今回は、試合後の両チームの監督コメントをデータで読み解いていきたいと思います。新たな試みですが、この試合においては、コメントでもデータでも大きな意味を持つので、多くの方に知って欲しいという意図で、今回のフォーカスをまとめました。それでは、よろしくお願いします。


1、基本スタッツ


 まずは、基本スタッツから入っていきます。


基本スタッツ

基本スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


基本情報(図=figure:杉野 雅昭)


 4-4-2 vs 3-4-2-1という構図でスタートした一戦。基本スタッツを見る限りは、岡山が主導権を握るも効率よく得点を重ねた金沢が勝利した試合というのが、良く分かりますが、深く掘り下げるには、もっと色々なデータを対比していく必要があります。そこで、まずは、金沢の柳下 正明監督のコメントとデータを見比べていきしょう。


2、柳下 正明監督のコメント


 Jリーグの公式サイトである「Jリーグ.jp【公式】金沢 vs 岡山の監督コメント」より一部引用させていただきます。


引用元URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2022/100203/coach/

は、こちら(別サイト:Jリーグjp)。


柳下 正明監督(金沢)
「攻守とも狙いをみんなが合わせてプレーできたんじゃないかと思う。攻撃については1つディフェンスラインの背後のスペースを使おうということを狙いとしてやっていて、2トップはよく流れてそのスペースを使ってくれた。守備に関しては向こうの強みであるセットプレー、あるいは(ミッチェル)デュークに入れたボールを拾って展開してクロス。そのあたりも体を張って90分通して集中を切らさずやれた。こちらの強みであるロングカウンターも、どんどん追い越してスペースに出ていくということもできていた。非常に良かった。あと3試合、続けてやれるようにしっかりやっていきたい。」


柳下 正明監督のコメントのポイント


攻守ともに狙いをみんなが合わせてプレーできたんじゃないかと思う。

→狙いとは何であったのか?


攻撃については1つディフェンスラインの背後のスペースを使おうということを狙いとしてやっていて、2トップは良く流れてそのスペースを使ってくれた。

→背後のスペース、特にサイドのスペースを狙っていて、2トップがそこに走りこんでいた。


守備に関しては向こうの強みであるセットプレー、あるいは(ミッチェル)デュークに入れたボールを拾って展開してクロス。そのあたりも体を張って90分間通して集中を切らさずやれた。

→岡山の武器を理解して、そこに対して人数と意識を以て集中して対応していたことが伝わって来る。


こちらの強みであるロングカウンターも、どんどん追い越してスペースに出ていくということもできていた。

→追い越していくというのは、岡山対策ではなく、39節時点での金沢の武器であり、チームスタイル。


非常に良かった。あと3試合、続けてやれるようにしっかりやっていきたい。

→①~④共に、監督して確かな手応えを感じていて、次に繋がる内容であったことが読み取れる。


 以降では、①~⑤の表記を使って、データと対比していくこととなるので、この部分に戻って確認して欲しい。


①(狙い)、②(スペースへのパス)、③(守備)、④ロングカウンター、⑤(ゲームプラン完遂)


3、金沢の攻守の狙いについて


 柳下 正明監督の狙いについて、この章ではコメントと複数の図で、対比していきたい。


パスソナー・パスネットワーク

パスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


この図のポイント


ポイント1

高い縦へのロングパスの採用率。

→背後のスペースを狙うという言葉通りのデータ。

②(スペースへのパス)④(ロングカウンター)に該当。


ポイント2

全体的に前方へのパスが多い。

→奪ったら背後のスペースという意識が高い。

②(スペースへのパス)④(ロングカウンター)に該当。


ポイント3

2トップの選手が対角線のパスが出ていて一定の距離がある。

→サイドに流れていたこと示すデータ?(断定とまではいいきれない)で、中央に張る2トップでは、こういった(ポストプレーの短距離のパスが少ない)データとはならない。

②(スペースへのパス)に該当。


 次のデータでも意識していくことで理解できることのあるエリア間のパスを見て行く。


エリア間パス図

エリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)


