一括りにポゼッションサッカーと言っても色々な形がある。完成度が高く安定感のある3チームを対比することで、山形戦のディープな所に触れて行きたい。
山形・徳島・新潟の3チーム。
1、山形のポゼッションサッカー
35節vs岡山 山形のパスソナー・パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)
ピッチを広く縦に速くという方針をパス成功数からも巧くやり遂げていることが、読み取れる。中盤でのパス交換も必要最低限。
35節vs岡山 山形のエリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)
パス交換を繰り返して、前に運んで行く従来のポゼッションサッカーとは異なり、自陣深く出のパス交換の回数が少ない。効率よく前に運んでいる事が読み取れる。
35節vs岡山 山形のボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)
中盤省略という言葉があるが、中盤経由で、高速前線行き。中盤でのプレス網に如何に引っ掛からず、前線に運ぶかというサッカーに特化している。そのため、中盤でのボールロストが少なく、バイタルエリア付近でもボールロストしていない位置が目立つ。
2、徳島のポゼッションサッカー
35節vs秋田 徳島のパスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)
距離のある横パスを多用している一方で、縦へのパスは回数に対して、距離が短い。少しずつ前進しつつもボールロストを許さないポゼッションサッカーであると読み取れる。
35節vs秋田 徳島のエリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)
自陣とサイドのパス交換多い。中央を横切るサイドチェンジも目立つ。ピッチの横幅を使う事で、プレスのきついエリアを離脱して、ボールロストを防ぐ。
35節vs秋田 徳島のボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)
自陣とサイドでのボールロストが少ない。サイド深くでのボールロストはほぼない。中へのアクションの少なさからパスを回す中で、隙を見せるまで回し続ける高いボール保持を誇るポゼッションサッカーであることが良く分かる。
3、新潟のポゼッションサッカー
35節vs琉球 新潟のパスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)
中央をフル活用したポゼッションサッカー。中央で回す事を恐れず、回数を重ねる事で、着実にかつ効果的にパスを繋ぐ王道のパスサッカーであることが読み取れる。
35節vs琉球 エリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)
真っ赤なポゼッションサッカー。高いパス成功率で、自陣でのパス回しを離脱し、高い位置で、パスを回す事ができる。
35節vs琉球 新潟のボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)
自陣、中盤でも隙のないポゼッションサッカー。ドリブルやパスで仕掛けて行く中で、ボールロストしている。王道でありながら、理想的なポゼッションサッカー。
4、ポゼッションサッカー考察
山形のポゼッションサッカーの特徴
縦を意識した縦の幅をフル活用。縦に素早く速く事で、中盤でのボールロストを減らして、前線での手数を増やすことで、結果的に試合の主導権を握るポゼッションサッカー。手数少なく、中盤のプレスや寄せを無効かすることで、パスが繋がり、ラストパスやPA内進入が増える事で、ポゼッションサッカーと考えられる。
徳島のポゼッションサッカーの特徴
横を意識して横の幅をフルに活用。プレスは、囲い込むように奪いに行くが、そこを大きなサイドチェンジや横パスをフル活用することで、密集地から離脱し、ボールロストを防ぐ。また、その背後を突くのではなく、覗いた所で、相手チームの選手が戻って揃った場合には、無理をせず繋ぐ。最後の所での仕掛けの部分で、崩す事での拘りが強いポゼッションサッカー。
新潟のポゼッションサッカーの特徴
縦と横、距離感を繋いで前に運ぶ事にバランスが取れている。前に運べてしまえれば、仕掛けることができる選手が多く、勝負できるので、前線から最後尾まで、無理なく自然体。その分、プレスに向かって行く事になるが、繋いで前まで運べる技術を持っていることでできる王道のポゼッションサッカー。
5、岡山のサッカー
35節vs山型 岡山のパスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)
攻守の入れ替わりこそ激しかったが、岡山のパス交換は必要最低限。この図でみて見ると、パスを回して運ぶ事で理想となるトライアングルを意識していることが、パスの成功数からも読み取れる。山形が縦に早くすることに力を入れている分、全体的に見ると隙が生じていた事で前に運ぶコースがあったのが読み取れるデータだ。
エリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)
いつも寂しいエリア間パス図。しかし、シュートが打てている。それは、何故か?前線でもパスが繋げる様になってきているからである。ロングパスやドリブルで運ぶだけでなく、ボール奪取から攻撃に直ぐに移れるのが岡山の強みである。
35節vs山形 岡山のボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)
縦の幅をフルに使っているため、岡山のDFラインへのプレスもどうしても緩くなってしまう。そのため、岡山の自陣でのボールロストはほぼなかった。
6、山形戦レビュー
2022 J2 第35節 ファジアーノ岡山 vs モンテディオ山形
フォーメンション図(図=figure:杉野雅昭)
ゴール期待値(図=figure:SPORTERIA提供)
岡山だと深夜に放送しているサッカー番組で、ゴール期待値の特集をしていた。恐らくこの図は、シュートがどれだけゴールを期待できる状況の期待値の総数だったのですね。良い状況で、シュートを打っていくことで、この図が上がっていくイメージを持った。
押されていたように見えて、そういった状況を岡山の方が良く作れていたという不思議。
岡山の攻撃スタッツMOM
15ミッチェル・デュークの攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)
決勝ゴールを決めただけではなく、空中戦の強さやポストプレーの巧さで、前線での起点となったことで、岡山に流れを持ってきた。
山形の攻撃スタッツMOM
25國分 伸太郎(図=figure:SPORTERIA提供)
文句なしで選出。直接FKを決めた得点はお見事。チャンスメークとウイングとしてゴールに迫るという意味で、大車輪の活躍を魅せた。
岡山の守備MOM
35堀田 大暉のGKスタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)
開始直後のピックセーブで勝利を呼びこんだ。この試合も枠内シュートを5本もセーブ。
山形の守備MOM
25國分 伸太郎の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)
何故か、岡山のクリアボールや毀れ球が、25國分 伸太郎の元へ岡山にとっては、アンラッキーな形で、25國分 伸太郎は、守備でも脅威であった。しかし、際どい所を意図的に狙っていた山形のサッカーによって毀れ球がそこに集まった。
岡山のヒートマップMIP
14田中 雄大のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)
山形の縦に早いサッカー。やはりシャトルランしてた。岡山のIHは、攻守に走らなければならない。
山形のヒートマップMIP
3半田 陸のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)
注目の3半田 陸。縦に長くなる中で、中に入っていく事で、バランスをとる動きが目立った。
基本スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)
この図を見た時に大体は、岡山が項目で負けている事が多い。しかし、そこで勝てるのだからサッカーは、奥が深い。そして、得点を競うであり、そこで、効率よく戦えていたことが良く分かる。このサッカーを信じて、応援してきたい。
文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様
2022ファジアーノ岡山にフォーカス31
J2:35節:岡山vs山形(H)
『唯一無二の風』
は、こちら(別サイト:note)。
コメント(2)
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SPORTERIAスタッフ
2022/9/14 11:43
たしかに一口でポゼッションサッカーと言っても、色んなスタイルがありますよね。
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杉野 雅昭(masaaki sugino)
2022/10/8 09:28
SPORTERIAスタッフさん
・後ろで回しながら少しずつ、かつ安定して前進することを目指す
・相手を敵陣に押し込んで、PAへのアタックを見せながら回す
・後ろで回して喰い付かせて、スペースに起点を作って縦に崩す
(・なかなか前進できずに結果的にボールを保持している)
それぞれでプレーの優先度が異なり、選手に求められる判断や能力も変わってきますね💡
裏を返せば、それらを打ち破るにも異なるアプローチが必要に…深い!
コメントありがとうございます。
ポゼッションサッカーの1つのスタイルをとっても全く同じにできないのが、サッカーであり、そこが魅力で、奥が深いですよね。
多くの試合を観たいですが、なかなかチェックできないのが現実。