今回のファジにデータでフォーカスでは、図=figure(SPORTERIA提供)を利用して、3-4-2-1を中心としたスタイルの対比の分析で、横浜FC戦を振り返っていきたい。
1、基本スタッツと布陣
基本スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)
多くのデータで、互角以上の数値を叩き出した岡山。しかし、結果が示す通り、そういった試合でも勝利を掴めるのが、横浜FCの強さである。今回のフォーカスで、3-4-2-1を軸にこの辺りに、このスタッツに隠れた事実に迫れるところまで迫っていく。
(図=figure:杉野 雅昭)
岡山は、準備していたものとは違ったもののこの試合を一言で表現するなら
「コンセプトの違うミラーゲーム」
2、ゴール期待値
ゴール期待値(図=figure:SPORTERIA提供)
圧倒的差の中で、岡山は、前半に耐え忍び、諦めずに戦った事で、ゴール期待値上では、最後は逆転するのも得点は最後まで奪えず、勝ち点を得る事はできずに敗れた。
3、パスソナー・パスネットワーク図
横浜FCのパスソナー・パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)
スタイル対比(横浜FC側)
①1トップの18小川 航基は、少ないチャンスを決めるにフィッシャーで、守備強度も軽め。
②攻撃を受けて、速攻を軸とした形で「肉を切らせて骨を切る」という「居合い切りスタイル」。
③パスのベクトルの方向がはっきりしていて、シンプルなパスを意識したサッカー。
④中盤に軸を持たない形で、隙を伺う辛抱強さと隙のある所から運ぶ意識が感じられる。
岡山のパスソナー・パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)
スタイル対比(岡山側)
①1トップの15ミッチェル・デュークは、ターゲットとなるポストプレーが軸で、守備強度高め。
②機動力と遠距離を織り交ぜた「ヒット&ウェイ」の「騎射スタイル」。
③全方位へのパスを駆使しての崩しを意図したパスサッカー。
④中盤のパスワークも大事にしていることが窺えるパスの総数とパス成功数。
4、時間帯別パスネットワーク図
横浜FCの時間帯別パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)
スタイル対比(横浜FC側)
前線まで流れる様に一本の道になっている時間帯がある通り、如何に前線まで運ぶかという事に特化していることが良く分かる。縦に速くを狙えば、これだけ奇麗にパスが通るということはなく、局面でのパスの出し手の判断と、受け手のフリーランの意図が一致した上で、そこに正確パスが出された事の連続で、この分布図のように奇麗な流れになる。エンブレムの不死鳥の羽の輝きのように美しい前線までの運んで決めた得点は、決して偶然ではないことが、この図から証明された。
岡山の時間帯別パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)
スタイル対比(岡山側)
3-1-4-2の時もそうであるが、シーズンの終盤に差し掛かる辺りで見られる3バック全般の形の意図は、ポゼッションにあることは間違いない。中盤や前線の人数をかけた形で、ハイプレスとパスワークの両立を目指していく上で、重要となる距離感への意識が感じられる。両WBも中へ絞るポジショニングもしており、組み立てに関与していることが良く分かる。
5、エリア間パス図
横浜FCのエリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)
スタイル対比(横浜側)
「繋ぐ」のではなく、「運ぶ」という事を主眼に置いている以上自陣で、ホットラインになりそうな所でも薄く、縦方向へのパスの本数が多いことからも、必要最低限のパスで、効率よく前へ運ぶ工夫の跡が見て取れる。
岡山のエリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)
スタイル対比(岡山側)
各ポジションで、縦だけでなく、斜めや横へのパスも多く、トライアングル作る事で、「3人以上が絡んだ細かいパス交換」でゴール前に迫っていた事が分かるが、準備していたものとは違ったことで、ゴール前での形をなかなか作るまでは至らなかったことも分かる。
6、ボールロスト位置
横浜FCのボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)
スタイル対比(横浜側)
ボールロストのパス方向へ明らかとなる縦への強い意識。また、ゴールへの最短ルートを目指すため、サイドへのパスが少なかった事が良く分かる。ただ、ゴール前までは運べているので、そこでのボールロスト必然的に多くなる。
岡山のボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)
