今回は、レビューというよりは、面白いと思ったデータに対しての分析と推察をテーマにアウェイの磐田戦にフォーカスを当ててみたいと思います。


 まずは、必用最低限の基本スタッツとフォーメーション、ゴール期待値の基本情報を抑えておきたいと思います。


1、考察に向けての基本情報


基本スタッツ

基本スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


フォーメーション図(図=figure:杉野 雅昭作成)


ゴール期待値

ゴール期待値(図=figure:SPORTERIA提供)


 このデータをどう解釈するかですが、これから考察材料を探していきます。


2、軸と自由~手段と結果~


 まずは、この2つのデータをご覧ください。


パスソナー・パスネットワーク

磐田:パスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


パスソナー・パスネットワーク

岡山:パスソナー・パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


 皆さんは、このデータにどういった特徴があると考えられますか?


 私は、この項のタイトル通り、「選手別のパス数の差」と「ポジション別のパス数」、「パス数の幅」に着目しました。では、この3点、整理してみましょう。


『 磐田の特徴 』
①「特定」の選手のパス数が多くなっている。
②「特定」のポジションのパス数が多くなっている。
③全体のパス数の幅が大きい。


『 岡山の特徴 』
①どの選手もほぼパス数が同じ。
②ポジション別の差が少ない。
③全体のパス数の幅が小さい。


 こういった特徴があるように私は、データから読み取りましたが、この特徴の違いを皆さんならどう解釈されますか?


 私は、「軸」と「手段」の違いという発想から考察してみました。


『 磐田:個を軸にしたサッカー』 


 磐田は、スタメンメンバーであれば、ボランチの「23山本 康裕」とトップ下の「10山田 大記」のキーマンにパスを集めていく(集まる)ことで、組織として機能させていく。

 つまり、磐田が良い時間帯は、チームの核となる選手を経由した攻撃ができていています。


攻撃スタッツ - 遠藤 保仁

個人スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 途中交代であれば、遠藤もその選手の1人ですね。


 では、岡山はどうでしょうか?


『 岡山: 負担分散で自由なサッカー 』


 逆に、岡山は、特定の選手へのパスを集めることはせず、自然なパス交換で前に運んで行くこと。どの選手でも前に運べていた。それが、このデータの肝で、一部の選手に依存しないことで、流動性と自由を作りだせていたと言えそうです。


3、軸と自由の可視化~表裏一体~


 『 磐田:個を軸にしたサッカー』 と『 岡山: 負担分散で自由なサッカー 』は、実は可視化できたデータがありました。


 次の二つのデータをご覧ください。


時間帯別パスネットワーク図

磐田:時間帯別パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


時間帯別パスネットワーク図

岡山:時間帯別パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


 どういった点が、このデータから読み取れるでしょうか?


 私は、次のように読み取りました。


『 磐田:軸を中心とした円形 』


 まず、磐田ですが、「軸」となる選手がパスワークの中心に来るような図になっていますね。磐田の良い時間帯(前半0-15分、後半0-45分、)は、「軸」となる選手を中心に奇麗な円形になる傾向にあります。また、「軸」となる選手を中心とした円が広い方が、磐田としては良い時間帯です。


 逆に、チームとして悪かった時間帯(前半15-45分)は、パス数も少なく、円になることなく、小さく狭くまとまっています。


 磐田の「軸」を中心としたサッカーの「核」の1つは、「軸」と連結できる「円形」のパスワークであることが、可視化されています。


『岡山:自由に動きやすい距離感』


 岡山の良かった時間帯(前半15-45分、後半15-30分)は、適度の距離感を保ちコンパクトで多くの選手がパスワークに関与していることが分かります。「軸」を作らないことで「自由」にパスを繋いでいくことで、プレスや密集地から離れて行くので、移動する際に多くの選手が関与して行く中で、前に運んで行くことできていました。


