J2再開後、1分2敗と勝利がないレノファ山口FC。

第5節は徳島ヴォルティスとアウェーで対戦しました。

   フォーメーション図 フォーメーション図

J2は今季初の水曜開催となり、両チームともに前節から中3日での試合となりました。前節勝利を収めた徳島はスタメンを4人変更。一方、前節ジュビロ磐田に敗れた山口は1人のみの変更で、右ウイングに入ったルーキーの浮田健誠はJ初スタメンとなりました。


徳島が主導権を握る

前半、山口は攻守両面において徳島に何もさせてもらえませんでした。多くの時間で徳島がボールを持ち、山口は守備に追われる展開となります。徳島は3バックとダブルボランチを中心にパスをつなぎ、シャドーやウイングバックの選手も流動的に動いて複数のパスコースを常に作り出していました。山口は中々ボールを奪うことができず、徳島に押し込まれていきます。攻撃では徳島の連動した守備を前にパスコースを作りだせず、ペナルティエリアに進入する場面はほとんどありませんでした。

徳島が主導権を握って迎えた21分、徳島に先制点が生まれます。

右サイド(山口の左サイド)の深い位置でボールを持った藤田征也はペナルティエリア角付近でフリーの内田航平へパス。内田はダイレクトでキーパーとディフェンスラインの間へ速いクロスを送ります。山口のセンターバックがクロスへの反応が遅れる中、垣田裕暉が走り込んで合わせゴールへ流し込みました。


このシーンでは、アシストをした内田が右サイドでフリーになっていました。なぜ山口の選手は内田をマークしていなかったのでしょうか。その要因について両チームのシステムの噛み合わせという観点から分析したいと思います。

上の図は先制点が生まれる約15秒前の状況を示したものです。山口の4バックに対して徳島は最前線に5人いることが分かります。この時、中央には1トップ2シャドーの3人がいるため、安在和樹(上図の24番)と武岡優斗(上図の41番)の両サイドバックは中央寄りにポジションをとらなければなりません。そのため、サイドで高い位置をとっている徳島の両ウイングバックがフリーになります。

徳島は岩尾憲から西谷和希、杉森考起とパスを繋ぎ、杉森が右サイドの藤田(下図の22番)へパスを送ります。この時、安在が中央寄りのポジションをとっていたため、ウイングの高井和馬(下図の11番)が下がって対応しました。ただ、高井が最終ラインまで下がったことにより、高井がいたスペース(左サイドのペナルティエリア角付近)が空いてしまい、後方から上がってきた内田(下図の6番)にそのスペースを使われてしまいました。

徳島の1トップ2シャドーをフリーにさせないために、山口のサイドバックは中央寄りにポジションを取らざるをえませんでした。そのため、サイドに展開された時にウイングが下がって1人で対応しなければならず、徳島の最終ラインが上がってくることで山口は数的不利な状況になってしまいました。内田がトラップせずにワンタッチでクロスを入れたことで、山口の選手は間合いを詰めることができず。また、センターバックのクロスに対する反応も遅れたことで徳島にゴールを与えてしまいました。


コーナーキックからの失点

失点からわずか3分後、コーナーキックから追加点を奪われてしまいます。

藤田がニアサイドへ蹴ったボールに対し、岩尾がファーサイドから走り込んでヘディング。高い打点で捉えたボールはそのままゴールへ入り、2-0となりました。

山口は3試合連続でコーナーキックから得点を奪われてしまいました。岩尾をマークしていた武岡はニアサイドへ走り込んだ岩尾についていけず、フリーマンだったイウリも徳島の選手に体を入れられて競り合うことができませんでした。その結果、岩尾はフリーでヘディングすることが可能となり、気持ちよくシュートを打たせてしまいました。


中心選手の負傷

2-0とリードを広げられた山口はアクシデントによって前半のうちに2枚の交代カードを切ることになってしまいます。35分、試合前のウォーミングアップからアクシデントを抱えていたイウリがピッチを後にしました。また、相手選手との交錯で右足を痛めてしまった高宇洋も40分に交代となりました。

第4節まで全試合にスタメン出場、毎試合85分以上プレーし今シーズン2得点を挙げているフォワードのイウリ。そしてここまで全試合フル出場を果たしてチームの中心になっていたボランチの高。2点を追いかける中で、チームに欠かせない2人が前半途中での交代となってしまい、厳しい戦いを強いられることになってしまいました。


ハイプレスが機能せず

後半、山口は積極的にボールを奪いにいきます。イウリとの交代でトップに入った小松蓮が前線から追いかけ、両ウイングやトップ下の池上丈二も高い位置からプレスをかけます。ただ、キーパーの長谷川徹を含めてボールを回す徳島に対し、パスコースを限定させることができずほとんどボールを奪うことはできませんでした。

徳島のパスミスから高い位置でボールを奪いシュートを放つ場面も何度かありましたが、枠内に飛ばすことはできず。74分には左サイドでボールを奪いサイドチェンジから途中出場の森晃太がクロスを上げ、池上が強烈なシュートを放ちましたがポストに直撃。得点を決めることはできませんでした。


2-0のまま迎えた84分、次の1点が徳島に入ります。

パスを繋ぐ徳島の最終ラインに対し、ボランチも含めてプレスをかけた山口でしたがボールを奪えず。フリーでボールを受けた鈴木徳真が自陣からドリブルでボールを持ち運びます。鈴木は敵陣中央までボールを運び、斜めの動きで最終ラインの背後へ抜け出した垣田へスルーパス。垣田は落ち着いてシュートを決め、3-0となりました。

さらに試合終了間際には4点目を奪われてしまいます。

徳島の右サイドでパスを受けようとした鈴木に対し、センターバックの菊地光将と途中から左サイドバックに入っていた橋本健人の2人がプレスに行ってしまいます。鈴木がワンタッチでタッチライン沿いの岸本武流(途中出場)へパスしたことで、岸本はフリーでボールを受けることができ、縦へボールを運んでいきます。岸本はゴールライン近くまでドリブルし、中へクロス。これを途中出場の河田篤秀がボレーシュートでゴールへ突き刺しました。

失点パターン

山口はこの試合4点を奪われましたが、そのうち2点はクロスから1点はセットプレーからの失点でした。前節までの失点パターンを確認すると、セットプレーとクロスからの失点が全体の半分以上を占めており、セットプレー(特にコーナーキック)とクロスへの対応が山口の大きな課題であると言えます。


総括

基本スタッツ

試合は4-0となり、山口は完敗でした。ボール支配率やパス成功数で徳島に圧倒され、シュート数も倍以上打たれてしまいました。山口は枠内シュートが2本と少なく、チャンスを作り出せていませんでした。今節もコーナーキックやクロスから失点し、複数失点は4試合連続となってしまいました。


第6節は7/18(土)、ホームでのFC琉球戦となります。

4-0の敗戦からどのようにチームを立て直すのか、注目したいと思います。