1、前置き


 J1総括を踏まえた上で、岡山のサッカーの現在地を見てみようと思います。再開後の岡山や今までの岡山が、どうなっていく、どうであったか。そういった部分について触れることができれば、思っています。それでは、よろしくお願いいたします。


2、J2の23節終了時点の岡山の得失点パターン



「岡山の得点パターンのポイント」
・セットプレーの得点が一番多い。
・ショートパスとドリブルの得点が一定数ある。
・毀れ球からの得点が少ない。
・総得点自体が少ない。


「岡山の失点パターンのポイント」
・群を抜いて多い毀れ球からの失点。
・良く守れているセットプレーの守備。
・ショートパスの失点が多い。
・全体的に安定した守備で少ない失点数。


3、得点パターンのポイントへの考察


「セットプレーの得点が一番多い」

岡山は、攻守のバランスを重視し、攻守にハードワークするので、人数がかける攻撃は限られる。そういった意味で、セットプレーが一番人数をかけて迫力がでてくるというのは、良く分かる。また、デザインされたサインプレーでのセットプレーも何度もあり、岡山がある程度力を入れている得点のパターンである。


「ショートパスやドリブルの得点が一定数ある」

ゴール前に運ぶという点に力を入れていた事と、2列目適性のあるFWを前で起用した事で、ショートパスでの得点は一定数記録した。ドリブルに関しては、14上門 知樹の得点による所で、ほとんどは、ミドルシュートと推測される。


「毀れ球からの得点が少ない」

主に理由は二つ。まず1つ目は、人数をかけた攻撃が少ない事で、押し込むというシーンがなかなか作れなかった。そして、2つ目は、中央の人数不足。18斎藤 和樹のように外でのチャンスメークが得意な選手や15山本 大貴のように中央に離れて守備やスペースに走る選手、14上門 知樹や20川本 梨誉のように、ボックス内というよりは、混戦地帯から引いた所でプレーする選手などをFWで、起用する事で、結果的に全体のバランスこそ良かったが、ゴール前の迫力が不足した。


「総得点自体が少ない」

J1上位の主要得点であるクロスからの得点の少なさが最大の理由であると思います。後ろから前まである程度運ぶ力があり、サイドからの形を作れている岡山。クロスの質も高質とまではいかないものの一定の質のクロスをあげることができる41徳元 悠平や16河野 諒祐といった攻撃的なSB(SH)の選手を擁する中でのクロスの得点の少なさは、チームとしての得点力不足に拍車をかけることとなってしまっている。


4、失点パターンのポイントへの考察


「群を抜いて多い毀れ球からの失点」

高いラインを保つ中でも、押し込まれた時には、前線選手が集中して、ゴール前に人数をかけて、蓋をする。そういった守備ができているからこそ、相手も人数をかけてきて、混戦が生じやすい状況が生まれ、毀れ球からの失点が増えた。これはある程度仕方ない事ではあるが、最初のシュートやクロスという攻撃のアクションを防げている事は、しっかり抑えて置くべきポイントでもある。


「良く守れているセットプレーの守備」

正直な所背が高い選手が揃っている訳でないので、これは、驚いている。これは、どちらかと言えば、守備機会の少ない事が関係しているかもしれない。もちろん、集中してセットプレーの時に守れているというのもあると思うが、確かにゲームの流れの中で、押し込まれて何度もセットプレーというシーンは、今季は少なかった。チームとして、毀れ球をある程度繋ぐという攻撃の意識が高く、チームとして奪ったら前につけるという攻守の入れ替えの意識が高いことがわかるデータでもある。


「ショートパスの失点が多い」

ゴール前の危険な所を消されている状況下で、細かいパス交換で、そこを崩されて失点する。これは、スペースがないのに、何故崩されるかと感じる事があるかもしれないが、スペースがないことで、守備の個の力が活かしづらい状況も生まれる。スルーパスやパスが出されて、予測や足を伸ばしてクリアすることができるシーンができることもあるが、密集していれば、そういった守備をしてみれば、出しどころに困るという状況も生まれる。よって、逆に打たせることで、シュートブロックによって防ぐ守備や、打たせる前に寄せて行く守備。そういった守備に力を入れる事で、逆にショートパスの失点が増えてしまっている。


「全体的に安定した守備で少ない失点数」

守備の重心が後ろ過ぎないバランススタイル。そこが、チームとして安定した守備となっている。J2を見ていてもライン下げて、ゴール前を固めるだけでは、守備は安定しない。一定のラインの高さを維持し、全体をコンパクトに保つことで、チームとしてのボール奪取力、セカンドボールの回収する力を高めることで、守備を安定させる。それができているからこそ、岡山の失点数は少なくなっている。


5、群馬戦でみる得点パターンの理由となるデータ


ヒートマップ - 上門 知樹

ヒートマップ - 齊藤 和樹

ボックス内への侵入回数の少ない両FW。これでは、クロスからの得点はなかなか生まれない。


攻撃スタッツ - 河野 諒祐

クロスは少ないチームではない。流石に10本は、過去最高レベルだが、チームとして一定のクロスからの得点が期待できる形を構築できている。


守備スタッツ - パウリーニョ

守備スタッツ - 木村 太哉

守備スタッツ - 安部 崇士

GKスタッツ - 梅田 透吾

各ポジションを見ても高い守備意識。チームとして人数掛けて、さぼらず守っている。良い守備は、良い攻撃に移れる。


エリア間パス図

ボールロスト位置

押し込めていた事が分かる両データ。2つ目のは、新しいデータですね。後ろでのボールロストが少ないので、安定した組み立てができていることが分かる。それだけのボックス内で、仕事できる選手が必要であった。


6、課題に対する岡山の強化部の解答


獲得選手

19ミッチェル・デューク(FW)

39ブレネー・マルロス(FW)

48石毛 秀樹(MF)


 やはり、ボックス内で仕事できるFWの存在の有無は、得点力に直結するという意味で、そこに全力を注いだという印象。しかも1人だけではなく、2選手も獲得。クロスにどれだけ合わせる事ができるかという期待と、下がるであろう守備強度への不安。ただ、ファンタジスタシステムでもあえて前からいかなかった試合もあるので、選手起用に応じたチームとしての戦い方を中断期間で準備できているかどうか。


 また、肉離れで既に離脱しているが、48石毛 秀樹の加入により、2列目のチャンスメーク力は、間違いなく高まる。20川本 梨誉、14上門 知樹、48石毛 秀樹、10宮崎 幾笑、25野口 竜彦といった技術系の2列目の選手と、27木村 太哉、18斎藤 和樹、23松木 駿之介といったハードワークし、クロスをどんどん入れて行くアタッカー系の2列目。そして、7白井 永地、17関戸 健二(離脱中)といったハードワークやパスに特徴のあるボランチ系。41徳元 悠平、16河野 諒祐、24下口 稚葉といった運動量を活かして、どんどんクロスを入れて行くSB系の選手。

 離脱者を含めてだが、チームとして幅のある選択肢が、FW2枚の加入よって、チームとして増やす事が期待できる。そして、対戦相手に応じて、戦い方をかえる今季の岡山であるが、より対応力はますことは間違いない。


7、後書き


 後半戦の浮沈は、9李 勇載の復帰できるかどうかを含め、前の選手の活躍の有無は、勝敗を決することは間違いないので、とにかく前線に注目しておけば間違いない。もちろん、後のメンバー構成や、交代カードの切り方、バランスの取り方と注目すべきことは多々あるが、とにかくFW2枚獲得した前線。これに尽きることは間違いなく、私自身凄く楽しみにしている。


文章・図版=杉野 雅昭(text・plate=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様


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