 逆に悪かった時間帯(前半0-15分、後半0-15分、後半30-45分)は、磐田とは逆で、広くなりすぎて、分断されています。


 岡山の「流動性」と「自由」のサッカーの「核」の1つは、「距離感」であることがこのデータから可視化されています。


 なお、後半15-30分は、お互いに良さが出ていて、互角の時間帯であったと言えそうです。


4、総括~データの奥にあるのも~


 上記を踏まえた上で、ゴール期待を改めて見てみましょう。


ゴール期待値

ゴール期待値(図=figure:SPORTERIA提供)


 こうしてみると、それぞれのチームが良かった時間帯に比較的、ゴール期待値が伸びていますね。


 このゴール期待値は、シュート決まる確率を数値化したもので、数値が高いほど決まりやすい。つまり、岡山のトータルで見ると、決まる確率のシュートが多かったことを意味します。


 岡山のゲームだっと言えますが、50遠藤 保仁と42後藤 啓介が、流れを一変させた言えそうですね。


攻撃スタッツ - 後藤 啓介

42後藤 啓介:攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供


 非の打ちどころのないスタッツですね。今後どういった活躍をしていくのか非常に楽しみです。


5、アディショナルタイム~体感の可視化~


 SPORTERIAでのフォーカスは、データを軸に客観性を重視したレビューですが、noteでのフォーカスは、主観を客観的な評価に近づけることを重視したレビューです。


 この実際に完成した「主観」「体感」「感想」を可視化できるデータがあるか、探していき、考察していきたいと思います。

文章量も増えるので、覚悟して読み進め下さい…


①「22佐野と14田中のポジションについて」


「守り方としては、中盤のCHの22佐野 航大と14田中 雄大が、5バックのように大外に開いて(特に22佐野 航大)いた。」


ヒートマップ - 佐野 航大

22佐野 航大(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップ - 田中 雄大

14田中 雄大(図=figure:SPORTERIA提供)


 体感通り、22佐野 航大は、大外にしっかり張り付いていました。


 14田中 雄大は、22佐野 航大には「特に」がついていたとはいえ、大外は、言い過ぎであったかもしれませんが、大外にもポジションをとっています。

中~外を状況に応じて動いているが正確でしょう。


 では、この部分は、どうか?


「河野 諒祐がクロスをクリアというシーンを極力避けるために、22佐野 航大がライン際を塞ぐポジション取りをして、クロスを許さないという守り方をしている。」


左から


守備スタッツ - 鈴木 喜丈

43鈴木 喜丈:守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - ヨルディ バイス

23ヨルディ・バイス:守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - 柳 育崇

5柳 育崇:守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツ - 河野 諒祐

16河野 諒祐:守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 左サイドからの進入を巧く抑えて、右サイドマッチアップする機会(1対1などの対応の機会)を作れたいたことが分かるデータです。多くの方が指摘されている43鈴木 喜丈の攻撃参加などのポジションチェンジできたのもこういった守り方というところも大きいですね。


②トップ下の8ステファン・ムークの自由度


「トップ下の8ステファン・ムークに向けると、攻守に自由に動いていた。ボランチ位置に降りてきたり、サイドに流れたり、カウンターに関わったり、与えられたタスクの「自由度」は、極めて高かった。」


ヒートマップ - ステファン ムーク

8ステファン・ムーク(図=figure:SPORTERIA提供)


 確かに、縦横無尽に動いていて自由度が高いが、正確には、22佐野 航大のフォローに回る事が多かったことが分かる。


③6輪笠 祐士の役割の変化と負担


「守備でキーマンとなったのは、6輪笠 祐士だ。3-1-4-2の時は、守備のタスクを中心に縦パスを入れていく必要があったが、4-3-1-2であれば、横に22佐野 航大と14田中 雄大がいるので、横パスや細かいパス交換で前進できるようになった。」


「その結果、6輪笠 祐士の課題であった効果的な縦パスを出す優先度が下がり、無尽蔵のスタミナを活かした守備と足下の技術を活かしたパスワークに貢献するという武器を全面に出しやすくなった。」


