今季の岡山の順位は、4位を前後してきた中で、それ以上の順位に最序盤以降は、上がる事のできていなかった。差も今より開いていた時期もあったが、ここに来て少しずつ接近。とはいえ、この試合の対戦チームである首位の横浜FCとの勝ち点差は9点。ここで、敗れる事があれば、一気に勝ち点差12点となる。逆に勝利すれば、新潟次第ではあるが、勝ち点6に縮める事もできる。自動昇格を狙うために、非常に大きな意味を持つ一戦となることは、明らかであり、昇格を狙うJ2の他のクラブもその結果は、気になっていることだろう。今回のプレビューでも首位攻防戦ポイントやヒントを探るために、SPORTERIAさん提供して下さっているデータから分析していく。また、群馬戦で見た感想も考察に交えていきたい。


1、前節までの対戦成績


前節までの対戦成績

前節までの対戦成績(図=figure:SPORTERIA提供)


前節までの対戦成績のポイント


 意外にも通算対戦成績では、横浜FCが僅かに2勝、勝ち越しているのみ。筆者である私も良く考えて見ると、確かに苦手という意識も得意という意識も持っていない。前半戦での対戦でも引き分けに終わっている。


 岡山を迎え撃つ横浜FCは、下位に沈むチームとの3連戦であったが、まさかの1勝2敗。岡山の苦手とする千葉に4-0で勝利した試合もあり、その爆発力はすさまじい。ただ、前節の群馬戦は、最少得点差の勝利、東京V戦も同様であり、その守備も武器の1つと言えそうである。


 岡山の方は、5試合中3試合で3得点。打ち勝つ試合ができており、例年の「岡山=守備が堅い」というイメージとは、違うスタイルで、勝ち星を積み重ねている。また、このデータだけでは、5試合のみだが、現在は7試合負けなしと好調を維持している。


 横浜FCは、打ち勝つサッカーと守り勝つサッカーもできる。対する岡山は、個の力を前面に出して、高い得点力を武器に負けないサッカーを手にしつつある。直近の5試合では、結果だけをみると岡山の方が調子が良さそうではあるが、この試合では、どういった結果となるか。


2、得失点パターン


得失点パターン

横浜FCの得失点パターン(図=figure:SPORTERIA提供)


得失点パターンのポイント(横浜FC)


①セットプレー・クロス・ショートパスの得点パターンが多い。

→サイドと中央どちらからも得点できる。

②ドリブルと毀れ球からの得点パターンが多い。

→1対1で勝てる個人技、毀れ球を押し込めるゴールが多く、決定力が高い。

③スルーパスやロングパスからの得点は少ない。

→ボールを大事にしつつサイドか中央で、パスで攻略して、崩す形が軸?

④ショートパスからの失点が多い。

→前から行く守備の回数が少なく、バイタルエリア(ゴール前)まで運ばれた時に、人数をかけたパスワークに崩されるシーンも多い?

⑤セットプレーやクロスからの失点がそこまで多くない。

→1対1で負けない選手が多く、空中戦に強い選手が揃っている?


得失点パターン

岡山の得失点パターン(図=figure:SPORTERIA提供)


得失点パターンのポイント(岡山)


①PKでの得点がJ2で一番多い。

→ドリブルでの進入とゴール前の混戦が多い。

②様々な形でのセットプレーからの得点が多い。

→実はCKの総数は少ないが、セットプレー全般(ロングスローやFK、CK)での決定力が高い。

③こぼれ球が伸び悩んでいる。

→ミドルシュートやセットプレーの総数の少なさが影響?

④ショートパスとスルーパスからの得点も伸びてきている。

→新3バックと補強(成長)の効果でバイタル付近の攻守の圧力UPの効果?

⑤クロスでの失点が多い。

→揺さぶれたクロスや、サイドでスピードを活かしてのクロスに弱い。


3、時間帯別得失点率


時間帯別得失点率

横浜FC視点の時間帯別得失点率(図=figure:SPORTERIA提供)


時間帯別得失点率のポイント(横浜FC:得点率、岡山:失点率)


①どの時間帯でも得点ができる。

→対戦チームのスタイルや選手に関係なく得点できる。

→追う展開や逃げる展開でも強い。

→試合運びにムラがある可能性も?

②岡山は前後半の終了間際の失点が多い。

→岡山が攻めあぐねると横浜FCとしては劇的勝利の可能性UP?

