1、前置き


 先日天皇杯で岡山が敗れた名古屋と、今シーズンに岡山に3人も期限付き移籍で清水から武者修行に来ていて、元岡山の7片山 瑛一がいる清水がどういったサッカーをしているのか、興味あったので、今回は、この試合をチェックしてみました。

フォーメーション図

フォーメーション図(名古屋)

フォーメーション図

フォーメーション図(清水)


2、清水でも攻守でハードに貢献


攻撃スタッツ - 片山 瑛一

個人スタッツ(7片山 瑛一)

走行距離・スプリント回数

走行距離・スプリント回数(清水)


 チームトップクラスのスプリント回数と走行距離。SBとして、上下動によって、攻守で高い貢献性。清水が主体的に持てる時間帯には、広角的な対角線のパスが通るシーンもあったが、上手くコントロールできずシュートまでは行けなかった。他にもロングスローやサイドから仕掛けやクロスでのチャンスメークが光った。


3、後方でチャンスを窺う清水ゲームメーカー


攻撃スタッツ - 松岡 大起

攻撃スタッツ(33松岡 大起)


 恐らくチーム最多のパス数を記録。中盤での攻守の要として、清水の攻撃を支えた。主体的に攻める時間には、長い対角線のパスを7片山 瑛一に通すなど、視野の広さを遺憾なく発揮したが、劣勢に立つと、効果的なパスというよりは、ビルトアップに関与する場面が、どうしても多くなった。


4、抜群の嗅覚を誇る清水のエース


攻撃スタッツ - チアゴ サンタナ

攻撃スタッツ(9チアゴ・サンタナ)


 オフサイドになったシーンを含め、ゴールシーンに象徴される通り、ゴール前の駆け引きからの動き出しと、シュート技術と精度が伴った本格的なストライカー。清水において、唯一無二の決定力を誇っている。


5、安定感が光る日本代表の正守護神


GKスタッツ - 権田 修一

GKスタッツ(37権田 修一)


 被シュートを16本。その被枠内シュート7本。エリア内シュートセーブの2本を含め、6回もセーブ。足元の技術もしっかりしており、14本中10本のパスの成功率。攻守でチームに落ち着きを生み出す頼れる周知度も高い日本が誇るGKとして、この試合でも抜群の存在感を放ち、GKとしてもスマートで華がある。


6、速攻を狙い続けるチャンスメーカー特化FW


攻撃スタッツ - 前田 直輝

攻撃スタッツ(25前田 直輝)


 1トップではあるが、体を張るプレーや、ゴールを狙うというよりは、前線を動き周りチャンスメークに徹していた中で、名古屋の速攻の機会を常に狙う事で、清水DFにプレッシャーをかけ続けた。この試合では、味方の動き出しで、相手DFが寄せを躊躇してできたシュートチャンスで、しっかり振り抜き決めきった。


7、右サイドからゴールに迫る疑似的ストライカー


攻撃スタッツ - マテウス

攻撃スタッツ(16マテウス)


 清水の7片山 瑛一が上がったスペースを突き、ドリブルから積極的にシュートを狙って行く疑似的ストライカー。25前田 直輝のチャンスメークの助けもあり、脅威のシュート7本。


8、少ないタッチ数で魅せるファンタジスタ


攻撃スタッツ - 柿谷 曜一朗

攻撃スタッツ(8柿谷 曜一朗)


 バイタルエリアのペナルティエリア付近での1タッチでの意外性のあるパスで決定機を演出したプレーを含め、人数をかけた守備をも無力化する創造性に優れる元C大阪のファンタジスタのプレーは、未だに輝いている。アシストを記録しても不思議ではないプレーをこの試合でも作った。


9、出だしの良い守備から速攻に繋げるゲームメーカー


攻撃スタッツ - 稲垣 祥

攻撃スタッツ(15稲垣 祥)


