく色々な位置で、攻撃に関与できていた20川本 梨誉ですが、この試合では、左サイドの位置が濃くなっています。ポストプレーでのパス交換や、パスの受け方と巧い20川本 梨誉。この試合は、左サイドの方が、巧く機能していた事が読み取れます。27木村 太哉からの浮き球のスルーパスは、圧巻でした。今後のホットラインになって欲しい。
CHとDHもしくは、CH2枚と言えるボランチ2選手の7白井 永地と28疋田 優人のヒートマップ。
本来、右サイドが担当の筈の7白井 永地が、左の方が濃くなっています。逆に28疋田 優人は、左サイドでは、27木村 太哉の周辺。右サイドでは、14上門 知樹周辺でのエリアで、濃くなっています。
これは、28疋田 優人が、20川本 梨誉のように、パスの受け手であると同時に、アクションを起こす役割が強いからで、チームとして攻めようとしているエリアに近づき、フォローもしくは、自ら主体的にアクションを起こす事で、局面の打開を図り、ゴールに迫るアクションを進めるプレーが中心だからと言えそうです。つまり、濃くなっているエリアの所で、将棋で言う所の歩の突き捨てというアクションが起きており、ここでの攻防で、得したチームが優位に立てる争点である。
一方で、7白井 永地のヒートマップが、左サイドで、濃くなっているのは、27木村 太哉のキープ力やドリブルでの局面を打開する力が高いからである。争点に顔を出す28疋田 優人とは違い、7白井 永地の方が若干、低めの位置。これは、27木村 太哉と28疋田 優人、20川本 梨誉、41徳元 悠平のフォローという狙いがある。
縦への仕掛けをするためには、横を挟むのも野球で言う所の外角と内角の使い分けの配給で、効果的にコースを使い分かる事で、打者を打ちとる確率を高める事ができる。サッカーでも、縦と横のパスコースの選択により、守備側の読みを外す事で、より前に運ぶ効率と確率を高める事が可能となる。
サッカーとは、攻める時は、高い位置にいかに効率よく運び、ゴールの確率を上げて多くゴールを決める。守る時は、いかに低い位置への侵入を阻み、ゴールから遠ざけてゴールを阻むか。そして、ゴールの数の多さを競うスポーツである。
7白井 永地は、27木村 太哉を中心とした左サイドの攻撃の土台として、プレーする時間の多さが、こういったヒートマップになったと言える。
4、ヒートマップで見る右サイド
では、右サイドを見て行きましょう。
改めて、14上門 知樹。左サイドと、同じようにSBの・・・
16河野 諒祐。
14上門 知樹と違い、縦に幅があり、横が狭いですが、基本的には、CB・CH(DH)・SH・ST・CFといった近くの選手と横へのパス交換しながら上がっていく選手であることは違うデータでフォーカスに、まとめています。
興味ある方は、こちらからどうぞ。
16河野 諒祐は、この試合では、14上門 知樹と、近い位置でのやり取りをして、ここから前に運ぼうとしていましたが、なかなか深い位置への侵入が難しかった事を示すデータとなってしまっています。
続いて、左サイドでも紹介した28疋田 優人のヒートマップ。
やや中央寄りながら右サイドでの攻撃に関与しています。これは、14上門 知樹と16河野 諒祐と共に、細かいパス交換で、打開している事を意味しているので、ドリブルでの仕掛けが、必要最低限となっている。その結果、14上門 知樹の持ち味のドリブルが減ってしまっている。その上、この試合で、この3選手では、深い位置に運べてないように映るので、次の選手のヒートマップを見てみましょう。
15山本 大貴のヒートマップ。
右のサイドの深い位置が、一番濃くなっていますね。これは、14上門 知樹を軸に、16河野 諒祐と28疋田 優人は、サイドの深い位置に侵入する事もありますが、この試合では、1つの選択肢止まりで、中へのパスの配給を狙っていた組み立てをしていた。
つまり、サイドでの組み立ては、サイド深くまで運んでクロスを入れていくという攻撃よりは、少しずつサイドを上げつつ、中への侵入やパスを配給をしていく事を狙っていた。加えて、サイドを深く侵入する選択肢の優先度を下げる事で、そこのスペースが空き易い状況を作り、15山本 大貴が、そのスペースを使う余地を残していたという狙いが見えてきました。
5、個人スタッツ(攻撃)でみる右サイドの攻撃意識
右サイドの14上門 知樹と16河野 諒祐の個人スタッツ(攻撃)。
右サイド深くへの侵入よりは、中へのパスの配給を意識しているという話をしましたが、それがこのデータのクロス0という数字となって表れています。試合によっては、16河野 諒祐が、深い位置に侵入する事が多いですが、この試合では、ほぼなかった。
一方で、15山本 大貴の個人スタッツ(攻撃)。
クロス2本を記録しています。サイド深くに侵入する狙いは、基本的にクロスを配給して、マイナスのクロスやアリークロスで、ゴールを向いての対応をさせる狙いがあります。14上門 知樹と16河野 諒祐が、あえてそういった狙いを持っていなかった。加えて、その結果によって、15山本 大がスペースを使えて、クロスを2本も入れる事ができた。そういったデータであったと言える。
6、個人スタッツ(攻撃)で見える左サイドの攻撃意識
左サイドの41徳元 悠平と27木村 太哉、20川本 梨誉の個人スタッツ(攻撃)。
右サイドとは、対照的にクロスを3選手とも記録しています。サイドの深い位置に侵入する意識をある程度、高く持って攻撃をしていた事を意味します。27木村 太哉は、中への意識も高く持っているので、クロス数よりは、ラストパスが多くなっていますが、ドリブル、もしくは、サイドへのパスで、そこをSBやSHで使っていこうという意識が高いことが分かります。
7、左右のサイド攻撃の違いを総括する
ここまでのデータ参照の時間が長くなったので、最後の確認に移る前に、これらを整理していきたい。
「左サイド攻撃」