スタイル対比(岡山側)
繋ぐスタイルで、バイタルエリアに進入し、多彩な形でのパスワークでの崩す工夫の跡が、ボールロストの位置と回数、そして方向で良くわかるが、最後の所で崩し切れなかった。
7、個人スタッツ
7-1:1トップ対比
攻撃スタッツ(18小川 航基)
縦に速く運んで上で仕留めるという横浜FCのスタイルの頂点としてのフィニッシャーとして機能していたことが良く分かるシュート本数。しかし、得点を奪うことはできなかった。
攻撃スタッツ(15ミッチェル・デューク)
マルチなタスクを担った中で、シュート・パス・クロスと攻撃を牽引したが、得点に繋げることはできなかった。
7-2:WB対比
攻撃スタッツ(17武田 英二郎)
WBであるが、サイドアタッカーというよりは、パスの通過点の役割に担う。
攻撃スタッツ(33近藤 友喜)
パス数はあくまで前に運ぶための通過点であるが、17武田 英二郎と違い、ラストパスなどに関与するなど攻撃の最後の崩しでも右の攻撃の軸でもあった。
攻撃スタッツ(22佐野 航大)
パスを軸に、サイドからクロスで形を作る。途中からIHに移った中でラストパスも記録。
攻撃スタッツ(24成瀬 竣平)
パス交換で、DFラインの裏に抜け出し、クロスというシーンを何度か作れた。
7-3:フル出場ボランチ対比
攻撃スタッツ(6和田 拓也)
中盤で90分間出場してもこのパス数。成功率も高くなく、縦への意識が非常に高かった事が分かる。
攻撃スタッツ(34輪笠 祐士)
ロングパスも持ち味と聞いていたが、この試合ではチームのスタイルに合わせた繋ぐパスが多く、成功率も高め。
7-4:DFリーダー対比
守備スタッツ(5ガブリエウ)
岡山が中央の攻略の機会を窺っていたが、最後まで壁として立ち塞がった。
守備スタッツ(23ヨルディ・バイス)
横浜FCの縦に速い攻撃を受けた事で、スペースを突かれたために、直接的な守備に関与できるシーンは限られた。
7-5:GK対比
GKスタッツ(49スベンド・ブローダーセン)
被枠内シュート5本も見事に防いだ。その内一本は、横浜FCの得点に繋がったシーンのフィールドプレーヤーが、ブロックしたシーンの1本である。
GKスタッツ(35堀田 大暉)
被枠内シュート5本もセーブは、0本が示すことは、粘り強くチームで守ったという事である。しかし、失点に繋がったシーンでは、触ったいただけに悔やまれる失点となってしまった。
8、ヒートマップ
8-1:1トップ対比
ヒートマップ(18小川 航基)
中央にどっしり構えて、得点を狙う事に集中する生粋のストライカーの平均ポジションとボールタッチ位置。
ヒートマップ(15ミッチェル・デューク)
1トップでありながら、WGとも言える範囲に及ぶヒートマップで、守備に貢献。その上で、ターゲットとして、競り勝てるポイントを探っていた事が分かる。
8-2:フル出場のボランチ対比
ヒートマップ(6和田 拓也)
パスの経由点として、レーンを意識したポジショニング。中央で、攻守のバランスをとって、中央を締める。終盤守勢に回った中で、やや低めとなった。
ヒートマップ(34輪笠 祐士)
チームの布陣を変えたこともあるが、幅広い範囲でのボールタッチが見られる。ただ、パスサッカーを意識する以上、距離感を大事にするので、大きく離れすぎない分布となっている。
8-3:WB対比
ヒートマップ(17武田 英二郎)
ほぼサイドに張り付いているが、高い位置でのタッチが多く、パスの経由点として、前で準備しているシーンが長かったことの証左。
ヒートマップ(33近藤 友喜)
こちらもほぼ右サイドに張り付いている。22佐野 航大に押し込まれていた中で、低い位置での時間も長くなっている。
ヒートマップ(22佐野 航大)
ほぼ高い位置でプレーしており、11宮崎 智彦と34輪笠 祐士のサポートもあり、プレーし易かったことが良く分かる。
ヒートマップ(24成瀬 竣平)
22佐野 航大もそうであったが、しっかりPA内に進入しているのもポイントが高い。
8-4:DFリーダー対比
ヒートマップ(5ガブリエウ)
中央にどっしり。
ヒートマップ(23ヨルディ・バイス)
両選手とも、ヒートマップとしては、ほぼ同じ。しかし、守備スタッツでは、5ガブリエウが伸びて、23ヨルディ・バイスは伸びていないデータとなっているのだから、データは面白い。
9、総括
岡山が、押し込む時間帯があっても、一瞬の隙を突いて、得点を決める事ができる横浜FC。この自信は攻められることがあっても、耐えきる守備の堅さを生み出して、限られた攻撃機会を確実にものにするという部分に集中することを可能としている。
ただ、このサッカーをする上で、一番の問題は、守備に回る時間帯が長くなり、決定機の数も少なくなる可能性があるということである。攻守における質の高いサッカーができるチームだけが、勝ち点を積み重ねることができる戦い方という事である。