 ラストパスやクロスだけではなく、シュートも3本も記録。名古屋の中盤での素早いボール奪取からの速攻を支えた。名古屋のボランチとして、ゲームを作りつつ、守備で落ち着かせる事で、チームに安定を生み出した。




エリア間パス図

エリア間パス図(清水)

ボールロスト位置

ボールロスト位置(清水)


 名古屋の寄せが甘かったという部分も否定できないとしても、ボールロスト図を見てもバイタルエリアまでしっかり運ぶ事ができている清水。特にサイドを経由して良い形をできていた。しかし、最後の所での人数をかけて仕掛ける連動した崩しでのシュートまで繋げる完成度や、圧倒的な個で、シュートまで行くという部分で、まだ、上位と比べると差があると感じる。ただ、それでも名古屋に対しても個で負けていない部分もあり、チームとして伸びしろは大きい。ゴールを決めた9チアゴ・サンタナのストライカーとしての非凡さを感じる動き出しと素晴らしいシュートまでプレーはこの試合でナンバー1であった。アシストをした24藤本 憲明の意表を突く動き出しでギャップを作れていたし、チームとして連動性が上がってくれば、今後の活躍が期待できそうである。また、元岡山の7片山 瑛一も持ち味を存分に発揮し、レギュラーを完全に掴んでおり、主軸として重要なピースである事も感じられて嬉しかった。


11、カウンター特化でまさに堅守速攻


時間帯別パスネットワーク図

パスソナー・パスネットワーク(名古屋)

ボールロスト位置

ボールロスト位置(名古屋)


 間延びした形になりがちな時間が名古屋にある通り、奪ったら前線に素早く入れて行く事で、速攻を仕掛ける事に特化した攻撃。前線のタレントを見ても1人でボールを運べる選手や仕掛ける事ができる選手が多く揃えている。そこに、守備の隙が多きれば大きい程、意表を突いてラインブレークできる選手や、強引にシュートまで持っていく事ができる個性を持った選手が混じる事で、切れ味のある攻撃を可能としている。そして、チームとして前から行く守備を敢行する時間を作る事で、良い守備から良い攻撃に繋げる時間や、自陣に引いて粘り強く守りつつ、カウンターを狙うシーンもあった。この試合では、失点して、同点にこそ追いつかれたが、カウンターの餌食になる事や、引いた守備ブロックを崩せずに、そのまま逃げ切られるチームが多いのも納得のサッカーであった。


12、試合総括


基本スタッツ

基本スタッツ

ゴール期待値

ゴール期待値


 ゴール前をしっかり固めた名古屋に対して、なかなかシュートまで行けなかった事で、ゴール期待値が伸びなかった清水と、ボール奪取から速攻によってシュート数を重ねた事でゴール期待が伸びた名古屋。

 この数値は、そのまま基本スタッツに直結したが、少ないチャンスをしっかりものにした清水が同点に追いついた。逆に、名古屋は、逃げ切りパターンに入っていたが、この試合では守り切れなかったという試合。

 色々な要素があっての引き分けであるが、組織力も重要だが、時には組織力を無効化する想像力の共有と、そこを活かしきる個人技で、試合を動かすことができると感じた試合であった。

 清水から岡山に来ている選手の基礎技術が高いことが納得するだけあって、基礎技術の高い選手を揃えていた清水。

 岡山に、ほとんどシュートを打たせないような堅い守備組織を構築できている完成度の高い名古屋。

 決着こそ着かなかったが面白い試合であった。岡山もJ1に上がりたいと思える試合であったし、やはりJ1はレベルが高く、サッカーの魅力も詰まっていた。J1も日々レベル上がる中で、より遠く感じているところではあるが、岡山も着実に前進している。岡山の可能性を信じてこれからも応援していきたい。


 最後に、良い試合を両チームとも有難うございました。これからも機会があれば、チェックさせて頂きます。岡山との対戦があれば、よろしくお願いいたします。


文章・図版=杉野 雅昭(text・plate=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様