この図のポイント


ポイント1

縦へのパスの成功数が少ない。

→繋いで前に運んで行くという過程のパスがほぼなく、成功率の低いロングパスやクリアが主体であった事が分かる。

②(スペースへのパス)③(守備)④(ロングカウンター)に該当。


ポイント2

横パスが非常に多い。

→プレスを回避して、前へのパスコースを探している?(こちらも断定まではできない)。

→プレスや守備強度の高い中央を避けて、速やかにサイド(スペースがある所)へ運ぶ意図が感じ取れる。

②(スペースへのパス)に該当。


 次は、解釈の難しい時間帯別パスネットワーク図をみていく。


時間帯別パスネットワーク図

時間帯別パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


この図のポイント


ポイント1

SBの平均ポジションが控えめ。

→スペースを埋める意識と攻撃参加よりは、スペースへのパス配給(特にロングパス)を意識していたことが分かる。また無理に繋がず、クリアしていたことの現れ。

②(スペースへのパス)③(守備)④(ロングカウンター)に該当。


ポイント2

2トップと左右のSHが横になる時間帯がある。

→前線の2人と左右のSHが、スペースでターゲットになっていたことを示す。2トップがシンプルにパスのターゲットであれば、その2人が高い位置になりがりだが、MFに吸収される時間帯もあるぐらい。

→MFの追い越す意識も高いことも示すデータ?

②(スペースへのパス)④(ロングカウンター)に該当。


ポイント3

CBの二人とボランチの二人が常に一定の距離を保っている。

→攻守で完全に独立。パスを繋いだり組み立てる回数は、限られているので、両ポジションの選手が近づくシーンは限られた。また、スペースへの長めのパス主体ということもあり、組織として綻びが生じるシーンも少なかった。

③(守備)④(ロングカウンター)に該当。


ポイント4

全体的に自陣でのプレー時間が長い。

→カウンターの意識。特にロングカウンターの意識が高かった事が良く分かる。

②(スペースへのパス)③(守備)④(ロングカウンター)に該当。


ポイント5

最後の時間があまりパスを出せていないが、高い平均ポジション。

→カウンターが決まった事と集中して守っていたことが良く分かる。

②(スペースへのパス)③(守備)④(ロングカウンター)に該当。


 次に、パスの傾向などを見てきた流れで、ボールロスト位置の図でポイントを探りたい。


ボールロスト位置

ボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)


この図のポイント


ポイント1

自陣でのボールロストも多い。

→やはり繋ぐより前(スペース)にという意識の現れ。

②(スペースへのパス)③(守備)に該当。


ポイント2

サイドや中央から前方向や斜め前方向へのボールロストが多い。

→ロングカウンターや背後のスペースを狙ったパスが多い。

→クリアに近いパスも多い。

②(スペースへのパス)③(守備)④(ロングカウンター)に該当。


ポイント3

最前線のボールロストが多い。

→攻撃が完結していたことの現れや意図したサッカーができていたことが分かる。

②(スペースへのパス)④(ロングカウンター)⑤(ゲームプラン完遂)に該当。


 最後に組織の中の選手から読み取れる部分をみていきたい。


攻撃スタッツ - 松本 大弥

6松本 大弥の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツ - 大石 竜平

13大石 竜平の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ②(スペースへのパス)④(ロングカウンター)を徹底した中で、サイドのスペースからゴールに迫っていた事が良く分かる枠内シュート数のスタッツ。


攻撃スタッツ - 杉浦 恭平

11杉浦 恭平の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ②(スペースへのパス)④(ロングカウンター)からボールに触れていて、得点こそ奪えたが、2トップいうこともあり、5柳 育崇や23ヨルディ・バイスの壁の大きさも感じる伸びなかったスタッツとなっている。


攻撃スタッツ - 藤村 慶太

8藤村 慶太の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ボランチながら高い攻撃への貢献度。アシストも記録した。データや実際に一度見ただけでは印象に残り辛いが、④(ロングカウンター)を徹底する中で、攻撃に絡むことができた。


攻撃スタッツ - 松田 陸

5松田 陸の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ②(スペースへのパス)をSBの位置からスペースへロングパスを入れる事を徹底していたことを感じられるクロス数1。


守備スタッツ - 長峰 祐斗

2長峰 祐斗の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ③’(守備)のタスクが大きかったことが分かる45分間の守備スタッツ。


守備スタッツ - 小野原 和哉

18小野原 和哉の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - 孫 大河

35孫 大河の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


GKスタッツ - 白井 裕人

1白井 裕人のGKスタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 3選手の守備スタッツを続けてみたが、4-4-2の守備ブロックは、強力であった。セカンドボールや最後の体を張った守備。この試合の金沢は、本当に凄かった。誰が良かったではなく、金沢の選手の全ての選手が良かった。