③岡山の失点率が横浜FCの平均得点より全て低い。

→守備も安定している岡山vs得点の形を持っている横浜FCの構図。


時間帯別得失点率

岡山視点の時間帯別得失点率(図=figure:SPORTERIA提供)


時間帯別得失点率のポイント(岡山:得点率、横浜FC:失点率)


①7チアゴの出場している時間帯の得点率が高い。

→チアゴタイムを巡る攻防に注目!

②岡山が最も得点できる時間帯の内の31ー45分で、横浜FCの失点0。

→ここで岡山が試合を動かすことができると大きい。

③61~75分の得点が少ない岡山と失点の多い横浜FC。

→新3バックシステムで得点力UP中の時間帯という事で大きな意味を持つ時間帯。

④岡山も高い得点力の76ー90分、しかし勝てる首位の横浜FCは、ここで守れる。

→この時間帯に、激しい攻防が予想される。 


4、PA内への進入傾向


PA内への進入傾向

横浜FCのPA内への進入傾向(図=figure:SPORTERIA提供)


PA内への進入傾向のポイント(横浜FC)


①バランスの取れた進入起点数

→誤差範囲内で、左右中どこからでもPA内に進入でき、手段も問わない。

②ロングパス一本でも、PA内に進入可能。

→精度の高いパス一本で、中盤の守備網やDFライン無力化する力がある。

③対角線の角度を意識したパスが多い。

→守備側の視点の死角や守備を搔き乱すパスで揺さぶりをかける攻撃ができる。

④得点に結びつきやすい深い位置からのクロスが多い。

→深い位置まで運ぶチームとしての構築力があり、高い得点力を示すデータの1つ。

⑤各レーンで適した攻撃をしっかりできる。

→サイドレーンからは主にクロス。

→ハーフスペースに近い所からはドリブルを織り交ぜてくる。

→センタレーンは、セオリー通りパスで崩す。


PA内への進入傾向

岡山のPA内への進入傾向(図=figure:SPORTERIA提供)


PA内への進入傾向のポイント(岡山)


①サイドとセンターレーンでのドリブル突破がある。

→隙があれば勝負を仕掛ける選手がいる(7チアゴ、38永井)。

②浅い位置からのクロスが多い。

→高さに自信がある証左で、クロス意識は高め。

→そこまで運ぶ回数自体は少なく、構築力に課題あり。

③ロングパスでのPA進入が少ない。

→ロングパス比率に対して、少なく成功率自体は少なめ。

→サイドへのスペースへのロングパスを出す意識も高い。

→アシストよりチャンスメークを意識したロングパスが多い。

④パスでの崩しは少ない。

→少ない手数でゴールに迫る事が多い。


5、被PA内への進入傾向


被PA内への進入傾向

横浜FCの被PA内への進入傾向(図=figure:SPORTERIA提供)


被PA内への進入傾向のポイント(横浜FC)


①驚異的な左サイドの堅さ。

→対戦相手にの噛み合わせの可能性もあるが、対人守備はかなり高いことが予想される。

→左サイドからの攻防も1つのポイントとなりそう。

②逆に警戒したい右サイド。

→右からの攻撃を許している=攻撃的右SB?

→実際にPA内での進入するパスの先(前の図参照)が右サイドよりになっている。

③仕掛けを断念する左サイド?

→長めのパスの攻めをここ3試合の対戦チームは選択している傾向にある。

④2連敗の試合もあった中で、被PA内への進入が少ない。

→主導権握る力と、対人守備の強さの表れか。


被PA内への進入傾向

岡山の被PA内への進入傾向(図=figure:SPORTERIA提供)


被PA内への進入傾向のポイント(岡山)


①被PA内への進入される回数が多い。

→パスコースを塞ぐ守備と、主導権に握るサッカーが苦手?

②中央への被進入は少ない。

→各チームがサイドのスペースを狙って、中央からの崩しは無理して狙わない傾向にある。

③ドリブルでの被PAへの進入回数が少ない。

→対人守備が強い選手が揃っている。

④バイタルエリアからのパスでの被進入回数が多い。

→パスコースに対しての守備の人数が足りていない?

→SBの上がったスペースを突かれている?