パスソナー・パスネットワーク

岡山:パスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


岡山:パスソナー・パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


 22シーズンの41節秋田戦では、縦へパスの成功率は、0本であったが、今季は実は増えている。しかも、全方向に増えている。これは、実は、CBの位置に降りて生きていることも関係していることも頭に入れておかないといけない。


ヒートマップ - 輪笠 祐士

6輪笠 祐士:ヒートマップ-(図=figure:SPORTERIA提供)


 思っていた以上にDFラインに降りてくる回数が多い。


エリア間パス図

岡山:エリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)


 これが、数値の事実のようだ。縦パスは、数値以上中盤の中央から縦に出されていないことが分かる。中盤では斜めのパスが多く、縦パスは主にDFラインからと予想される。それでも効果的に散らせたという意味で、左側のパスが集まっていた所のパスは、主に6輪笠 祐士なのではないかと、ヒートマップから予想できますね。


 それにしてもパスコースの方向は、全体として斜めが多いですね、4-3-1-2のシステムに変更した変化でしょうね。


 もうちょっと、6輪笠 祐士を掘り下げて見ましょう。


攻撃スタッツ - 輪笠 祐士

6輪笠 祐士:攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


34輪笠 祐士(22シーズン):攻撃スタッツ


 この数値の違いをどう見るかだが、輪笠 祐士のパスの役割の比重が下がっていることを示すデータではないか。


 守備の負担の方もみていこう。


守備スタッツ - 輪笠 祐士

6輪笠 祐士:攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


34輪笠 祐士(22シーズン):守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 「追いかける守備」から「塞ぐ守備」へ変化していることが分かる。


追いかけてタックル、毀れ球に反応してセカンドボール回収の回数が多かったデータから、クリアやブロックの回数が増えている事が分かる。6輪笠 祐士の走力における負担へ間違いなく減っている。


>横に22佐野 航大と14田中 雄大がいるので、横パスや細かいパス交換で前進できるようになった。


 この部分は、パスの選択肢を増やすことによる攻撃における6輪笠 祐士の攻撃の負担軽減だけではなく、正確には、横に22佐野 航大や14田中 雄大がポジションを取っている事で、守備の負担が減っている事が分かる。


 ただ、その分フル出場もあった22佐野 航大や14田中 雄大も下がったっことを考えると、選手層も厚くなったこともあるが、結構運動量が22シーズンより増えている可能性はありますね。特に長い距離を走るプレー。守備をした後に長い距離を走るというプレーが、多かった気がします。


 まとめると、6輪笠 祐士の攻守における役割や走力における負担の軽減により、90分間通して高いパフォーマンスを発揮出来たことが分かるデータであったと言え、可視化の難度の高めであった。


 22佐野 航大と14田中 雄大の運動量に関しても機会があれば、考察してみたいですね。


④ボールの奪い処の設定


「守り方の大きな変化として、前から嵌めに行くというよりは、サイドに誘導して、囲い込む奪うという守り方のように映った。そして、意識の変化としては、「前から奪いきる意識」が強かった22シーズン。23シーズンは「引き込んで対応する意識」も高くなっている。」


ボールロスト位置

磐田:ボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)


東京V(22シーズン):ボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)


 プレースタイルの近そうな磐田と東京V(22シーズン42節)の対比してみると、22シーズンが、東京Vの自陣のボールロストが赤い位置があるのに対して、磐田のボールロストは少なくなっている。

 また、磐田の方がゴール前が赤くなっていることからクロスやラストパスなどを許していることから、22シーズン以上に攻撃を引き込んでいる事が分かる。


 そして、この部分に繋がって来る。


「基本的に、5柳 育崇と23ヨルディ・バイス、43鈴木 喜丈の3選手でクロスに対して跳ね返せるという事を前提とした守り方でもある。」


⑤磐田のキーマン1


「課題としては、10山田 大記に危険な所でシュートを打たれてしまったシーンがあったように、岡山の選手が、流動的に動くためにゴール前の密集地の手前、つまりペナルティエリア内の手前のバイタルエリアにパスを通された時に怖い形(人数が足りない・寄せまでの時間がある・スペースがある)を作られていた。」


攻撃スタッツ - 山田 大記

10山田 大記:攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ラストパスだけではなく、クロスを多く許しています。10山田 大記は、どこでボールを触っていたのか?


