筆者は名古屋グランパスのファンである。このゲームは横浜FCに負けてしまい、とても残念である。

今回は、この試合のレビューをするのではなく、J1リーグ全体のボール支配率に関してレビューさせていただく。


対象試合は、開幕から2020年9月9日までに行われた試合である。各チーム消化した試合に差があるため、節で区切らず試合開催日で区切った。


なお分析に使用するデータはFootball LABさんから拝借した。https://www.football-lab.jp/

分析する対象データはチャンスビルディングポイント(CBP)及びスタッツの各項目である。各項目の内容やチャンスビルディングポイント(CBP)の定義についてはFootball LABさんを参照していただきたい。


筆者は名古屋グランパスのファンであると前述したが、同時にFCバルセロナのファンでもある。バルサのポゼッションサッカーが好きで、マイボールを大切にする手法が自分の好みに合っている。バルサの書籍で「8割ボールを支配できれば、8割の試合に勝てる」との言葉を読んだことがある。詳細は避けるが、要はボール支配率を高めれば、試合に勝つ確率が高くなるということである。

そこで前述した対象試合のボール支配率とチャンスビルディングポイント(CBP)及びスタッツの各項目に対して相関分析を行った。

0.4以上の正の相関がある項目と相関係数は下表の通りである。

ボール支配率と最も相関が強いのはパスであり、相関係数は0.89である。次はパスCBPで0.79である。ボール支配率が高くなればパスが多くなるのはもっともな話だ。攻撃CBPの相関係数も0.78であり非常に相関が強くボール支配率が攻撃にも繋がっていくことがわかる。まあ攻撃するための手法としてボール支配率を高めるのだが・・・。30mライン進入も相関係数が0.77であり、ボール支配率を高めることで30mラインに進入していることが分かる。次からが問題だ。ペナルティエリア進入の相関係数は0.49であり、30mライン進入の相関係数0.77とは大きな隔たりがある。30mラインに進入できても、ペナルティエリアへの進入には壁があることが分かる。またクロスの相関係数は0.55であり、ペナルティエリア進入よりも相関係数が高い。このことからボール支配率を高めて30mラインに進入しても、ペナルティエリアに進入することが出来ずにクロスからの攻撃をしていることが分かる。30mラインからペナルティエリアへ進入する攻撃方法を確立することが課題である。


次は、もう少し相関が弱い項目を見ていこう。

ボール支配率とシュートの相関係数は0.35でそれほど強くない。ということからボールを支配してもシュートを打つところまで行けていないということである。またチャンス構築率の相関係数は0.30であり、ボール支配率を高めてもチャンスを構築できていないということになる。またゴール期待値の相関係数は0.18、攻撃回数の相関係数は0.17であり、弱い相関という結果であった。ボール支配率を高めても、上手く攻撃に結びついていないことがわかる。攻撃するためのボール支配や得点するためのボール支配が、ボールを支配するためのボール支配になっており、目的と手段が上手く確立されていないことがわかる。


以上を前置きにして、ボール支配率と勝点の相関係数を計算すると下記の通りになった。

相関係数は-0.28。負の関係であり、相関係数としても弱い。ということから、ボール支配率が低い方が勝点に結びつく傾向にあるが、係数の大きさからその傾向は弱いと言える。


ボール支配率と勝率をグラフ化すると下記の通りになる。

一目瞭然である。J1リーグにおいて、ボール支配率の高さは勝点奪取において有利な手法にはなっていない。


※今回の分析は、ポゼッション志向のチームだけでなく、ポゼッションを志向しないチームも含めてリーグ全体の傾向を分析した。ポゼッション志向のチームをもとに分析を進めれば、また違った面白い結果が出ると思う。