1、前置き


 順位は、22節終了時点の暫定順位。22節のデータの得失点パターンからなので、得点失点パターンは、21節時点。少しイレギュラーな部分もあり、データにばらつきがあるかもしれません。また、考察は、データを見ただけなので、実際は、違うかもしれません。ただ、目的は、得失点パターンが順位にどこまで関係しているのか、そこによって、今季のJ1の前半戦をみていくことによって、J1を総括するという事にフォーカスしていますので、その旨を理解して頂けると幸いです。この文章の内容は、「各チームの得失点パターンの図」と「総括」で、9割なので、各チームの得失点パターンへの考察(想像)部分は、割愛して頂いても大丈夫かと思います。もし、得失点パターンの図を見て、私がどう思ったについても興味がある方は、そちらも読んで頂けると嬉しいです。それでは、よろしくお願いいたします。


2、各チームの得失点パターン


1位:川崎フロンターレ


「得点の特徴」
意外にも得点パターンは、サイド攻撃を主体とした攻撃スタイルである事が分かる。ただ、これは、精度の高いクロスやスルーパスやショートパスに近い得点パターンもあるかなと推測しています。ショートパスを選択する時に、サイドにスルーパスにように出して、クロスというイメージ。
一方で、ロングパスでの得点とセットプレー直接での得点が0と、そういった繋ぐスタイルの熟成度の高さを感じた。


「失点の特徴」
クロスからの失点が多いというだけであとは、攻撃はチームスタイルが高いレベルにあるチームの得意な攻撃で失点したという側面が強いと思われる。基本的には、繋ぐスタイルで、ゲームの主導権を握り、相手にボールを持たせない事で、失点が少なくなっているのではないかと思われる。
スルーパスでの失点が0という事で、川崎のバイタルエリアでの守備強度や密度の高いエリアなのではないかとも感じる。


2位:横浜FM


「得点の特徴」
川崎と同様に、クロスが一番の得点源。川崎と比べて、ショートパスでの得点が少なくなっており、毀れ球やスルーパス、セットプレーでの得点が伸びている。これは、サイドからのクロスという基本攻撃から、その毀れ球を拾っての2次攻撃と、そこで得たセットプレーでの得点や2次攻撃での得点が伸びたのではないかと思われる。川崎と比べると、ややサイド主体で、得点の確実性は落ちてくるのかもしれないですね。


「失点の特徴」
セットプレーの失点と、PKの失点が多いという結果に、流れの中での失点は少なく、対人守備の安定感を感じる。一方で、人数をかけられるセットプレーや、失点阻止の難しいPKに関しては、流石に防ぎきれていない。そもそもPKの機会が多いので、守る時は、ゴール前に人数を集めているか、ラインを高くして、その裏を突かれての失点が多いのではないかと思うが、ゴール前を固めている可能性の方が高そう。


3位:ヴィッセル神戸


「得点の特徴」
やはりクロスからの得点が一番多い。加えて、セットプレー、スルーパス、ショートパス、ロングパスとバランスよく得点ができている。状況に応じたパスの使い分けや多彩な得点パターンの多さを感じた。イニエスタの存在もあると思うが、J1屈指のSBの存在や技術レベルの高い選手の多さ、また1タッチでの得点の多い古橋選手の存在も大きかったと思われる。ここまで、ドリブルからの得点は、難しい事も分かって来た。そして、直接決めるキッカーというのは、上位を見ても不在という事で、希少性の高さを感じるデータとなっている。


「失点の特徴」
ロングパスやドリブル、セットプレー直接の失点0。ここの失点は、リーグを見渡しても少ない所で、そこをしっかり抑えている点で、ファールが少ないのではないかと感じた。ただ、神戸は、クロスからの攻撃に対する失点だけではなく、色々なパターンからの失点が少し多くなっている。守備の不安定さがやや気になる所ではあり、寄せが甘いのかもしれない。


4位:サガン鳥栖


「得点の特徴」
ここに来て、初めて、クロス以外の得点源が、一番のチームが出た。ショートパスが一位。意外にも川崎が、そうかと思っていたが、意外にも鳥栖がそうであった。一方で、上位3チームに比べて、クロスからの得点が少ない。サイドからの攻撃より、狭い所を崩していくスタイルなのか。それとも、毀れ球の得点が多いので、ロングパスを入れて、その2次攻撃から、中央を崩していくスタイルのか。少なくともサイドより、中央から攻めて行かないと、ショートパスでの得点は伸びてこない。


