2023 J2第30節 ジュビロ磐田は町田に 1 - 2で敗戦


こんにちは、ムファサです。


11試合負けなし(8勝3分)で迎えた首位町田との天王山。

今節は私用で現地観戦もリアルタイム観戦もできず、速報なしで追っかけ再生での観戦レビューです。



まず、大事な1戦を前にした両チームの状況を確認しておきましょう。


6月3日から負けなしのジュビロ磐田は、複数得点7試合で得点数は清水と並んでリーグトップに。

クリーンシートは3試合にとどまっているが、2失点は1試合のみと、勝負強さが出てきている。


これに対し、町田は、同じ期間で見ると6勝3分1敗(秋田戦は延期)と着実に勝ち点を積んでいるが、

クリーンシートは2試合にとどまり、複数失点が3試合と、前半に比べて攻略され始めたか。

しかし、複数得点が7試合で無得点の試合は0(シーズン通してもわずか3試合)と、堅守速攻が型にハマっている。

シーズン序盤から浸透しているチーム戦術の基盤である走力が落ちてこないのは、流石の鍛え方だ。


では、試合を振り返ります。



スターティングイレブン




ボランチに力也に代わってドゥドゥがスタートから入り、左MFに古川が抜擢されました。

単純なクロスでは跳ね返されてしまう相手に対し、敵陣深くまで入り込み、好調の前線3人で仕留めるのが狙いか。

古川がワイドに張る分、松原が中に入るシーンが増えるため、グラッサが左サイドと中央のケアのバランスをどう取るかが鍵になります。



ゴール期待値と得点推移




前半45分:PA内でDFを背に藤尾がボールを収めると、両CBの間を強引に割って入り、海音が堪らずファール。PKをエリキが沈める。

後半11分:DFラインの背後にでたパスに藤尾が反応。後方から猛追したグラッサのチャージが間に合わず、PA内で倒してしまう。藤尾が自らPKを決めて追加点。

後半49分:三浦からのフィードを松原がヘディングでゴール前へ繋ぐと、後藤が競り合いを制す。ゴール前に走り込んできた松原が、後藤が落としたボールをハーフボレーでGKの上を抜き、一矢報いる。



試合展開


失点して相手を調子に乗らせたくない両チームは、リスクを控えての攻撃となる。

シンプルなパス回しから相手の背後を狙い、エリキや藤尾の個を活かしてゴールに迫る町田と、ビルドアップでサイドに活路を見出し、中央で仕留めようとするジュビロ磐田。


ジュビロ磐田が右サイドを突破し、松本からゴール前に走り込んだ古川へのグランダーはあと一歩届かなかったシーンを含め、決定的なシーンに至ることが少なかった。その為、両チームともにチャレンジ数に対して期待値は伸びていない。


このままスコアレスで折り返すかと思われたが、町田が再三狙っていたジュビロ磐田のポジションの穴をつく。

松原の裏のスペースをケアするグラッサを釣り出し、中央の守備力を削るために、ゴールを背にしてコーナーフラッグに向かって動く相手が多かったが、藤尾はトラップ後、反転して勝負を仕掛けた。

先に対応していた海音が内側を向かせてしまうと、グラッサのブロックを乗り越える力強さで藤尾が前に進む。

グラッサとの間を通過された海音は反転が間に合わず、直前まで藤尾の体をブロックしていた腕がゴール方向へ進む藤尾を倒してしまいPKを献上。

エリキが冷静にこれを沈めて、町田が先制点を挙げる。


後半立ち上がり、メンバー交代はなく、前半と変わらず両チームの戦い方でスタートする。

ジュビロ磐田は、前半からシュートタッチが好調と思われたドゥドゥを積極的に使っていくが、先制している町田はバスケスバイロンらが攻め上がりを控え、中央を固めていく。

無理して攻める必要のない町田が、DFラインを広くとってボールを回すと、ハイプレスが中途半端になり手薄になったジュビロ磐田の裏へロングボールを供給。

松原の裏のスペースに立ち、グラッサが寄ってきたところで背後をついたボールに藤尾が追いつくと、猛追してきたグラッサが追いつく直前に内側に寄ることで適切なチャージができないようコースを埋めたのがうまかった。

そのままGKと1対1という場面だったが追いついたグラッサが藤尾を倒したという判定となり、PKを献上。

不用意に手を伸ばしたり、スライディングしたのではないため、決定機の阻止ではあるがイエロー判定に留まっており、グラッサの優秀さが出ている。

PKは藤尾が難なく決めて2点差に。


反撃にでたいジュビロ磐田だったが、中央でのプレスをかわし、サイドで優位を作ろうとしてきたが、中距離のパスがなかなか出せず、守備に重きを置いた町田からチャンスを作れない。

こういう展開になると、力也、遠藤、針谷といったワンタッチで前線に鋭いパスを出せる選手がボランチにほしいが、今節はメンバー外。


63分に松本と古川に代えて藤川と後藤、72分に山本と金子に代えて大森と鹿沼の投入により、サイドから中央を主戦場とするメンバーで中盤の距離を短く保ち、狭いエリアでの質的優位で打開を試みる。

