勝利は最重要も内容は辛勝「期待されるサイド攻撃と中央攻撃の組み合わせ」


柏レイソルは、ホームG大阪戦に続き苦手アウェイ大分戦も勝利し連勝を飾った。柏の現順位をふまえると勝ち点3を獲得できたことは最高の結果ではあるが、試合としては前節より難しい内容となったことを数字を比較しながら考えてみる。

難しくなった理由は2つ

1つはメンバーの変更だ。前節から3人が変更となり、クリスティアーノとマテウスサヴィオ、大南が理由は不明であるがスタメンから外れた。特にG大阪戦で運動量と共に前線で存在感を見せていたブラジル人2人の不在は、柏の攻撃のクオリティや江坂にかかる負担に大きく影響を与えたと考える。

<今節と前節のスタメン>

フォーメーション図フォーメーション図

2つめは、お互い3-4-2-1のミラーゲームになった上で、大分が柏の布陣に対し(前節の柏勝利から)より警戒度を増して本節に臨んできたことが試合を難しくしたと考える。

数字上でも、同じ布陣で構える大分に対して柏のパス成功数は前節より約30本減り(353→326)、スプリント回数は約20本(225→202)減ることになった。個人の数字を見ると右サイド北爪は前節よりスプリント回数を伸ばしている。これは中央から右サイドに流れるクリスティアーノが不在だったため北爪が前のスペースを使った結果になるが、その他の選手は大分の布陣と”がっぷり四つ”状態となりスプリント回数は前節から減っている。同ポジションで比較すると神谷とマテウスサヴィオの差が顕著になり(神谷が走らない選手というわけではなく)スペースとスプリントの機会をチーム全体でつくれなかったことがわかる。

<今節と前節のスタッツ>

基本スタッツ 基本スタッツ

<今節と前節の走行距離・スプリント回数>

走行距離・スプリント回数走行距離・スプリント回数

更に、パスソナー・パスネットワークから見ると、前節に躍動していた両ウィングバックの三丸と北爪へ向けた中盤からのパス成功数が減っている(中盤の選手から三丸と北爪に向かう矢印がない)ことがわかり、中盤から両サイドへ効果的にパスが供給されなかったことがわかる。

<今節と前節のパスソナー・パスネットワーク>

パスソナー・パスネットワークパスソナー・パスネットワーク

その結果、三丸と北爪の両ウィングバックのラストパスとクロスも前節から数を減らし、ウィングバックを使った大きなチャンスは64分に北爪のクロスから呉屋が合わせた場面以外にみられなかった。

【三丸】ラストパス数:2→0、クロス数:5→1 

【北爪】ラストパス数:2→1、クロス数:10→3

<今節と前節の個人スタッツ‐攻撃(三丸)>

攻撃スタッツ - 三丸 拡攻撃スタッツ - 三丸 拡

<今節と前節の個人スタッツ‐攻撃(北爪)>

攻撃スタッツ - 北爪 健吾攻撃スタッツ - 北爪 健吾

また、マテウスサヴィオ不在により相手チームの警戒が江坂に集中し、江坂からのパス成功数、特に北爪へのパスが減っている(江坂から北爪への矢印がなくなっている)のは、スタメン変更の影響といえるだろう。

<今節と前節の個人スタッツ‐攻撃(江坂)>

攻撃スタッツ - 江坂 任攻撃スタッツ - 江坂 任


次節以降も相手チームは両サイドと江坂を警戒してくることが想定される。柏としては、前半21分の仲間の縦パスを呉屋が落とし椎橋がシュートまで持ち込んだ場面や、51分にPKを獲得した仲間のパスから神谷がエリア内でシュートした場面の様に”中央への縦パスを入れること”、”ペナルティエリアへ多くの選手が進入すること”、”江坂以外からもチャンスをつくること”が鍵となる。

G大阪戦で見せた”両サイドの躍動”と大分戦で数は少なくともチャンスとなった”中央への攻撃のくさび”を組み合わせ相手守備を揺さぶることできれば、ゴールチャンスを増やすことにつながるだろう。