「失点の特徴」
セットプレーでの失点が多い事を考えると、守備の重心が後ろに置いているか、逆にラインが高くし、そこに早めのクロスやパスを入れられた時に、ラインに逃げているシーンが多いのか。もしくは、ファールが多いのか。恐らく、一定エリアに入った時に厳しく対応し、ファールが多いのではないかと思う。ただ、ショートパスが多いので、基本的には、ボール保持し、守備機会が少ない可能性もある。


5位:名古屋グランパス


「得点パターン」
やはり、クロスでの得点一番が多い。毀れ球からの得点も同率となっている。セットプレーでも同数となっている。ただ、やはり守備的なチームともいうこともあり、毀れ球からの得点も多くなっている。川崎や神戸といった質の高いサイド攻撃ができるチームは、毀れ球になる事が少なく、そのまま得点に繋げる事ができているが、名古屋や横浜FMの守備の安定しているチームは、ここが伸びている。サイド攻撃は、カウンターのリスクが小さいので、そういった意味もあって、採用している可能性が高そうだ。


「失点パターン」
セットプレーとショートパスからの失点が多くなっている。上位の主要の得点源であるクロスからの失点が少ないので、対人守備やスペースのケアはしっかり出来ている事が分かる。しかし、ショートパスやセットプレーなど、狭い所での崩しや、人数をかけられるセットプレーのように、混戦だと耐えきれない。そういったデータがでている。とは言っても失点の大半は、川崎であるので、難しい評価となる。


6位:鹿島アントラーズ


「得点パターン」
他の上位チームで多いクロスの得点がなく、セットプレーでの得点が多い。鹿島と言えば、背が高いCBというイメージと4-4-2のシステムを採用しているイメージが強いが、中央から攻めて行く中で、CKやFKを獲得し、得点を重ねているのかもしれない。ただ、やはり、セットプレーで得点ができるチームというのは、大きな武器となる事が分かる。


「失点パターン」
セットプレーでの得点も多いが失点も多いという意外な結果が出ている。守るのと、攻めるのでは競り合いが違って来るという事もかもしれない。もしくは、ゴール前で体を張って防いでCKや。ファールでFKが増えて、セットプレーで守るという回数が多いという事もかもしれない。


7位:FC東京


「得点パターン」
ショートパスが一番の得点源ながら、クロスからの得点もある。セットプレーでの得点も程よく得点出来ており、主な得点源で、バランスよく得点できている。ロングパスからの得点はやはりというか0で、今のJ1で所謂縦ポンのチームは、上位に存在しない事が良く分かる。後ろで繋ぐ必要こそないが、バイタルエリアで、ボールを持つことや、サイドまで如何に運んで、そこから良いクロスからの得点に繋げるかというリーグとなりつつあるようだ。


「失点パターン」
セットプレーやショートパスからの失点が多く、バイタルエリアでの守備に課題があるチームである事が分かる。スペースケアや対人守備が優れる守備であれば、そう簡単にショートパスで崩されることはないが、スピードのあるパス回しをされると、対応できないことが分かる。一方で、スルーパスでの失点はなく、コースを切る事で、簡単には失点しない受けの守備スタイルなのではないかと思う。


8位:浦和レッズ


「得点パターン」
クロスとショートパスが主な得点源。セットプレーやPKでの得点が多く、バイタルエリアどころか、ペナルティエリア内でも良くパスを回せている事が良く分かるデータである。毀れ球での得点がない事もその証拠と言える。それにしてもPKでの得点が多い。


「失点パターン」
クロスからの失点が多くなっている。ちょっと全体的に失点が多く、中位に入って来ると、色々な失点パターンが増えてくることが分かる。上位チームであると、そこまでの失点パターンや数が少なく、安定していたので、上位進出するには、失点の少ない攻撃の形を構築できるかどうか。もしくは、質の高い攻撃で、攻撃を完結させることができるかどうか。どちらかと言えば、失点の少ないチームが上位に顔が出しているので、攻撃は最大の防御というよりは、完結した攻撃は最大の防御という様相になってきている。


9位:サンフレッチェ広島


「得点パターン」
セットプレーが主な得点源。確実性が低い事から他の得点源も伸びていない。明確な攻撃な形というよりは、攻めの形を模索している。もしくは、状況に応じた攻め方を採用していると感じるデータです。


