1、前置き


試合を見ていて、10宮崎 幾笑にフォーカスを当てる予定でしたが、7白井 永地と5井上 黎生人、13金山 隼樹に当てるべきデータが出ていたので、今回の中心はこの3選手にフォーカスを当てます。


まずは、結論や後に使用することが多かったデータ「パスソナー・パスネットワーク」から見ていきます。


2、見事なまでに集まるパス


パスソナー・パスネットワーク

御覧の通り、ここまで、全試合フル出場の3選手にパスが多く集まる結果となっている。特に5井上 黎生人と7白井 永地は、チームトップタイの81本を記録。本来、ボールタッチ数が少なくなるGKの13金山 隼樹も38本も記録。


まずは、5井上 黎生人ですが、守備ではまだDFリーダーと言えるほど、チームを落ち着かせるという成果をあげることはまでは出来ていないが、パスの出し手としても受け手として、DFラインの中心となっている。パスの長短のパスの使い分けや、サイドチェンジなど、パスの種類も多岐にわたる。彼が欠場することが起きれば、DFラインでの安定したパス回しというか組み立ては難しくなる。後ろからの組み立てにおいて、落ち着きどころとして、信頼されている事を示すデータと言える。


次に7白井 永地ですが、中盤でのパスの中継点である受け手として、パスが集まっており、前に運ぶという点でも20川本 梨誉に一定数のパスを通している。この試合の栃木の一定のエリアに侵入した時の寄せに対して、ミスパスが目立った28疋田 優人とは、対照的な数値と言える。逆に少し前は、攻撃の中心となっていた28疋田 優人の数値としては、正直物足りず、壁に当たりつつあると言える。7白井 永地も仕掛けるパスは28疋田 優人に任せる傾向にあったが、守備の対応での移動を含め両サイドの組み立てに関与して、存在感を増している。


また、13金山 隼樹のパスを見ても33阿部 海人より5井上 黎生人へパスの選択が多く、5井上 黎生人が、後方に位置している事が多いこともあるが、やはり、試合出場時間を良い意味で伸ばしている事で、自然とパスが集まってくる。そういったシンプルに分かるデータと言える。


一方で、気になるのが14上門 知樹。FWを除いて最少の29本のパスに留まっている。守備が巧く、視野が広い選手ではあるが、やはりもっとボールに触る事ができれば、ゴールに迫れる選手であると思いますので、やはり左サイドもしくは、トップ下での起用を模索して欲しい。試合後のコメントで、慣れて来たと語っているが、ドリブルやシュート以外の武器を探しているというのも寂しい。サポーターとしても14上門 知樹のドリブルやミドルシュートが見たい。1つの前のデータでフォーカスでも、右SH(OH)での起用の意図と触れたが、左サイドであれば、攻撃の中心となる14上門 知樹が、この数値になってくると、もったいないと強く感じる。


3、攻守のスタッツ(5井上 黎生人)


攻撃スタッツ - 井上 黎生人

多くのパス数と高いパス成功率。ビルトアップのミスパスは、ほぼなかったと思いますので、ロングパスやミドルパスに一定数トライをしたこと示すデータです。また、セットプレーでは、惜しいヘッディングシュートがあった。開幕前には、セットプレーでの得点が期待されている選手なので、そういったシーンを増えてくると面白いと思います。

攻撃スタッツ - 阿部 海大

比較対象である33阿部 海人。5井上 黎生人と遜色ない数値を記録している。パスの失敗本数が5井上 黎生人より少しだけ多い。5井上 黎生人より、少し前でボールを持つことが多いので、トライするパスが多いのか、もしくは、トライしているパスの失敗数の本数が多いのか。ただ、この2人のCBになってからは、後でのパス回しのスピード感は上がった。両選手とも良い右足を持っている。5井上 黎生人は、左足の精度にも定評がある。主導権を握ることのできる組み合わせと言えるので、今後の成長による伸びしろに期待したい。