6、注目選手


 スポーツナビの予想スタメンから気になった選手を1選手ピックアップ。


横浜FC「18小川 航基」


 怪我の可能性の高い13サウロ・ミネイロに代わり、1トップ予想。ただ、J2得点ランキングトップである通り、その決定力は、J2最強である。岡山の7チアゴ・アウベスとの得点王争いも気になる所ではあるが、岡山の5柳 育崇が、出場停止とはいえ、4濱田 水輝と23ヨルディ・バイスという強力な2CBに対して、どこまでやれるのかは、最大の注目ポイントと言える。


岡山「26本山 遥」


 主導権を握れる横浜FCのサッカーの前に対して、どれだけ抑止力を発揮できるか。バイタルエリアで、横浜FCに自由を許してしまえば、耐える事は難しい。3バックシステムに移行した時に、34輪笠 祐士にバトンタッチするのか、それともダブルボランチのような形となるのか。26本山 遥のプレーと、26本山 遥のボランチというポジションにも注目の一戦と言える。


7、プレビュー総括


「クロスを巡る攻防」


 セットプレーのクロスを含め、高さや動き出しの動き一つも目を離せない。クロスに対して、15ミッチェル・デュークが、ポストプレーを含め存在感を放つのか?それとも、質の高い横浜FCの選手のクロスに対して、昨シーズンの磐田のルキアン(現材は福岡所属)のゴールのように、一瞬の隙を許して、J2最強のストライカー18小川 航基に得点を許するのか。クロスを許さない守備対応を含めて、サイドから中への攻防は見逃せない。


「パスを巡る攻防」


 岡山は、試合途中から採用する3バックへと変更すると劇的にパスでの崩しが良くなる。ロングパス主体の外国籍選手を軸とした攻撃から、日本人選手の技術が活きるパスサッカーもできるようになる。横浜FCもJ1で主流の攻撃に力をかけるサッカー。岡山のように前からの激しいプレスではなく、ある程度受けるサッカーができる。群馬戦でも、そういった内容であったが、このサッカーの武器である遅攻と速攻の双方で活きる個の力とパスサッカーを融合した質の高い攻撃で、勝利を掴んだ。パスを巡る攻防、特に後半途中からは、より重視されるポイントとなるに違いない。


「優勝と得点王争い」


 勝ち点差は、試合前時点で9。横浜FCが、勝利すれば12差。岡山が、勝利すれば6差。岡山が敗戦した時点で、横浜FCを含めた上位3チームが足踏みしなければ、岡山が優勝を含めた自動昇格争いに絡むことは極めて、難しくなる。そういった意味で、結果が非常に求められる中で、両チームが、どういった準備をしてくるかは、要注目ポイントと言える。どちらかのチームが秘策を用意しているかもしれないし、メンバーを弄って来る可能性もある。


 また、得点王争いにも注目だ。1位の18小川 航基は、18得点。2位の7チアゴ・アウベスは14得点。18小川 航基は、少し足踏みしているが、7チアゴ・アウベスは、出場時間換算では、岡山史上最もハイペースで、得点を量産しており、3試合連続での得点中で、好調である。また、ゴール前での混戦が好きな岡山のチームスタイルにより、PKも量産している。リーグトップでのPKでの得点数を誇る岡山。その点は、キッカーの権利を手放さず、ボールを持って離さずセットする試合もあり、PKキッカーを任される?ことも多い。残り試合も10試合以上もあり、十分逆転可能な差ともいえ、この試合で、差を縮める事ができるのか、それとも開くのか、試合の勝敗と共に注目したい。


8、最後に


 注目の昇格争う上位対決の1戦。立場的には、岡山が苦しい状況で、横浜FCが優位な状況だが、勝利により更にその差広げ、横浜FCが、より優位な立ち位置として、自動昇格と優勝を大きく手繰り寄せるのか、それとも岡山が少しでも差を縮めることができるのかという注目1戦は、ニッパツ三ツ沢球技場 18:00キックオフ。現地に行かれる方は、暑さに注意しながら選手を後押しして欲しい。

 私を含めた自宅観戦組は、放送はDAZNのみとなっているため、視聴できる方は限られるが、DAZNの視聴関係がない方は、仕事や用事などもあって、視聴が難しい方も速報を頼りに選手に念を送る事で一緒に戦って欲しい。

 まだ、機会がないが、カズも長く在籍した横浜FC。J2でも長く戦ってきたが、昨季はJ1であったこと、そして、ここまでの順位通り、J1の舞台が似合うクラブへとなりつつある強敵の横浜FC。岡山が、そういったクラブに、どこまで戦えるのか。岡山のホームで引き分けた両チームの戦いに、決着がつこことがあるのか、注目一戦戦は、もうすぐ始まる!


 最後まで、読んで下さり有難うございました。


文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様