しかし、守りに入った町田の守備ブロックは固く、フレッシュな選手の投入で運動量で勝ることでチャンスを作らせない。また、2点リードながらFWデュークを投入し、ハイプレスとセットプレーへの備えと整えつつ、ショートカウンターを匂わせることでジュビロ磐田のバックラインを上げさせない。


86分、疲れのみえたジャーメインに代わり小川を投入し、松原を一列前にあげたジュビロ磐田。

左サイドの高さで優位に立ったジュビロ磐田は、三浦からのボールを松原がつなぐと、後藤が中央で二度競り勝ち、ゴール前まで走り込んだ松原がこのボールをハーフボレーで押し込んだ。


ようやく1点を返したジュビロ磐田だったが、リードしている展開での試合運びに長ける町田が逃げ切った。





■ドゥドゥとの関係性

左MFにドゥドゥが入っている場合、松原はサイドをオーバーラップするため、金子やジャーメインが中央で関係性を作りやすい。その流れから右サイドにスペースができた際、2枚いるボランチのどちらかを経由して松本や優斗で打開し、中央で仕留めることができる。

これに対し、今節のスタートと同様、途中からの交代でドゥドゥがボランチに入った場合、左MFにいるのが古川かその他のアタッカーかによって松原はポジションを変える必要がある。また、ドゥドゥも前線に絡むことが多く、これにより後方でバランスをとるグラッサと海音、優斗、もう1枚のボランチのポジショニングが正しくできているかが鍵になる。守備のミスは致命的だが、優斗の意識が後ろ向きになると右サイドの攻撃が機能しない。


■異色の経歴である両監督

スタメン11人中8人が新規加入選手となった町田と、補強禁止処分を受けたジュビロ磐田との戦いは、結果を見れば町田に軍配が上がった。

それぞれ置かれている状況が違う中で、今季はJ1昇格が最大の目標となる両チームの監督の手腕に、次節以降も注目したい。


町田の黒田監督は周知の通り、常勝軍団の青森山田を長く牽引してきた。

リーグ戦ももちろん戦ってきてはいるが、何と言っても負けたら終わりの高校選手権のトーナメント。

3年生は引退となり、負けた次の日から新チームを再構築する環境の中で培われたチーム作りの経験は、時間内に勝ち切ること、逃げ切ることに必要な補強や試合中の判断材料に活かされていると思われる。


一方、ジュビロ磐田の横内監督は、フル代表の森保監督のもとで代表コーチを務めていた。

個々にレベルの高い選手たちとのコミュニケーションを多くとってきており、プレッシャーとの向き合い方やモチベーション調整など、メンタル面で他の監督にはできないアプローチをしていると思われる。

与えられた選手層から最適なチームを作るのは、日本人から日本代表を参考するのと近しく、現有戦力の最大値を引き出していってほしい。



今日のMOM


25 藤尾翔太



止める蹴るといった基本技術と、走り負けないというフィジカルを活かした戦術の中、エリキと共に個で局面を打開した。

抜け出した後のボールの収め方や、マッチアップした相手との駆け引きなど、ゴール前でDFが嫌がるプレーを見せた。

獲得した2回のPKは、いずれもそのまま得点できる決定機だったため、倒されずにシュートを打ち切る強さが出てくれば、1人で局面を打開する点取り屋に育つ可能性を秘めている。



今日のMOM(ジュビロ磐田)


4 松原后



90分間、町田にも走り負けることなく、攻守に奮闘した。

古川との関係性で左サイドを崩せず、クロス供給も0と、悔しい結果になったが、終了間際での1点は、敗戦のイメージを和らげ、次節への奮起に繋がる気持ちの強さをチーム内外に示した。

同じく最後まで走り抜き、何度も町田ゴールに迫ったドゥドゥと選考に迷ったが、それだけ最後の1プレーは大きな印象となった。


他チームと勝ち点で並んだ場合の得失点差争い(および混戦時の条件戦)に繋がることも?



サッカー王国のプライドにかけて


この天王山を制し、頭ひとつ抜け出した状態になった町田だが、次節は3位につける清水戦と正念場が続く。

ジュビロ磐田の優勝の可能性を濃くする為には清水に勝ってもらいたいが、3位で勝ち点2差に迫られており、その分、自動昇格圏争いが厳しくなる。

得点では並んでいるものの、得失点差では大きく差を付けられており、清水に勢い付かれるのも困ってしまう状況となった。


だからこそ、他の試合に左右されず、しっかりと自分たちの試合にフォーカスし、一戦一戦を大切にして勝ち点を再度積み重ね、3位以下を突き放していきたい。

上位チームとの直接対決がまだまだ残っている。久しぶりの敗戦を引きずらず、うまく切り替えて次節以降に備えたい。