2月23日、城福体制3年目のサンフレッチェ広島はホームで鹿島アントラーズとの開幕戦を迎えました。

4ヶ月以上も前の試合なので、フルタイムの映像を何度か見返して試合内容を確認。広島視点でゴールシーンを中心に振り返りたいと思います。

   フォーメーション図 フォーメーション図

広島のフォーメーションは3-4-2-1。

スタメンの11人全員が昨季も広島でプレーした選手という布陣になりました。


試合開始直後に訪れたピンチ

立ち上がり、両チームともに相手のボールホルダーに対して厳しくプレスをかけます。攻守が目まぐるしく入れ替わる中、3分に広島は大きなピンチを迎えます。

センターサークルでパスを受けた土居聖真が前を向きエヴェラウドにパス。この時、プレスをかけようとした佐々木翔(左上図の19番)が足を滑らせ体勢を崩してしまいます。ノンプレッシャーのエヴェラウド(左上図の9番)は佐々木の背後に走り込むファンアラーノ(左上図の7番)へスルーパス。パスを受けたファンアラーノのシュートはゴール左ポストに直撃。こぼれ球に反応した和泉竜司のシュートは右ポストに当たりゴールとはなりませんでした。


この場面、最終的にペナルティエリア内に鹿島の選手が3人いたのに対し広島はキーパーの大迫敬介を含め7人の選手がいました(右上図)。荒木隼人がファンアラーノとの間合いを詰めシュートコースを限定し、体勢を立て直した佐々木やボランチの川辺駿らが全力でゴール前に戻り中央のスペースを埋める。城福監督が植えつけてきた高い守備意識が感じられる局面でした。


ショートカウンターによる先制

鹿島の厳しいプレスに苦しめられ、思うようにビルドアップできずにいた広島でしたが、20分にショートカウンターから先制点をあげます。

後ろ向きでボールを受けた三竿健斗(上図の20番)に対し、レアンドロペレイラが背後からプレスをかけボールを奪います。ペレイラは素早くゴール前でフリーのドウグラスヴィエイラにパス。ヴィエイラはワンタッチでシュートを放ち、広島が先制しました。


1トップ2シャドーの3人が積極的にプレスをかけ、その動きに連動するようにダブルボランチ、両ウイングバックの4人がラインをあげスペースを消す。広島が今季のキャンプから取り組んできたショートカウンターが見事に決まった瞬間でした。


ロングパス2本から生まれた追加点

25分、広島が追加点を奪います。

鹿島のパスミスを回収したハイネルからパスを受けた大迫がハーフウェーライン付近の森島司へロングパス。森島はトラップして前を向くと、右サイドを走るヴィエイラへロングパスを送ります。ヴィエイラは敵陣深くの右サイドから中央へグラウンダーのクロス。ニアサイドに走り込んだ川辺がわずかに触り、中央に流れたボールをペレイラが押し込みました。


大迫・森島はプレスをかけられながらも正確なロングパスを供給し、2本のロングパスで70m以上前にボールを運びました。大迫のロングパスからペレイラのシュートに至るまで広島の5選手がボールに触りましたが、キーマンは川辺だったように思います。

    攻撃スタッツ - 川辺 駿 ヒートマップ - 川辺 駿

大迫のキック時には自陣ペナルティエリア付近にいた川辺ですが、森島が前を向いた瞬間にスピードを上げて前線へ走り出し、最終的には相手のゴールエリアへ飛び込んでいます。ニアサイドに走り込んだ川辺にパスが送られたことによって、ペレイラをマークしていた関川郁万はニアサイドに釣り出され、ペレイラはフリーでシュートを打つことが可能になりました。

川辺・大迫・森島という20代前半の若手が生み出したゴールでした。


ワンタッチパスによる崩し

前半は鹿島のプレスに苦しみ、思うようにビルドアップできませんでしたが、後半は2-0という状況もあってかパスを繋いで攻め込む場面が多く見られました。

49分には自陣でボールを持ち運ぶ野上結貴からハイネル→野上→川辺→ハイネルと3本のワンタッチパスで相手のペナルティエリア付近まで攻め込みます。

59分にはハーフウェーライン付近でパスを受けた野上から青山→川辺へとワンタッチパス2本を通し、相手陣地に侵入。川辺はレオシルバを引き付けて右のタッチライン沿いにいるヴィエイラへパスを送り、ヴィエイラはワンタッチでインナーラップする野上へパスを出しました。野上へのパスは通らなかったものの、ワンタッチパスを効果的に使って鹿島の守備を崩していきました。

80分、前線からプレスをかけてくる鹿島に対しても佐々木→森島→浅野雄也(途中出場)、浅野→森島→青山敏弘と、森島による2度のワンタッチパスでプレスを掻い潜ります。


カウンターだけでなく、ショートパスによる攻撃も広島の強みであると感じました。


体を張った守備

守備では鹿島のシュートに対し体を投げ出してブロックしにいく場面が多く見られました。

61分のレオシルバのシュートシーンでは、川辺・野上・佐々木の3人がシュートブロックへ。63分のエヴェラウドのシュートは川辺が、92分のアラーノのシュートは荒木が体を張ってブロックします。

92分のシーンでは荒木・川辺・東・松本大弥(途中出場)の4人がブロックに入っており、無失点で終えたいという強い気持ちを感じました。


ダメ押しのショートカウンター

2-0で迎えた84分、1トップ2シャドーの3人で3点目を奪います。

途中から右シャドーに入った東俊希がセンターサークル付近で相手のボールを突くと、ボールがペレイラの足元へ。ペレイラは左シャドーの森島にパスを送り、ドリブルで運んだ森島がニアサイドの上に蹴り込みゴールネットを揺らしました。

ペレイラがパスを出す直前、広島の3人の前には鹿島のセンターバック2人とゴールキーパーしかいませんでした。1トップ2シャドーの3人が近い距離感でプレスをかけ、高い位置でボールを奪ったことで決定的なチャンスを作り出し、ダメ押しの3点目につながったと思います。


総括

基本スタッツ

広島としては3得点、無失点と最高の開幕戦となりました。

攻撃では新たな武器であるショートカウンターが見事にハマり、守備では城福監督が2年間で積み上げた「靴1足分の寄せ」をチーム全員が体現していました。

広島ファンとしては今季が楽しみになる開幕戦でした。


4ヶ月半ぶりの第2節はヴィッセル神戸と対戦。

勝利の喜びを味わえますように。