「失点パターン」
主な得点源に伸び悩んでいる一方で、守備は、それなりに安定している。攻守のどちらかに比重を置くというよりは、バランスを重視して戦っている事が分かる。この攻守のパターンを見て思ったのは、引き分けが多いのではないかと思ったが、やはりそうだった。バランスを重視すれば、そう簡単に崩れないが、そう簡単には点もとれない。そういった事が分かるパターンでした。


10位:コンサドーレ札幌


「得点パターン」
広島に続きセットプレーが、主な得点源。各チーム少ないドリブルからの得点も多い。そう考えると、バイタルエリアで、ドリブルを仕掛けて、その攻防で得たセットプレーで、得点という事が多いのかもしれない。ドリブルだけでは当然ゴールは難しいので、ショートパスも活用。その毀れ球を拾っての2次攻撃での得点も多いのではないか。


「失点パターン」
失点でもセットプレーが多く、ショートパスも続いて多い。セットプレーでの得点が多いのに、セットプレーでの失点も多い。これは、ドリブラーを擁する反面、平均身長では、もしかするとそこまで高くない。もしくは、低い所を狙われているのかもしれませんね。


11位:アピスパ福岡


「得点パターン」
中位では3チーム続いて、セットプレーからの得点が多い。中位になると、流れからの得点があげる質というのが、上位と比べると落ちるというのが、あるのかもしれない。ただ、自分達やりたい攻めができていない訳では無く、クロスやショートパスなど、セットプレー機会が多くなる攻撃ができていることが分かる。福岡は、クロスからの得点もそれなりにあり、中央からのパスでの崩しだけではなく、サイドから攻撃を志向していることが分かる。


「失点パターン」
バランスよくと表現すると違和感があるが、色々なパターンからの失点が多くなっている。これは、様々な攻撃に対してある程度対応できていることが分かる。ただ、長所を活かした攻撃に対しては、完全に跳ね返す事ができないことで、堪えきれず失点することが多くなってしまっていることが分かる。


12位:セレッソ大阪


「得点パターン」
中位4チーム連続でセットプレーでの得点が一番という結果が続いた。また、福岡と同様にクロスとショートパスが多くなっている。ここまでの他の注意チームと比べて、主な得点源が3つに集中しており、質が高い選手も揃っている事が分かる。守備側のクリアも前ではなく、後ろに逃げるクリアやファールを迫れている事が分かる。


「失点パターン」
ショートパスからの失点が多くなっている。ボールホルダーに対して厳しく寄せているところをショートパスで寄せをいなされて崩されている事が分かる。スペースケアや連動した守備に隙がありそうだ。また、クロスやセットプレーの失点もそれなりにあり、高さに対しても一定の不安があることが分かる。


13位:清水エスパルス


「得点パターン」
これで中位は、5チーム連続で、セットプレーでの得点が多いチームが続いている。上位で得点率の高いクロスからの得点も多い。他の得点パターンが少ない事から、自分達の形を確立した上で、高い確率で決める事ができている。得点パターン的には、中位から上位を狙えるものがある。


「失点パターン」
やはりというか足を引っ張っているのは、セットプレーの失点の多さ。とてつもない失点数で、仮に流れが良くても一回のセットプレーで、負けるという試合が多くなってしまっているのではないか。クロスからの失点も多く、空中戦への対応力に課題がありそうだ。ただ、こういったチームでも、ロングパスからの失点がなく、もはやロングパスだけを志向していては、J1は、遠いことが分かる。


14位:湘南ベルマーレ


「得点パターン」
セットプレーの流れがここで切れた。上位に多かったクロスでの得点が一番の得点源。他の得点パターンが乏しく、サイドから攻めるという形を持っている反面、そこで得点出来なかった時の2次攻撃の精度も低くなっている。順位を考えてもこれは、苦手なチームが出てきても不思議ではないデータと言える。


「失点パターン」
上位に多いクロス主体の攻めでも失点がかなり多くなっている。セットプレー、クロス、ショートパスという得点源に成り易い失点が、重くのしかかっている。上位のようなサッカーを目指すだけでは、上位に届かない。これもまた事実なのかもしれない。恐らく、ボール保持する時間が、上位に比べて短く、守備機会が多くなっている事で、失点もそれによって増えている事が予測できる。


15位:ガンバ大阪


「得点パターン」
主な得点源というか、極度の得点源不足を示すデータとなっている。ここまで、少ないと狙った形というのは、ほぼできてなくて、試行錯誤が続いている事を示すデータ。


