J2第4節、レノファ山口はアウェーでジュビロ磐田と対戦しました。
磐田は前節からスタメンを1人変更し、4-4-2のフォーメーション。一方の山口は前節から3人を変更して、フォーメーションは4-3-3となりました。
磐田に押される立ち上がり
開始早々、磐田がフリーキックからチャンスを迎えます。山本康裕がファーサイドに蹴り込んだボールに伊藤洋輝が飛び込んでシュート。シュートはポストを直撃し、こぼれ球に小川航基が詰めましたがゴールとはならず。
ポストに助けられた山口でしたが、その後も磐田の攻撃に苦しめられます。8分、山本のクロスからゴール前中央で小川航基にフリーでシュートを打たせてしまいます。13分には斜めの動きで楠本卓海の背後へ抜け出した小川航基にパスが通りピンチに。菊地光将がスライディングでシュートをブロックしてゴールとはなりませんでしたが、得点が生まれてもおかしくない場面でした。17分にもペナルティエリア内で松本昌也にクロスバー直撃のシュートを打たれるなど、磐田に攻め込まれるシーンが多かった序盤でした。
山口のボール保持
磐田の猛攻をなんとか無失点でしのいだ山口は次第にボールを支配していきました。センターバックとボランチを中心にショートパスを繋いで、磐田の守備を崩そうと試みます。しかし、磐田の組織的な守備を前に中々縦パスを入れることができず、横パスや後ろ向きのパスが多くなってしまいチャンスを作り出せずにいました。
そんな中、ウイングへのサイドを変えるボールを利用して磐田のペナルティエリアに進入していきました。23分、自陣中央でボールを受けた高宇洋が左サイドのタッチライン近くにいる高井和馬(上図の11番)へパスを送ります。磐田守備陣が左サイドによったところで、高井は右サイドでフリーになっている森晃太(上図の19番)へロングパスを供給し、森はドリブルでペナルティエリアに進入しました。26分にはファウル後のリスタートから再び高が左サイドの高井へロングパスを通します。高井はドリブルで中央へ切り込んだ後、ペナルティエリア右サイドの森へパスを送り、最後は高がシュートを放ちました。
また、30分以降には縦パスからチャンスを作り出す場面も見られるようになりました。35分、相手のロングボールをマイボールにしたところから、高が素早く高井和馬にパスを送り、高井→池上丈二→イウリとワンタッチでパスを繋いでイウリのシュートにつなげました。さらに、39分には安在和樹の縦パスを高井がヒールで池上に落とし、池上がダイレクトで中央のイウリへクロスを送る場面もありました。
山口のウイングは逆サイドにボールがある場合でもタッチライン沿いにポジションをとっていることが多く、ロングパスによるサイドチェンジは山口の戦術だと思われます。この試合、高や高井のロングパスの精度は高く、ピッチを広く使った攻撃はできていたため、サイドチェンジ後のドリブルやクロスのアイディア次第では得点に結びついたのではないでしょうか。また、縦パスからワンタッチでつないでゴールへ迫る場面では、前線の選手間の距離が近く、お互いに意思疎通ができていたように感じました。
終盤のコーナーキック
前半終了が近づいた41分に、磐田のコーナーキックから試合が動きます。
山本が蹴ったボールがニアサイドでクリアしようと跳んだイウリの頭を超えて、佐藤健太郎の足に当たります。こぼれたボールにルキアンが反応してボレーを放ち、ゴールへ流し込みました。セットプレーからホームの磐田が先制する展開となりました。
山口は2試合続けて前半40分以降にコーナーキックから先制されてしまいました。前節の失点もニアサイドのイウリの頭を超えたボールを押し込まれる形であり、同じような失点を繰り返すことになってしまいます。前半途中から山口が主導権を握りつつあったため、山口としては悔やまれる1点になりました。
カウンターから追加点
後半、山口は得点をとるために前がかりになります。守備時は前線から相手にプレスをかけてロングボールを蹴らせ、攻撃ではサイドバックやボランチも含め人数をかけて攻めていきました。しかし、山口が前がかりになったことで後ろにはスペースができ、カウンターからそのスペースを使われてしまいます。
60分、敵陣左サイド深くまで攻め込んだ山口は安在や佐藤らがパスを繋ぎますが、佐藤のパスがずれ磐田にボールを渡してしまいます。自陣ペナルティエリア内でボールを持った山本は素早く前線の小川航基へパスを送り、小川航基から左サイドのルキアンへ。ハーフウェーライン付近でボールを受けたルキアンの前には大きなスペースがあり、ドリブルでボールを運んでいきます。ルキアンは対応した楠本をかわしてペナルティエリアに進入し、冷静にゴールへ流し込みました。
