先日「2020 J1第16節 横浜FC 3-2 名古屋 レビュー「ボール支配率」の巻」
https://sporteria.jp/blog/yagoto-10/6712326810756976641
でボール支配率についてレビューさせていただいた。少しながら続きをレビューしようと思う。
開幕から2020年9月9日までに行われた試合を対象に、各チームの平均ボール支配率を計算した。結果は下記の通りである。
ボール支配率が最も高いのは横浜FMで59.9%、60%に迫る数字である。逆に最も低いのは仙台の44.2%である。
ボール支配率をレビューする前に、横浜FMのボール支配率は他チームと比較して統計学的に高いかどうかを計算する必要がある。いくら横浜FMのボール支配率が高いといっても偶然の範囲内だったらレビューしてもあまり意味のない話になってしまう。
そこで横浜FMと2位の神戸の検定を行った。F検定後のt検定の結果は下記の通りになった。
【このような計算もExcelの基本機能にあるから楽にできる。マイクロソフト社さんありがとう。】黄色のセル、両側検定のP値は0.462であり、横浜FMのボール支配率59.9%と神戸のボール支配率58.1%が偶然差がついた確率は46.2%である。5%を超えたものは差がないとする統計学のルールから、横浜FMと神戸のボール支配率に差があるという仮説は棄却される。わかりやすく言えば横浜FMと神戸のボール支配率には差がない。
次に、同様に横浜FMと3位鹿島の検定を行った結果は下記の通りになった。
両側検定のP値は0.018である。横浜FMと鹿島のボール支配率が偶然差がついた確率は1.8%であり5%に満たないため、統計学のルールから5%水準で有意差が認められた。1位横浜FMと3位鹿島との間に有意差が認められたことから、4位以下も同様に有意差が認められることになる(面倒くさくて計算していないが)。よって1位横浜FMと2位神戸が他チームと比較して、ボール支配率が高いと言える。※厳密にいえば神戸と鹿島のP値は0.057。
この2チームを比較するとおもしろいものが見えてくる。同じボール支配率が高いチームと言っても中身は異なっている。
下記表は横浜FM、神戸のチャンスビルディングポイント(CBP)とスタッツである。J1リーグ18チーム中、上位2チーム以内の項目は赤色、下位2チーム以内の項目は緑色で示している。
ボール支配率1位の横浜FMは、そのボール支配率の優位性から、攻撃CBP、パスCBP、ドリブルCBP、パス、クロス、間接FK、CK、スローイン、ドリブル、オフサイド、30mライン進入、ペナルティエリア進入、走行距離、スプリント、攻撃回数において2位以内になっている。2位以内に入った項目の多くが攻撃に関しているものであり、ボール支配率が攻撃に対して有利に働いている。特に総走行距離とスプリントは18チーム中1位であり、走力を生かしたボール支配と言えよう。しかしチャンス構築率は低く、攻撃してもなかなかチャンスを構築できないていない。シュート、枠内シュートも少なくシュートCBPが低い。これらによりゴール期待値やゴールCBPが低い。総得点は少なくないことから、効率性が低いと言える。ちなみに守備力も高くはないという数字になっている。
ボール支配率2位の神戸は、ボール支配率は高いが横浜FMほど他の項目で優位には立っていない。上位2位内に入った項目はドリブルCBP、パスの2項目である。逆に下位2チームに入った項目は守備P、PKによるシュート、クリアの3項目である。ボール支配率の高さが有利に働いていない。チャンス構築率は横浜FMよりも高いが、攻撃回数は少ない。少ない攻撃の中、効率的にチャンスに結びつけていると推測できる。ちなみにチャンス構築率はリーグ3位である。ボール支配としては、総走行距離は短く、パスの回数(横浜FMよりは少ない)が多いことから、人よりもボールを動かすというボール支配であり、巷で言われているようにバルサ型(たぶん)のボール支配と言えよう。守備のCBPもスタッツも低く、守備力の弱さが露呈されている。
まとめ
横浜FM・・・・走力にものを言わせたボール支配
神戸・・・・・・・人よりもボールを動かすボール支配
この2チームは、ボール支配率は高いが、各項目の数字を見る限り、自分がイメージするポゼッション(あまりに主観的だが)とは違う気がする。
いつもながら、分析に使用するデータはFootball LABさんから拝借しました。https://www.football-lab.jp/
コメント(2)
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SPORTERIAスタッフ
2020/9/21 16:27
これはまた興味深い!
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ぴくしー
2020/11/9 23:06
SPORTERIAスタッフ様コメントありがとうございます。うまくまとめきれていませんので、またやってみます。
過去、ボール支配率が高いチームは攻撃回数が少ない(1回の攻撃時間が長いので)傾向があったのですが、横浜FMは攻撃回数が多いのが独特ですよね🧐
速く攻める⇒失ったら速く回収するの繰り返しで、スタッツや走行距離が上がっているという側面もある気がしました💡