「失点パターン」
得点ができないチームの中でもこの順位につけることができているのは、安定した守備になる。上位の主な得点源であるクロスに対しては、失点は多くなっているが、後の失点はしっかり少なく抑えている。ただ、守備が安定していても中位につけられないという点で、J1も厳しいリーグであると感じる。


16位:柏レイソル


「得点パターン」
主な得点源と表現するのは難しいが、色々な形で安定して得点ができている。セットプレー、クロス、ショートパスと攻撃の主な得点源で、点がとれているので、チームとして安定して戦えれば、より得点が伸びてくる可能性は、十分あります。ただ、やはり、爆発力という点で、中位以上に届かず、残留争いに巻き込まれているという点。


「失点パターン」
失点も同じく、主な得点源になりがちであるセットプレー、クロス、ショートパスが多くなっている。また、その攻撃の流れを切れずに、波状攻撃を受け手、毀れ球からの失点も多めになっている。この失点パターンを見る限り、厳しい我慢の時間が長くなっているのではないかという苦しい守備状態というか、チーム状況だと感じる。


17位:徳島ヴォルティス


「得点パターン」
降格圏になると、主な得点源はないと言ってもいい状態となっている。毀れ球での得点が一番多いが、攻撃の質という部分で、狙った形での得点が出来ていない事が分かる。ただ、一定のPK数を獲得しており、J1でも違いを魅せることが出来る選手、もしくは、チームとしての形を持っている事が分かる。しかし、他チームも強く、自分達が攻める時間が短い事により、なかなか攻める事ができていないのかもしれない。


「失点パターン」
少ない得点に対し、倍以上の失点数。特にセットプレーでの失点が多く、ゴール前で、体を張って守る時間が多くなっているのか、毀れ球での失点が多い。スペースをケアしているが、その隙間をショートパスで通され、繋がれ失点しているケースもあるようだ。人数をかけても守り切れない、J1の質の高さを感じる。一方で、クロスでの失点が少なく、ゴール前での壁を構築する堅さもあるようだ。


18位:ベガルタ仙台


「得点パターン」
セットプレーと、クロスという主要という得点パターンを確立できている。毀れ球からの得点も一定数あり、チームとしての攻撃の形の原型はできている。ただ、中位や上位を比べると、やはり総得点自体は少なく、守備機会が多くなっていると感じる。


「失点パターン」
セットプレークロスの失点数が凄まじい数字となっている。他チームだと少ないスルーパスやドリブルでの失点も多く、スペースケア及び、対人守備でもJ1だと厳しいレベルにあることが分かる。現状だと、J1で戦えるだけの守備の堅さはなく、守備の立て直しなく、J1残留は、厳しいと思われる。逆を言えば、ここが、安定すれば、攻撃も良くなるので、チームとして粘りをどれだけ発揮できるかが、後半問われて行く事となるチームである。


19位:大分トリニータ


「得点パターン」
主な得点源はなし。残留争いに巻き込まれているチームの多くこういったチームが多い。ただ、セットプレーやクロス、ショートパスといった主要の得点パターンは一定数の得点がある。そう考えると、この3点の完成度をあげる事で、得点が伸びてきそうである。また、下位チームも毀れ球というのは、質の部分で、上位に勝てないチームには、貴重な得点源となっている。


「失点パターン」
クロスからの失点がとても多くなっている。自陣での対応に難があるのは間違いないが、ショートパスでの失点が多い事からも人数自体はしっかり対応しているが、J1の攻撃のスピードとクオリティに後手になっていることが失点の多さに繋がっている。毀れ球やセットプレーでの失点が、やや少なめになっているのも、相手チームがアクションを起こした時に、それに対して、対応出来ず、あっさり失点している事が分かる。


20位:横浜FC


「得点パターン」
J1でも少ないセットプレー直接でのゴールがある。中村俊輔の存在によるものなのか、セットプレーも主な得点源となっている。ただ、毀れ球からの得点もほぼなく、得点パターンが少ない事から、守勢に回る時間が非常に長い事が分かる。スペシャルな選手がいてもそれだけでは戦えない。そういった事が分かるデータとなった。


「失点パターン」
あらゆる失点が多い。特筆すべき点はPKの多さ。これは間違いなく、ゴール前を時間制戦術で固める時間が長い事を示している。PK=ペナルティエリア内の失点であるからである。守る時間が長い事で、色々な失点パターンが多くなった。ただ、最下位のチームでもロングパスやドリブルでの失点は少なく、中央から個の力で崩すサッカーは、激減したようで、チームとして戦うことが重要視されている事が分かる。


