残り試合で、2位との勝ち点差が8。本来であれば、絶望的状況であるが、23ヨルディ・バイスの試合後コメントが、ファジアーノ岡山サポーター間で、共有された。

「#我々はファジアーノ岡山なので絶対に諦めることはない」

私もサポーターの1人として、自動昇格の可能性がある限り、勝利を信じて、諦めずにプレビューを書いていく。


1、前節までの対戦成績


前節までの対戦成績

前節までの対戦成績(図=figure:SPORTERIA提供)


 5連敗中の甲府とアウェイ金沢戦の敗戦で、失意の中の岡山と一戦。前回の対戦こそ、開幕戦のホームでの4-1での快勝。今季はやれるという手応えを感じつつも引き分けの多かった序盤戦に勝ち切れなかったことで、現在は、自動昇格圏から勝ち点差が8点差という状況に陥った。


 甲府は、リーグ戦では苦戦が続いているものの天皇杯の準決勝で、鹿島を破りクラブ初の決勝進出を決めた。確かな手応えの結果を手にして、自信を持ってこの試合を迎える筈である。先ほど、岡山が、失意の中にあるという表現を使ったが、それは、敗戦直後の話である。水曜の天皇杯で、甲府が、立ち直りのきっかけになりうる歴史的な1勝で勝ち上がったように、少しずつでは、チームとして前を向いていく努力と準備をしてきた。ショックを受けたファジアーノ岡山ファミリーであったが、23ヨルディ・バイスの言葉通り、不屈の精神で、アウェイの甲府戦で、監督・選手・サポーターが再び、ココロヒトツニして、勝利だけを考えて、戦ってくれる筈である。


 では、全くの五分である6勝4分6敗の両チームの対戦のプレビューをデータを見ながら書いていきたい。


2、得失点パターン


得失点パターン

前節までの甲府の得失点パターン(図=figure:SPORTERIA提供)


 甲府は、クロスとショートパスが主な得点源のチーム。岡山の失点数と甲府の得点数が同数である点は、気が掛かりであるもののサイドと中央のどちらかが、主体であるかは、本日の試合で見極めたい。

 失点に関しては、セットプレー・クロス・ショートパスと得点に繋がり易い三大パターンに対して、ほぼ横一線となっている。割合ではなく、数字のカウントであるので、特段弱点があるわけではないが、隙がないとも言えない。

 一つ言えることは、甲府は連敗していても開幕戦のような隙を見せてくれないという事である。どう守ると、中央値とも言えるパターンの構成になるのか、また見極めたい。


得失点パターン

前節までの岡山の得失点パターン(図=figure:SPORTERIA提供)


 セットプレーが岡山の武器であり、クロスとショートパス、PK、毀れ球からと得点パターンは多彩である。崩すという部分で、3-4-2-1での可能性を感じたが、まだまだ岡山には課題が多そうである。

 クロスからの失点が多いのは、CBのアジリティを考えると、致し方ない部分はある。ここを攻撃でカバーするのか、守備でカバーするのか。高いレベルの試合の中で、この部分が問われる事となるかもしれない。


3、時間帯別得失点率


時間帯別得失点率

前節までの甲府視点の時間帯別得失点率(図=figure:SPORTERIA提供)


 立ち上がりは、慎重に入るのが甲府スタイルのようだ。岡山も立ち上がり安定しており、甲府がスコアを先に動かす可能性は、低そうである。ただ、体が温まってくる中で、攻勢にでて得点に繋がる力は、甲府にある。天皇杯のように1-0で勝ち切るのが、甲府の勝ちパターンなのか。それとも連敗中のように、スコアが動くと、取り返す力が弱いのか。その辺り、先制点が、どちらかに入るかは、大きな意味をもつ一戦となりそうである。


時間帯別得失点率

前節までの岡山の視点の時間帯別得失点率(図=figure:SPORTERIA提供)


 チーム最多の16得点を決めている7チアゴ・アウベスが出場している時間帯。つまりチアゴタイムの得点力の高さが、そのまま岡山の得点時間帯になっていることは明らかである。ここ最近、発信している通り、38永井 龍や9ハン・イグォンが、得点により絡めるようにならないと、彼が下がった時の閉塞感は、そのまま致命的な結果に繋がる可能性はある。選手層の厚さである程度カバーできてもエースだけは、そのリーグの王者でもなかなかカバーできないケースもある。それだけエースは特別なのである。