ヒートマップ - 松田 陸

5松田 陸のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ②(スペースへのパス)③(守備)④(ロングカウンター)の狙いからか、SBでは珍しくゴール前が濃くなっている。


ヒートマップ - 松本 大弥


6松本 大弥のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ②(スペースへのパス)④(ロングカウンター)を裏付けるヒートマップ。SBと打って変わって、ゴール前にしっかり入れている。ロングカウンターが何度も決まっていた事が良く分かる。


ヒートマップ - 林 誠道

20林 誠道のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ②(スペースへのパス)を裏付ける三日月のヒートマップ。2トップもサイドへの意識の高さが分かるデータ。


 総括は、後程します。


 この章では、皆さんと色々な図(データ)を見てきましたが、如何だったでしょうか?①(狙い)の柳下 正明監督の狙いが見えて来たでしょうか?そして、⑤(ゲームプラン完遂)の結論に至る事も良く分かりますね。


4、木山 隆之監督のコメント


「ファジアーノ岡山公式HP」の「J2第39節 金沢戦 監督・選手コメント」より一部引用させていただきます。


引用元URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/p1473057915.html

は、こちら(別サイト:ファジアーノ岡山公式HP)。


木山 隆之監督(岡山)


木山 隆之監督のコメントのポイント


※注釈:①~⑤は金沢の柳下 正明監督のコメントで使っているため⑥~⑧を採用。※


繰り返しているポイント

「決してすごく悪かったわけではないが」

「戦術的なズレも多少あったが、それが直接の大きな原因にはなったとは思っておらず」

「噛み合わせが悪かったところも、前半のうちにある程度修正もできたし」

→ここを強調した理由は何であったのか?また、この分析は、どういった内容からこういった戦評になっているのか?


失点ポイント

「前半から自分たちのストロングな部分やプレーの質などが、少し上がり切らない間に、得点を取られてしまった。」

「チャンスはあったが、決めきれないうちに相手にまたゴールが入ってしまった。」

「最後はかなりリスクを背負っていたので、3点目を取られてしまったことは受け入れるしかない。」

→失点の要因の主語が岡山側にある理由は?金沢のサッカーが率直に良かったと言えない理由は?


敗因ポイント

「基本的な自分たちのプレーの質や強度の部分で流れを自分たちで失ってしまった。」

「今日は自分たちがゴールを割る回数が1回しかなく、最終的にはそこが敗戦という形になった。」

「我々はここ何試合もそうだが、勝点1を目指して全く戦っていない。リスクを背負ってい

く」

→勝ち点1ではなく、勝ち点3を目指す意味とは?また、敗因が岡山側にあると強調する理由は?


 金沢と違うポイントなので、データのポイントを私の解釈で、読み解いていくので、そこをヒントに木山 隆之 監督何故そう感じたのか考えて欲しい(金沢のポイントと違い数字の振り分けが困難)。


5、岡山の修正と挑戦


パスソナー・パスネットワーク

パスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


図のポイント


ポイント1

パス数で大きく金沢を上回っている。

→ボールを保持することはできていた。


ポイント2

15ミッチェル・デュークがトップで機能している。

→出場時間もあるが、パス数とポストプレーでのシャドーの関係も良好であった。


ポイント3

22佐野 航大から前線にパスをあまり通せていない。

→サイド主体とした攻めで、攻撃になかなか絡めなかった。


ポイント4

16河野 諒祐からクロスを通せている。

→後半の修正が当たりクロスやセットプレーを入れる回数が増えた。


ポイント5

34輪笠 祐士と26本山 遥のパス数が少ない。

→中央の組み立てや攻撃参加が物足りなかった。


ポイント6

23ヨルディ・バイスのパス距離が短く回数が少ない。

→金沢の岡山対策によりスペースがなかった。


ポイント7

41徳元 悠平と5柳 育崇のパス数が多い。

→守備機会も多かった事で、パス数も増えた。


 次のデータも見て行く。


エリア間パス図

エリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)