・27木村が中への意識が強く、中寄りのポジショニングを意識している。
・一定のドリブル意識を持った崩しを意図している。
・41徳元と27木村は、縦の関係で、一定の距離感を保つ時間が長い。
・20川本、28疋田、7白井といった選手が、左サイドの攻撃に各々の狙いを持ってサイド攻撃に関与している。
・左サイドの深い所を狙うことを41徳元、27木村、20川本は、意識していた。
「右サイド攻撃」
・14上門は、中央の右サイドでのポジショニングを意識している。
・一定のパス意識を持った崩しを意図している。
・14上門は、横の意識(中を使う意識)を持った関係性の崩しを意図している。
・14上門、16河野、28疋田が中へのパスを意識した右サイドに拘らない攻撃を意図している。
・右サイドの深いスペースは、15山本 大貴のみ強く意識していした。
8、時間帯別パスネットワーク図でみるサイドの関係
前半は、27木村 太哉が、中に位置している事が多いデータとなっている。その結果、41徳元 悠平のヒートマップの位置は、自陣深く一番多かったが、パスを受ける位置としては、本来27木村 太哉が、ポジションを取る事が多かった、ミドルサードのサイドレーンの位置で、難なく受ける事ができた。そのため41徳元 悠平は、サイドのパスが出されると、加速しながらそこで受けるシーンを作れていたために、こういったデータとなった。この結果、サイドで、良い形で、ボールが持てたので、クロス数も4本に繋がった。
一方で、右サイドは、ヒートマップとは、大きく異なるポイントで、14上門 知樹が中の位置でもボールタッチしている時間帯が長くなっている。これは、左サイドは、ボールキープやドリブル突破で、局面を打開している場面もあるが、右サイドでは、無理に仕掛けずに、中へのパスや中に運ぶプレーや逆サイドまで展開していく事が少なくなかったからである。
また、右サイドで、前への進路が詰まっていても、無理にドリブルやパス交換での打開を図らずに、逆サイドに運ぶ攻めにシフトする場面も多く、逆サイドや中央からその後ろを15山本 大貴が狙うために敢えて無理しなかった側面もある。
逆サイドに攻撃をシフトして行く中で、右サイドも左サイドからの攻撃に備えるプレーや、右サイドの深い位置を攻略する機会を窺っていた。そういった事が分かるデータである。
9、エリア間パス図でみるサイドの関係
一方で、エリア間パス図は、分かり易い構図となっている。
左サイドでは、中を27木村 太哉が意識する事でハーフスペースのミドルサードやアタッキングサードで受けて、サイドレーンのアッタキングサードを41徳元 悠平や20川本 梨誉が使えている。また、ミドルサードのハーフスペースで、7白井 永地や28疋田 優人、27木村 太哉のパス交換のやりとりがある程度、行われていることが分かる。ただ、中央から崩す意識は、チームとしては高くなく、自由に使う余地を残している。
右サイドでは、ミドルサードのハーフスペースとサイドレーンでのパス交換を織り交ぜつつ、アタッキングサードのサイドレーンを15山本 大貴にどう使わせるかというのが、はっきり見て取れる。また、判断良く逆サイドまでサイドを変えて、個の力で局面を打開する動きもはっきりと見て取れるデータとなっている。
こうして見てみると、27木村 太哉が、中を使う回数が増えてきているのは、戦術的な狙いが含まれている事を感じる事ができた。ただ、個人的には、14上門 知樹のプレーが、窮屈になっているとも感じられるので、何らかの形でより持ち味を発揮できるような組み合わせにもトライして欲しい。それでも、27木村 太哉のドリブルの突破力や、ラストパスの可能性を考えると、現状は、27木村 太哉の良さを活かすという方針も悪くないのも事実だが、再考の余地はあると言える。
10、総括(後書き)
序盤に比べて、9と10では、要点を絞り切れず、難しい考察となってしまったが、27木村 太哉が中を使う事での変化と、この試合での左右のサイドの攻めの狙いの違いついては、ある程度の言及こそできた。
ただ、データでの考察なので、より分かり易いものにしていきたいと思っています。そのために、もう少し巧くまとめる事ができればと、今回は反省している。その辺り、今後もレビューを書いていく上で、色々とトライしていこうと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様
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は、こちら(別サイト:note)。
コメント(3)
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SPORTERIAスタッフ
2021/5/23 14:33
凄い詳細な分析!👏
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SPORTERIAスタッフ
2021/5/23 14:34
エリア間パス図でみると、右のレーンの前から2段目のところに長めのパスがしっかり通っているので、ここを起点にエリア内に進入していけるといいのかな?と思いました💡
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杉野 雅昭(masaaki sugino)
2021/5/26 22:13
コメント有難うございます。
素人考え的には、右サイドもペナルティエリアの横の深い位置をもう少し使えたほうがいいのかな?という気もしますが、戦術的なところや選手の特性的なところでいろいろあるのでしょうね。
右サイドの深い所を、どう活用するかは、今の右サイド攻撃の課題でしょうね。
14上門 知樹の起用法含め、色々なアプローチが、まだあると思いますので、有馬マジックに期待したいです。