守備スタッツ - 井上 黎生人

ファウル0で、守備のスタッツをバランスよく記録。ブロック数の多さは流石だが、状況に応じて、タックルにトライする事や、危険なシーンでのクリア、こぼれ球への反応高さを示すデータも記録。チームとして、4濱田 水輝という守備の拠り所となる柱の離脱により、判断の正確性を欠くプレーこそ目立ったが、個の守備では相変わらず、高いスタッツ。33阿部 海人との連携を深めて、堅守を構築したい。

守備スタッツ - 阿部 海大

彼の持っている潜在能力を考えると、少し物足りない数字。ただ、要所では素晴らしいボール奪取を見せている。ただ、2つ目の対応に手を焼いている。ボールを奪った後にどうするか。そこまでの予測というか、心の余裕はまだ持てていない。ここが、安定してくれば、守備はより安定したものとなる。


4、攻守のスタッツ(7白井 永地)

攻撃スタッツ - 白井 永地

高いパス成功率に加えて、シュート、ラストパス、クロスとバランスの良い数値を記録。一定のエリアに侵入すると寄せが厳しくなるゾーンディフェンスの第一人者である長崎の松田 浩監督の率いる長崎の厳しい寄せに対しても尻込みすることなく、安定した数値。前のめりになりたくなる場面でもじっとこらえて、そこからしっかり組み立てる。ベテランのような落ち着きを感じる素晴らしいスタッツ。

攻撃スタッツ - 疋田 優人

出場時間が短い点を考慮しても決定的な仕事ができなかった28疋田 優人。バイタルエリアでのミスパスの多さが目立った。そこでのボールロストは、チームが前掛かりになっているので、極力通したい。ポジショニングや、そういった時のパスの選択の判断の質という課題を残した。そろそろ疲れが出てくる事なので、身体的疲れというよりは、心の疲れを抜いて、判断をよりクリアにする必要があるかもしれない。その右足での決定的な仕事に期待しています。

守備スタッツ - 白井 永地

ブロックこそ記録していないが、バランスの良い数字。特に毀れ球奪取4。チームとしてのセカンドボール回収という意識の高さを改めて感じるデータ。こういった良い点もチームの中で持つことができるのは、出場時間が長い事による利点と言える。ただ、ポジションと出場時間を考えると、もう少し全般的に数値を伸ばしたいのも事実。

守備スタッツ - 疋田 優人

出場時間を考えると、7白井 永地以上のスタッツと言える。特にブロック数2。前からの守備意識の高さや、パスコースを読む力のセンスを感じる。この辺りの数値を攻撃のパスに選択に繋げる事で、攻守での岡山の中心となれる可能性を秘めている。今や、上位チームで出場機会を掴んでいる元岡山の島田 譲(新潟)や、武田 将平(京都)のように、岡山のルーキーの1人として今後の成長に期待したい。


5、GKスタッツ(13金山 隼樹)


GKスタッツ - 金山 隼樹

GKスタッツに触れるのは初で、新鮮なですね。被シュートの9本の内、枠内シュートが8本ありますが、失点が1で、シュートセーブが2本。被枠内シュートの内5本は、味方がブロックしている事となります。これは、コーチングが良く響いている13金山 隼樹の声が効果的で、味方選手との連携が、ある程度できている事を示しています。また、その確率を上げる的確なポジショニングを状況判断の良さを示すデータでもあります。


また、多くのパスと高い成功率。これは、組み立てにある程度関与していたことを示すデータと言えます。繋ぐ事を意識していると語っていましたが、そういった事が、形として現れつつあると言える。


6、総括(後書き)


「5井上 黎生人」
・チームトップタイの81本のパス数が示す通り、ビルトアップとの中心として機能。
・多彩なパスを使い分けている中でも高いパス成功率を記録。
・ビルトアップにおいて、33阿部 海人と良い関係を築いている。
・守備の連係こそ課題があるが、個人でみると高パフォーマンスを維持。