個の力の質の部分に自信を持ち切れないチームは、運動量や数的優位の状況を作る事で、守備機会を減らし、攻撃機会を増やすという事で、勝負を目指していくこととなる。これを上位で戦えるクラブが、実戦すれば、圧倒出来る試合も増えるが、試合環境の厳しい(猛暑や高い湿度)Jリーグで、安定して戦う事は可能であるのかという心配点もある。
この試合の基本スタッツのように、岡山が押しているようでも、それはある程度横浜FCにとっては、想定内で、ここで、対戦したチーム側で戦えたという認識であっても、横浜FCとしては、いつものことで、劣勢であったという認識を持つというケースも起こり得る。
そこの部分で、双方のサポーターの認識の部分で、ズレが生じてしまうことは致し方ないが、当然ながら攻撃の手数が対戦するチーム側に増える中で、横浜FCが失点するリスクもかなりある。ただ、序盤戦のように同点~逆転の試合を多く作ったように、それでも負けない。むしろ勝てるという自信を、サポーター・監督・選手で作り出してきた事で、攻勢に転じた時には、同点~逆転の流れを作り、勝ち点を積み重ねてきたのが横浜FCである。
だから、岡山としては、攻めることができて、先制点を奪えなかったことで、点を全員で取りに来るような鬼気迫る横浜FCの攻撃を引き出せなったという意味でも、敗戦という結果に加えてのより悔しい内容となってしまった試合。
ただ、それでも横浜FCが、反撃したくてもできなかった時間帯もまたあったのも事実であり、横浜FCのゲームプランのような試合運びであっても岡山の選手・監督は、戦い抜いたという試合であったという部分の私の認識に変わりなく、お互いの3-4-2-1の良さをある程度発揮できた試合であったと言える。
特に重要であったデータは、DFリーダー対比であるだろう。直接的な守備機会の多かった5ガブリエウと、直接的な守備機会の少なかった23ヨルディ・バイス。ヒートマップがほぼ一緒であったことからもある結論に至る。
守備時に「後ろのスペースを消していく横浜FC」と「前からのスペースを消していく岡山」
攻撃時に「スペースを探す横浜FC」と「スペースを作る岡山」
「パスで運び(通して)勝利を目指す3-4-2-1」と「パスで繋いで(崩して)勝利を目指す3-4-2-1」という両チームが戦う構図の試合であったが、岡山の準備をしてきたことの多くの90分間で発揮できたとまでは、残念ながら言えず、横浜FCに内容(90分間のゲームプランでの試合運び)の対比でも軍配が上がったが、最終盤に、守備を固めて逃げ切るという選択を迫った岡山の猛攻もまた良かった。実際に、ゴール期待値では逆転することができた。勝ち点を持ち帰ることこそできなかったが、岡山の健闘に対して、少なくとも岡山サポーターとして、勇敢に戦い抜いたことは、誇りに感じるし、チームの頑張りは称賛に値する戦い方(戦う姿)であった。
そして、岡山の猛攻を凌ぎリードを守り切った横浜FCもまた強かった。岡山から勝ち点3を奪うに値する強さであったと思います。少し冷静になった今であれば、悔しい気持ち消えなくても、心から「勝利おめでとうございます。」と伝えたい。
次回の対戦では、お互いに勝利をできるよう、J1で戦えるように、お互いに残り試合ベスト尽くしていきましょう。有難うございました。
文章・図=杉野 雅昭(text・igure=Masaaki Sugino)、図(figure)=SPORTERIA様
※注釈:私の図は1点のみです。※
2022ファジアーノ岡山にフォーカス27
2022 第32節 横浜FC vs 岡山(Away)『 無情の結末と滾る決意 』
は、こちら(別サイト:note)
URL:https://note.com/suginote/n/n6d4961ce04b3
コメント(2)
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SPORTERIAスタッフ
2022/8/23 22:02
最後まで非常に見応えのあるゲームでした!👏
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杉野 雅昭(masaaki sugino)
2022/8/28 13:48
SPORTERIAスタッフさん
1点の差は、途中出場の山根選手&山下選手がパワーを発揮して決定的なプレーができたことかなと…。
そんな悔しい敗戦の中ですが、ヨルディ・バイス選手のコメントには感動しました💓
https://www.fagiano-okayama.com/news/p1473057782.html
ここから絶対に立ち上がってシーズン終了時に"勝者"となれることを祈っています!
コメント有難うございます。
途中出場の選手の差が、そのまま結果に繋がってしまった痛い敗戦でした。
しかし、23ヨルディ・バイス選手の言葉には、勇気を貰いました。
最後まで、”勝者”になれることを信じて応援していきたいと思います。