こんにちは、ユースケ@サガン鳥栖です。

率直に良い試合だったなと個人的には思っています。もちろん勝ち負けで評価すれば勝ててないので、そこは評価が分かれるところではありますが、内容的には狙い通りチャンスを生み出している場面も多く良かったんではないかと。

今回はそれが「どう良かったのか」をレビューしていきたいと思います。

それでは早速行ってみましょう!まずはスタメンです。

フォーメーション図フォーメーション図

ホーム鳥栖は飯野⇒小泉の変更のみ。他は前節清水戦と同じです。対するアウェイ大分は2-0で勝利した前節湘南戦と同じメンバーです。

■なぜ鳥栖は3バックに苦戦すると言われているのか?

3バック相手に苦戦すると言われる鳥栖ですが、厳密に言うと3バックだから苦戦するというわけではありません。鳥栖にとって一番やりにくい状況は、5レーンに選手を並べられてゴール付近のスペースを埋められている状況です。

ピッチの横幅を5人でカバーするので横へのスライドをあまりしなくて済み陣形が崩れにくいですしスペースが生まれません。ディフェンス一人当たりの受け持つゾーンが少なく済むので、そもそものスペース自体も凄く狭くなります。

要は狭い局面で1対1で勝たなくてはならない場面が多くなるということです。

こういう状況を打破するのに有効な選手として、例えば

①サイドからドリブルを仕掛け一人でどんどん剥がして守備のズレを生み出せる選手

②空中戦で中央のCBに競り勝ってゴールを決めれる選手

③競り合いの必要がないくらいピンポイントに狭いスペースへ正確なクロスを送れる選手

④狭いスペースでも速くて正確なプレーを発揮できる選手(何人かいれば細かいダイレクトパスで侵入していける)

⑤FKやCKでゴールを奪うための優秀なキッカー

これらの選手は凄くスペシャルな存在でどこのチームにもいるわけではありません。しかし安定して上位に居続けるチームには必ずこういった選手たちがいます。

今期の鳥栖ならば④なんかはホーム名古屋戦で狭いスペースをダイレクトパスで崩しゴールを奪いましたし、⑤はエドゥのおかげで2回勝ちを拾いました。ですが、鳥栖の選手たちが明確に突出してるかと言われればそこまでではないですよね。以前の鳥栖ならこういった選手はもっと少なかったです。

ですので、ひとたびゴール前に5人並べられてしまうと、スペシャルな選手のいない鳥栖はその状況を打破するのが難しいという事です。

3バックだと両WBが下がるだけで容易にディフェンスラインに5人用意できるので、相対的に3バックが苦手なイメージが付いてるんだと思われます。

4バックでも4人+SHが下がったりボランチが1人下がることで5人用意できますから同じ状況を作ることができます。

例えば福岡なんかはこの4バックで5人用意するやり方で挑んできました。結果中々崩すことができず苦戦しホームでの試合は0-0のスコアレスドローに終わりました。

だから「3バックが苦手」というよりも、「素早く5レーンを埋めてブロックを敷いてくる相手を崩す術をあまり持っていない」というのが個人的な考えです。

■ではこの試合はどうやってチャンスを生み出したのか?

ではどうやってサガン鳥栖はこの大分戦、チャンスを生み出していたのでしょうか?大きく2つに分けてお伝えしたいと思います。

①大分のボランチが前へ出てくるのを利用してその裏のスペースを使う

この試合の大分は鳥栖のビルドアップをワントップとツーシャドー、ダブルボランチの5人で制限をかけてきました。特に仙頭や樋口に対してはかなり早めにボランチがケアしてきます。

大分の両ボランチが仙頭と樋口にゲームを作らせないためにかなり前に出てくるので、当然上の画像の様に3バックとボランチの間にスペースが出来ます。(黒の四角の部分)

本来ならばボランチとの距離が離れないように3バックもラインアップすればこのスペースを消せるのですが、そこは鳥栖が早いタイミングでロングボールを3バックの脇や裏へ出してくるので、画像の様にプレスがかからない状況でエドゥがボールを持っているとラインを上げられません。ましてそのロングボールで一度小屋松にやられていますからね。(ハンドでノーゴールでしたが)

DFラインにとって裏を取られる恐怖感というのは確実に存在しているので、こうしてロングボールで布石を打っておくと相手DFラインを牽制できるという訳です。

で、そうやって空けたスペースを中野嘉と白崎が上手く利用することが出来ていました。

例えば41分にはこのスペースで中野嘉がフリーで前を向いた状態で受けて最前線へ飛び出した白崎へスルーパス。GKとの1対1を作りました。他にも普段よりミドルシュートの数が多かったのもここのスペースを上手く使えていたのが理由ですね。