 ただ、それでも総合力のあるチームエース不在でも苦しみながらでも勝つ力がある。岡山もそういった試合があり、1人の選手に依存しない総合力がある。この総合力や7チアゴ・アウベスの爆発力をどう内容や結果に繋げる事ができるか。シーズン当初からの課題を開幕戦で対戦した甲府に対して、どういった答えを出す事ができるのかは、注目点の1つである。


4、PA内への進入傾向


PA内への進入傾向

甲府のPA内への進入傾向(図=figure:SPORTERIA提供)


 甲府は、ショートパスとクロスからの得点の割合が高いというデータがあったが、ハーフレーンとアウトサイドからの崩しがここ3試合では、巧く機能している。中央での崩しはやや回数が少ないものの、パスを軸に崩す力があり、サイドはパスとクロスを駆使して、ゴールを狙って来ることが分かる。

 注意すべき点は、前節岡山が崩されたサイド深くまで進入してのクロスを一定数中に入れる事ができていること。そして、ロングパス一本の内にデータ上は進入しているという点。岡山の雉プレスで前で奪うという事も大事であるが、背後やサイドのリスク管理や、1対1で負けない事が問われる試合になることが予想される。


PA内への進入傾向

岡山のPA内進入傾向(図=figure:SPORTERIA提供)


 3-4-2-1で、中央でのパスの崩しが出来ているのかと思ったが、軸となるのは、サイド攻撃であったことが、このデータからは分かる。しかし、正直な所、もう少し中で崩せているイメージがあっただけに、この現実的には、サイド攻撃が機能するか否かが、岡山の攻撃の生命線で、守備の安定(サイドの主導権を握ること)に繋がるということをこの図から改めて感じるところである。

 それと同時に、中で崩す力があれば、選手の総合力をより高める事ができるのではないかという希望と夢がある点であり、来季に向けて、ここをどう強化していくのかというのは、1つの課題となっていくポイントと言えそうである。


5、被PA内への進入傾向


被PA内への進入傾向

甲府の被PA内への進入傾向(図=figure:SPORTERIA提供)


 対戦相手あってのことであるが、回数こそ少ない物のサイド深くからクロスを何度か許している点と、ドリブルでの進入を許している。特に22佐野 航大のサイドから多く、岡山もそこから仕掛けて行きたい。一方で、仕掛ける選択肢が迫られる場面が多いということで、もしかすると、ゴール前を固める意識があるのか、それともドリブルに対して弱いのか。この部分は、23ヨルディ・バイスのフィードに16河野 諒祐が受けて、そこからどれだけクロスを入れる事ができるか。金沢戦では、SBがあまり上がらなかったことで、23ヨルディ・バイスのフィードはほぼなかったので、そこに注目してみていきたい所である。


被PA内への進入傾向

被PA内への進入傾向(図=figure:SPORTERIA提供)


 退場者が出た長崎戦と自分達のサッカーを見失い苦しんでいる仙台戦への完勝した勢いで、金沢に突入したが、背後とサイドのスペースを突かれて失点して、敗れたという事実が、このデータから思い出されるショッキングな被PA内進入のデータとなっている。監督コメントがデータにリンクしている前回のフォーカスもあり、まさか3試合の内容と結果を知っていると、そのまま結果を想起してしまうことになるとは、夢にも思わなかった。

 このデータからは、3-4-2-1の可能性を手放すショックやサイドの脇への弱さを補うチームとしての戦い方をする時間がないこと。色々な事実を受け入れて、前に進まないといけないということを改めて強く感じた。


6、プレビュー


 最後に紹介した図で、金沢戦のショックをまさか思い出すとは思わなかった。データは時には、勇気を貰えるが、時には、辛い敗戦を思い出す。正しく解釈することで、データは嘘をつかないという事を再認識できた。

 同じように積み重ねてきた勝ち点と経験は、チームのかけがえない財産にもなっている。ファジアーノ史上最高の戦力と強さを誇る岡山の強さを信じたいと思ったし、天皇杯決勝に駒を進めた甲府に勝つことで、ナンバー2への最後の挑戦、僅かな可能性を信じて、戦えると信じて、応援したいと思った。

 もしかすると、プレーオフに回る可能性が高くて、そこに意識を持って行く中で、ショックを和らげたい気持ちが、心の奥にあっても最後までもがく。そういった3試合にできるかどうか。3位以上を目指す上で、敗戦は許されない。今日も全力で、応援したい。


#我々はファジアーノ岡山なので絶対に諦めることはない


文章=杉野 雅昭(text=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様