3、総括


 上位を見てみると、主な得点源はクロスであることが分かった。シンプルにクロス精度が高く、サイド深くまで運べる主導権を握る力があるからであるのが大きい。また、そのクロスから毀れ球を押し込むだけ、高い支配率や徹底した速攻スタイルで、人数をかけることができている事が多い。

 また、サイドまで運ばなくても中央で崩せそうならショートパスを繋いで、守備網を突破することができるのも上位の特権である。中と外で、状況に応じて攻める事で、守備側の弱い所を突いて得点に繋げている。

 これは、全体の差が縮まった事で、戦術の重要性が高まり、守備に隙が生じにくくなった事も大きい。スルーパス、ドリブルといった仕掛けでの得点は少なく、チームとして総合力で、崩す必要性が高まっている。

 中でも鹿島は、個の力で主導権を握る力がありながら、バランスを崩さない事で、攻撃の成功率こそ高くないが、その分セットプレーの機会を多く作り、そこで多くの得点を挙げている。セットプレーは、多くの人数をかけることができ、良いキッカーがいれば、大きな得点源となる。そこに注力を注ぐ事で、安定した成績に繋がっている。

 ここに追随しているのが、中位陣である。中位のチームは、主導権を握れるチームは限られるので、鹿島同様にバランスに崩さない事で、1点差ゲームに持ち込みたいという思惑がある。隙を探り合う攻防の中で、小さいリスクで人数をかけられるセットプレーにかけるチームが多くなるのも納得がいく。

 もちろん、ある程度主体的に攻める力もあるので、セットプレーの機会がそれなりにあるので、主な得点源と成り得ている点も留意したい。

 一方で、下位チームのイメージが強かったロングパス主体の攻撃は、完全に廃れてしまったと見て良いだろう。全チームを見ても、ロングパスの得点はほぼなく、縦へのロングパスで、裏に抜けて、そのまま決めるというシーンは、ほぼなくなった。これは、GKが、高い位置をとるようになり、背後のスペースがあっても簡単に通らなくなった事と、J1からJ3までの三層になった事で、CBのレベルも上がり、背が高くて、巧くて、スピードもあって、視野も広い。そういったハイブリットなCBが増えてきたのも大きいだろう。

 よって、J1の上位チームのように、ある程度ボールを保持した上で、良い状況を構築できる力がないと、J1で勝ち続ける事が難しい事が分かる。そのサッカーの適性の高い川崎が、J1で強いのは、その辺りにあるだろう。過去のJリーグでは一定数見えられた守備を固めて、カウンターをひたすら狙う。そういったサッカーは、絶滅危惧種となったと言ってもいい。

 J2の秋田が現代版ロングパスの数少ない戦術を採用している。ロングパスを出す所を右サイドの奥と決めて、ボールを奪ったらすぐにそこに配給。そこからどんどんクロスを入れて行くというものである。ただ、これは、J1主流の得点源であるクロスでの得点を狙っての物であって、工夫によって生まれたスタイルであるが、ロングパスでの得点を狙ったものではない。

 J1の前半戦を振り返ると、「クロス・セットプレー・ショートパス」中と外、特殊の3種のパターンの完成度を適正に応じて、極めて行く中で、チームとして主導権を握り、攻撃する時間というよりは、回数や良い状況を作ることができるチームが強い事が分かった。

 現代サッカーであると、ボールを相手に渡す事が自体がリスクとなっており、ボールを失う確率の高いロングパスを多用すると、守勢に回る時間が長くなる傾向にあるからであるだろう。クリアですら繋ごうとするぐらい徹底されている。

 クリアしてしまうのは、危機を脱すると同時に、ボール保持した側から再びボールを奪取するのが難しく、なかなか自分達が下にボールの主導権もゲームの主導権も奪い返せないのが、現代サッカーである。

 さて、このようにJ1の得点パターンと失点パターンを見てきて、主に得点パターンについて、触れてきたが、後半戦が、どういったものになるか、川崎がこのまま今季も走り抜けるのか注目していきたい。


4、後書き


 J1のデータだけになるが、J1のトレンドを少しだけしれた事で、岡山がJ1を目指す上での現状の方向性が見えてきた。まだ、投稿していない群馬戦のレビューの参考にさせて頂きたいと思います。


文章・図版=杉野 雅昭(text・plate=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様