図のポイント


ポイント1

中央が人数が多く手厚いパスワークができるはずなのに、パス数が伸びていない。

→両ボランチが、あまり有効なパスが配給できていない。


ポイント2

右サイドが活発。

→選手交代や布陣変更で活性化。


ポイント3

前方の方がパスが多い。

→試合を通して考えると、支配率に関しては主導権を握れていた。


ポイント4

斜めのパスが多い。

→金沢の4-4-2の守備ブロックの間を意識したパスワーク。


さぁ、どんどん行きますよ。


時間帯別パスネットワーク図

時間帯別パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


図のポイント


ポイント1

前半0分 - 前半15分は、押し込まれている。

→金沢のサッカーと嚙み合わせが悪かった。


ポイント2

徐々に押し返している。

→修正に加えてリスクを高めて、金沢から勝ち点3を得るために攻勢を強めた。


ポイント3

金沢陣地での平均ポジションの選手が多い時間帯もある。

→しっかり保持している意味と、金沢の重心が後ろに合った。


ポイント4

選手の距離感が近い。

→3-4-2-1は、パスを繋ぐ上では、岡山のストロングになる。


さぁ、次に行くよ次に。


ボールロスト位置

ボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)


図のポイント


ポイント1

自陣でボールロストがない。

→ポゼッションvsカウンターの構図がより明確に。


ポイント2

バイタルエリアでのボールロストが多い。

→最後の崩しの所での精度や工夫が足りなかった事と、金沢の守備に隙が少なかった。


ポイント3

右のボールロストが多い。

→クロスとパスの失敗が多かった?


ポイント4

ゴール前のボールロストが金沢より少ない。

→シュート数に対しての決定機では、岡山と金沢では互角。もしくは、金沢の方が多かった。


 最後に選手のスタッツやヒートマップを見て行くよ。


攻撃スタッツ - ミッチェル デューク

15ミッチェル・デュークの攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツ - ステファン ムーク

8ステファン・ムークの攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツ - 田中 雄大

14田中 雄大の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 3選手とも惜しいシュートを放つも決めきれなかった。14田中 雄大も悔しくて涙。それだけに決めたかったが、これもサッカーである。


攻撃スタッツ - 佐野 航大

22佐野 航大の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツ - 河野 諒祐

16河野 諒祐の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツ - ハン イグォン

9ハン・イグォンの攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 WBでの3選手。システム変更や選手交代で躍動するも最後の一押しが、足りなかった。


攻撃スタッツ - 本山 遥

26本山 遥の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツ - 輪笠 祐士

34輪笠 祐士の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツ - 河井 陽介

27河井 陽介(図=figure:SPORTERIA提供)


 35分で、27河井 陽介はラストパスを2本記録も34輪笠 祐士と26本山 遥は0本。ここの部分で、流れを金沢に渡してしまった。最適格を見つけるのは、大変だが、ここを見つけることができれば、今季だけではなく、来季に繋がる。


攻撃スタッツ - 永井 龍

38永井 龍の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 後は、決めるだけ。ストライカーらしいプレーを魅せているだけに、彼が決めるかどうかは、勝敗を左右することとなるだろう。


守備スタッツ - 本山 遥

26本山 遥の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - 輪笠 祐士

34輪笠 祐士の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 この2選手の守備力を金沢の狙いのサイドで活かしたかった・・・


守備スタッツ - 柳 育崇

5柳 育崇の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - 徳元 悠平

41徳元 悠平の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - ヨルディ バイス

23ヨルディ・バイス(図=figure:SPORTERIA提供)


 金沢のサイドを狙ったカウンターに対して、左右のCBの41徳元 悠平と5柳 育崇が守備対応をする中で、中央の23ヨルディ・バイスは、難しい守備対応が多く、チャレンジできる守備機会は少なかった。


守備スタッツ - ミッチェル デューク

15ミッチェル・デュークの守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - 田中 雄大

14田中 雄大の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - ステファン ムーク

8ステファン・ムークの守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 金沢の選手は、後でパスを繋ぐ回数は、限られていたので、雉プレスの申し子の3選手が、雉プレスをかける時間はなかった。3-1-4-2で、無理やりでも作る必要があったのかもしれない。


ヒートマップ - 本山 遥

26本山 遥のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップ - 輪笠 祐士

34輪笠 祐士のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップ - 河井 陽介

27河井 陽介のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


3選手は似たヒートマップだが、攻撃スタッツでは、大きな差があった。


ヒートマップ - 永井 龍

38永井 龍のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


 シュートを打てているのは理由がある。ゴール前のポジショニングや動き出しは、岡山で一番の生粋のストライカー。彼が決めれば、岡山は、本当にもう一段回進化できる。


 以上です。如何だったでしょうか?⑥~⑧の部分の皆さんの考えが、①~⑤を踏まえて、一つの結論に辿り着けたでしょうか?