山口は攻撃に人数をかけたもののシュートで終わることができず、パスミスからカウンターを受け失点。ルキアンに対応した楠本は簡単に突破を許してしまい、同点を目指す中で逆にリードを広げられてしまいます。
高宇洋の奮闘
山口は2失点目を喫した直後に村田和哉や小松蓮ら3人を投入し、フォーメーションを4-4-2へと変更しました。ともに身長が180cmを超えているイウリと小松を2トップとし、右サイドハーフに村田、左サイドハーフに田中パウロ淳一(途中出場)を配置。山口は途中出場の村田と田中パウロを中心にサイドから攻める場面が増えていきます。
65分、中盤でボールを奪った高が右サイドの村田にパスを送り、村田は縦へ仕掛けてクロス。クロスは相手に当たってしまったものの、中には2トップの2人が走り込んでいました。また、73分には左サイドで田中パウロがドリブルで仕掛け、中盤を経由して右サイドの村田まで繋ぎ、村田がクロス。得点にはなりませんでしたが、サイド攻撃を中心に磐田のゴールを狙っていました。
個人スタッツを比較しても、スタメンで出場した高井・森より途中出場の田中パウロ・村田のクロス数が多いことが分かります。ただ、4選手ともクロス成功は0本であり、ウイングのクロスがゴールに結びつくことはありませんでした。また、4選手合わせてシュートはわずか1本であり、クロスだけでなくシュートを打つことが得点のために必要になってくるのではないのかなと思います。
ここで、65分と73分の2つのシーンでともに起点となった高に注目したいと思います。65分のシーンでは、中盤でボールを奪い、2人をかわして前へ。また、73分のシーンでも自陣でボールを受けた後、ドリブルで2人を抜き敵陣までボールを持ち運んでいきました。
この試合、高は両チーム通じて最多のパス本数を誇っており、パス成功率も93.3%と非常に高い結果となりました。また、ヒートマップを見ると自陣だけでなく敵陣でもボールタッチ数が多く、ピッチ全体に顔を出していたことが分かります。
J2再開後、高は3試合連続フル出場となりましたが、チームの中で最も動き回っていた選手でありチームの中心になっていました。キャプテンの池上がベンチに退いたあとはキャプテンマークを巻いてプレーし、霜田監督やチームからの信頼も伺えました。
2トップによる得点
サイドからのクロスを中心に攻めていた山口でしたが、85分にようやく1点を返します。
まず、左サイドの田中パウロが右サイドの川井歩(途中出場)へパスを送りサイドを変えます。川井は前線への出しどころを見つけられずセンターバックの楠本へ戻しますが、楠本から吉濱遼平(途中出場)を経由してボールは左サイドの高(左下図の6番)のもとへ。高がボールを受けた瞬間に小松(左下図の18番)がスペースへ走り出し、高からのパスを引き出します。敵陣深くに抜け出した小松がワンタッチでクロスを上げると、中央のイウリ(右下図の9番)が飛び込んでゴールを決めました。
山口は前半からサイドチェンジを繰り返し、後半はサイドからのクロスを中心に攻撃していました。磐田の守備陣にサイドを意識させたことでこの得点が生まれたのではないでしょうか。高がボールを受けた瞬間、磐田の右サイドバック小川大貴(左上図の24番)はタッチライン際にいる安在(左上図の24番)へのパスを意識して安在の方へ動きました。この動きによって小川大貴とセンターバック藤田義明(左上図の33番)の間にスペースが生まれ、ギャップができたことによって高から小松へのパスが通ったと考えられます。
イウリのゴールで1点を返した山口でしたが、追いつくことはできず。試合は2-1で磐田の勝利となりました。
総括
前半は磐田の猛攻をなんとか無失点で凌いでいたものの、前節同様コーナーキックから先制点を与える展開に。後半は前がかりになったことによって生まれた自陣のスペースをルキアンに利用され追加点を与えてしまいました。終盤にイウリのゴールで1点を返したものの2-1で試合は終了。山口は第2節から3試合連続複数失点となり、2連敗となってしまいました。
スタッツを見ると、ボール支配率やパス成功数では磐田を上回っているものの、シュート数は磐田の半分以下となっています。また、枠内シュートに関しては磐田よりも10本以上少ない結果となってしまい、点差以上の差を感じさせられる試合内容でした。
第5節は7/15(水)、徳島のホームに乗り込んでの一戦です。
中3日での試合ですが、セットプレーでの守備を中心にしっかり修正して無失点で勝利して欲しいと思います。
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