先日アウェイで対戦した仙台も3バックでしたが、仙台戦はここにスペースが全くありませんでしたよね。仙台は早めに5バックでブロックを敷いてその前のスペースもボランチが完全に埋めていました。

同じ3バック、かつフォーメーションも3-4-2-1で同じ。ですが仙台と大分ではコンセプトが全く違います。この辺も3バックが苦手と一概には言えない理由ですね。

仙台のように引かれてしまうとスペースが無くなってしまってどうにも崩すことが出来ませんが、大分のようにボランチが前に出てきてくれればその後ろにスペースが出来てここを使えば今の鳥栖ならチャンスも作れます。

②WBを吊り出してその裏のスペースへ

これは3バック攻略としては割とベーシックですが、WBを吊り出してその裏のスペースを狙う方法です。

画像は44分のシーン。白崎が11番の下田と2番の香川の中間ポジションでソッコからのボールを引き出します。

下田は樋口をケアしていたので白崎へのアプローチが遅れます。香川は小泉を見ていたので下田に任せるべきか自分でマークを捨てて行くべきか一瞬の迷いが見られました。

白崎はそういう絶妙な立ち位置で時間を作りボールを受けたので、容易に前を向くことができます。その白崎からWBの裏のスペースに走り込んだ小屋松にスルーパスが出てサイド深くまで侵入することが出来ました。

同じようなシーンは左サイドにもありました。

65分の大畑から酒井へボールが送られた場面。

高い位置を取っている大畑にエドゥからボールが入ります。本来であれば15番の小出が蓋をしに行くところですが、中野嘉が先ほどの白崎同様良い立ち位置を取っているため小出には迷いが生じます。

その瞬間を突いてWBの裏へスルーパス。酒井が走り込みます。この後酒井がクロスを送ってニアに走り込んだ小屋松がネットを揺らしますが、残念ながらこの酒井の飛び出しがオフサイドとなり小屋松のゴールとはなりませんでした。

■キーマンだった白崎と中野嘉

この試合で攻撃のキーマンになっていたのが白崎と中野嘉です。どちらもインサイドレーンでボランチとWB、CBで作られる三角形の重心の真ん中に立ち位置を取ります。

この立ち位置が非常に重要で、この三角形を構成する大分の選手たちは見るべき相手(点線で繋いだ相手。CBはツートップ)を持っています。

ですので、こういったファジーなポジションを取られるとボールが入った時に誰が行くべきかの判断を常に迫られます。この判断が上手くいってマークの受け渡しが出来ていれば大きな問題にはなりませんが、90分も試合があれば状況によって上手く行かないときもあります。

このように白崎と中野嘉が絶妙な立ち位置を取ることで大分の守備がエラーを起こすきっかけを与え、多くのシュートシーンを生み出すことができました。

出来るだけこの二人に良い状態でボールを供給するために、周りの選手はボールを回して相手を動かしたり立ち位置で注意をひいたりする訳ですね。

結果的にゴールは生まれませんでしたが、中野嘉は決まっていればアシストになるキーパスがたくさんありましたし、白崎はゴールまで後一歩のところまで迫りました。

鳥栖は左でゲームを作ることが多いので、フィニッシャーが右サイドの選手になることが相対的に多くなります。そういった意味で白崎には凄く期待しています。

このポジションの前任である樋口よりも白崎の方がFW的な要素も強くゴール前へ入っていくタイミングも良いですし、上背も樋口よりあるので、こないだのゴールのように空中戦もある程度期待できます。

残りあと9試合となりましたが今後も白崎と中野嘉の動きや立ち位置に注目したいですね。

【まとめ】決定力が無いのであればチャンスの数か質を上げるしかない

最後のゴールのところは「水もの」なので入る時もあれば入らない時も当然あります。

仙台戦のように内容は良くなくてもFK一発で勝ててしまう試合もありますし、この大分戦のように内容が良くても勝てない試合もあります。

これから急に個人の決定力が上がったりスキルが爆発的に伸びるわけではないので、現状ではより多くのチャンスを作るかチャンスの質を上げるかしかありません。

強豪チームのようにスペシャルな選手がいれば、力技で理不尽にゴールを奪う事もできるので羨ましい限りですが、鳥栖のように個々人では少しずつ劣っていても、全員のハードワークで時に強豪をなぎ倒してしまう様はたまらないですよね。

これこそがサガン鳥栖のチームアイデンティティであり、醍醐味ではないでしょうか?

今期、快進撃を続けているのは疑いようのない事実ですが、かと言って別に常勝チームになった訳では無いですからね。結果に一喜一憂することなくこれからチームがどうなっていくのか見守っていきたいです。

それではまた。