「7白井 永地」
・5井上と同じチームトップタイのパス数で、攻撃の組み立ての中心として機能。
・組み立てでのパス回しではなく、ラストパスやクロスなど、攻撃に行くパスでも貢献。
・高い毀れ球奪取数が示す通り、開幕当初から大事にしてきた事を体現したスタッツを記録。
・全体のスタッツを見ると、改善の余地があるが、記録に残らない献身的なプレーが光っている。


「13金山 隼樹」
・被シュート9本の内の枠内数8本でも1失点に抑える安定感。
・安定感を生み出す的確なポジショニングとコーチング。
・枠内シュート8本内の5本は味方がブロックで連携◎。
・高いパス数を記録した通り、攻守で最後の砦として機能。


上記のまとめを意識してみてみると見えてくる時間帯別パスネットワーク図(岡山)。前半は、5井上 黎生人、7白井 永地、13金山 隼樹を中心に後ろで組み立て。後半は、同点から逆転を狙うために少しずつ前に移しつつ、攻撃の組み立て。

時間帯別パスネットワーク図


全試合フル出場選手が、一定数にいる事で、チームとして安定して戦うことができるという事が現れたデータ。4濱田 水輝の離脱を見ても、軸となる選手が離脱した時は、影響が大きくなる。そう考えると、フル出場の選手が多くなれば、怪我のリスクやそういった選手が欠場した時のリスクが大きくなるので、バランスが重要。


比較対象となった33阿部 海人と28疋田 優人にも触れてきたが、課題もあるが、良い点もあるデータもあった。今後試合を重ねて行く中で、成長していくことで、課題をクリアし、チームへの軸へと成長に期待したい。


7、ちょっとデータでフォーカス(おまけ)


本来は、10宮崎 幾笑にメインにデータでフォーカスして触れる予定でしたが、簡潔ではありますが、触れていきたいと思います。

ヒートマップ - 宮崎 幾笑

ヒートマップ - 上門 知樹

データ上は、14上門 知樹の方が中に位置しているが、そこから中に侵入していく回数は少ない。右足で持つことで、必然的に視野が難しくなり、中への侵入が減っている。


一方で、10宮崎 幾笑の方が、外側の方が濃くなっており、フィジカルコンタクトを苦手にしていますが、中に入っていくプレーや裏への意識は、高くなっている。10宮崎 幾笑投入後は、見えない壁が撮り壊れたように中への侵入がスムーズになった。

攻撃スタッツ - 宮崎 幾笑

攻撃スタッツ - 上門 知樹

出場時間が短い10宮崎 幾笑のパス数が、フル出場の14上門 知樹に迫る勢い。出場から遠ざかっていた事で、チームを客観的に見る事が出来た事と、練習や自分を見つめ直すことができたのか、ここ数試合では、裏への意識の高さを感じる様になった。実際に深い位置に侵入してのクロスをあげるシーンなども増えて来た。


一方で、14上門 知樹は、持ち味を発揮できないもどしかしい内容が続いている。長くボールを持つプレーが減って、ダイレクトのプレーが増えたが、ドリブルという1つの持ち味をなかなか出せない事に加えて、利き足の右でのミドルシュートでのコースが限定される事で、得点から遠ざかっている。


こういった現状を考えると、10宮崎 幾笑のスタメン復帰や14上門 知樹の左SHへの復帰やリザーブに回す選択肢、4-2-3-1へのシステム変更の選択肢も有力な選択であると言える。


この辺りに注目しながら、今後の岡山を見ていきたいと思っています。皆さんは、左右SHや10宮崎 幾笑の起用法については、どう考えていますでしょうか?今後ともデータで、動きがあれば、フォーカスを当てて行きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


余談ながら、短いフォーカスと、詳細なフォーカスとでは、どちらが良いでしょうか?


文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様



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↓下書きした後に入力したら、消せない状態になったので、試行錯誤した結果、バグと入力して残す事にした。

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