ヒートマップ - 山田 大記

10山田 大記:ヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


「岡山の選手が、流動的に動くためにゴール前の密集地の手前、つまりペナルティエリア内の手前のバイタルエリアにパスを通された時に怖い形(人数が足りない・寄せまでの時間がある・スペースがある)を作られていた。」


 ここは、体感通りでしたね。ここの所をどう抑えて行くのかというのは、岡山の今後のポイントとなりそうです。ただ、ほぼ90分間失点しなかった(90分前後に2失点した)通り、チームとして最後の所で対応できていたので、課題とまではいかなくて、戦う上の弱点である。そのため、多くのチームが、ここを突いてくることが考えられるので、ここで守り切れない時に、修正する手段を岡山としては、準備しておきたいですね。


⑥磐田のキーマン2


「50遠藤 保仁を中心に正確なクロスからチャンスを掴み、セットプレーの機会が磐田に多く訪れる様になった。ゲームメークで磐田の攻撃の形を作ると、スペースのあるサイドに流れて、クロスでアシストやクリアボールでのセットプレーの機会を増やしていく。シンプルだが、岡山にとっては実に嫌な攻撃の形であった。」


攻撃スタッツ - 遠藤 保仁

50遠藤 保仁:攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 45分間とは思えない高い攻撃スタッツを記録。特にラストパス4回(シュートに繋がったパスやクロスが4回)も許していて、その内1つのクロスは、アシストを記録。


ヒートマップ - 遠藤 保仁

50遠藤 保仁:ヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


 岡山がチームでセットする守備ゾーンの手前でのゲームメークやラストパスを入れていく事で、岡山としては守備に入る前にやられているイメージですね。実際に、50遠藤 保仁に厳しい守備対応は、ほぼなかったのではないかと。


 受ける守備時に自信がある分、個人に対して、強くいかない守り方を岡山はしているように映った。22シーズンに比べて、前に行く守備の位置が下がった点や奪う地点を低く設定したことで生まれた新たな弱点ですね。


 10山田 大記にエアポケットを使われていましたが、磐田に得点を許さなかったですが、50遠藤 保仁のワールドクラスの感覚や精度によって、岡山の守備の壁を上回られたという2失点であったと思います。


 岡山としては、守備のスタート位置に関してのオプションや守り方を変えるオプションを交代枠の5選手をどう使って行くのかというのも今後の注目ポイントと言えそうですね。


 もしかするとこの課題は、J1に上がった時に、大きな問題になる可能性もある。J2では、守れていたのにという感じで、42後藤 啓介は、確かに凄かったですけど、50遠藤 保仁が入ってからは、9杉本 健勇もゴールに迫っていましたし、やはり組織や個の力を無力化できる50遠藤 保仁が凄かった。


 ここもまた事実で、50遠藤 保仁 を経由した42後藤 啓介の得点はかなり多いのかもしれません。


 ただ、岡山と違って、50遠藤 保仁に対して、マンマークやプレスをかけていった時に、同じ形を作れるか。もしくは、他の選手から同じぐらいの精度の高いクロスや弱点を突くスルーパスを出せるのかという点で、同じような活躍をできるかどうかという部分は、今後の注目していきたい点ですね。


 50遠藤 保仁の凄さと42後藤 啓介についてと岡山の守り方について語って行く中で、今後の注目ポイントなどを語った所を、総括代わりとして、今回は〆させて下さい。


 最後までお読みいただき有難うございました。


文章・布陣図=杉野 雅昭(text・igure=Masaaki Sugino)、図(データ)=figure:SPORTERIA様


 もし良ければ、体感をメインとして、アディショナルタイムの検証に使った部分もあるこちらのレビューの方もよろしくお願いいたします。


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