 私見になりますが、最後は、①~⑧のポイントを私の総括で今回のデータでフォーカスを締めくくりたいと思います。


6、総括


※注釈:ここは私の私見になりますので、読むのが面倒であれば飛ばして頂いてもかまいません。ただ、最後に紹介するデータは必ず見て欲しいです。※


 どうだったでしょうか?私は①~⑧のポイントを頭に置きつつ、スタッツからこの試合のポイントをまとめてきました。正直、私は、ここまで金沢のやりたいサッカーをされて、岡山のやりたいことができなかった事が、両極端と言えるほどのデータとなった試合は珍しいと感じました。


 それに加えて、木山 隆之 監督の修正する力がこれだけあり、流れを変える選手がこんなに岡山にいるのかというのが、改めて感じたのが正直な感想で、同時にそういった選手をより活かす戦い方が、本当はもっとあったのではないかと思っています。


 特に26本山 遥と34輪笠 祐士の守備の巧い両選手が、ほぼ守備で貢献できておらず、攻撃でも短い出場時間の27河井 陽介の方が貢献度が高いというダブルパンチでした。


 しかし、その両選手を交代していく木山 隆之監督の問題を見つける分析力と修正力は、本物であると感じました。


 また、一方では、金沢の戦い方に対するリサーチ不足もあったのではないかと思います。で、口にしたロングカウンターは、少なくともここ数試合の金沢のスタイルであったことが分かります。


 恐らく、41徳元 悠平と23ヨルディ・バイスと5柳 育崇に対する信頼が厚かった事と、自分達のスタイルで結果がでていることで、その形を崩すという結論に辿り着けなかった。もしくは、その術を持っていなかった。これは、一つの現実として受け止めなければならない部分かと思います。


 結局は、金沢の岡山対策の②~④に対して、木山ファジは、木山マジックで、⑥~⑧の真理の中で、フィフティフィフティ(互角)に持って行ったが、決めきれなかったことで、金沢の柳下 正明監督ののコメントに繋がったという試合であったと結論ずけることができるだろう。


 ただ、最後に木山 隆之監督が、確かな手応えと自分達が決めきれなかったと終始していた理由は、実は、データとして残っている。


 それがこれである。


ゴール期待値

金沢のホームのゴール期待値(図=figure:SPORTERIA提供)


 この図のように岡山が、ゴール期待値で、金沢を圧倒している。木山 隆之 監督が、⑥~⑧のように、敗因に岡山が主語にあるのは、このデータの感覚の印象を試合中に持っていたからである。そして、ここまでの内容にできながら1点しか取れなかった事実は勝ち点3を失った以上のダメージが岡山にあったことは間違いない。

 データだけみれば、ホームの再現をできる可能性すらあったのだ。


岡山のホームのゴール期待値(図=figure:SPORTERIA提供)


 実は、ゴール期待値だけみれば、今回の39節の試合の方が高いのである。前回と違ったのは、②~④の得点する術と、リードする展開に持ち込めたこと。そして、気持ちや自分達の戦い自信があったこと。


 14田中 雄大が、自分が決めていればと悔しがっていたが、まさにそういった試合でもあった。それだけに完敗ではあったが、どこか勿体ない敗戦とも感じる。その部分で、木山 隆之 監督のような試合後コメントとなってしまったのである。


 しかし、それであってもこのデータを覆す金沢の徹底した戦い方は、素晴らしかったですし、ゴール期待値で試合をするわけではないので、データをも覆せるのがサッカーであり、今回の指揮官の視線での攻防もまた、面白い一戦であったように思う。


 これが、序盤戦であれば、違った気持ちで次に切り替えやすかったが、明日の試合では、どれだけ気持ちを切り替えて、自動昇格を目指しつつも、ショックに対して、強く気持ちを持てるかという試合となる。


 悔しい敗戦であったが、ゴール期待値も見てもスコア程の完敗でなかったという事を踏まえて、自信を失いことで、残り3試合で3勝を目指す戦いの先にあるものに繋げて欲しい。


 90分の戦い方や内容で考えると、不味い点もあったのも事実ではあるが、こちらのフォーカスでも、内容では、決して下を向く必要がない試合であったことを再度発信して今回のフォーカスを終えたい。


 最後まで読んで下さり有難うございました。


文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様


 情熱と感想を主体としたファジアーノ岡山にフォーカスのこの試合のレビューの方も読んでいただけると嬉しいです。


2022ファジアーノ岡山にフォーカス35-金沢戦- 『始まりのとき』

は、こちら(別サイト:note)。

URL:https://note.com/suginote/n/ncc6dbd04eb5d