開幕節以来の勝利を目指すレノファ山口FC。

第6節はホームでFC琉球と対戦しました。

   フォーメーション図 フォーメーション図

山口は今シーズン初めて4-4-2でのスタートとなりました。4失点で敗れた前節から6人を入れ替え、山田元気やヘナンらが今季初スタメン。一方の琉球は3日前の前節から2人のみの変更となりました。


先制点につながるコーナーキックの対応

前節まで3試合連続でコーナーキックから失点していた山口。今節もコーナーキックの流れから相手に得点を許してしまいました。

7分、琉球はコーナーキックの場面で5人がペナルティアーク付近に固まります。山口はマンマークで対応しますが、ニアサイドへ走り込んだ李栄直にイウリがついていけずフリーでヘディングさせてしまいました。李栄直のヘディングは小松蓮が体に当てて防いだものの、こぼれ球を拾われ茂木駿佑にミドルシュートを打たれます。シュートに対して菊地光将が頭を出しコースを変えますが、ボールはゴールの中へ。山口は4試合続けて先制点を奪われてしまいました。


前節の失点同様、ニアサイドへ走り込む選手をフリーにしてしまい、相手にシュートを許してしまいました。今節はコーナーキックからのヘディングがそのまま得点になったわけではありませんでしたが、こぼれ球からシュートを決められてしまいました。コーナーキックに限らずセットプレーは試合の流れを変える可能性があるため、セットプレーからの失点を減らさなければ山口が上位にいくことは難しいと思います。


今シーズン初の同点弾

4試合続けて先制点を与えてしまった山口ですが、失点からわずか3分後に追いつきます

自陣でボールを奪った山口は左サイドの高井和馬が中央でフリーの吉濱遼平へパス。吉濱はボールを持ち運び、右サイドを駆け上がってきた川井歩の前方へパスを出します。追いついた川井が深い位置からクロスを上げ、ゴール前でイウリがヘディングシュート。叩きつけたボールがゴールに入り、山口は1-1の同点としました。


この場面では、川井の正確なクロスとイウリの強いヘディングシュートが同点弾を生み出しました。クロスの質や決定力の高さが得点の要因だったことは間違いありません。ただ、それらと同等かそれら以上に大きな要因が2つほどあったと思います。

1つ目は高井から吉濱へのパスです。高井(上図の11番)がボールを持った時、アンカーの上里一将(上図の20番)をはじめ琉球の選手が山口の左サイドに寄っていました。そのため中央に大きなスペースが生まれ、吉濱(上図の14番)がフリーになっていました。ここで高井は低くて速いパスを吉濱の前方へ送ります。このパスによって山口は速い攻撃が可能となり、琉球の守備が整う前にゴールへ向かっていくことができました。

2つ目は吉濱のドリブルです。上の図はパスを受けた吉濱(上図の背番号14)が前を向いてドリブルを開始した時の状況を表しています。右サイドには川井(上図の背番号26)が上がってきており、2対1と数的優位な局面ができていました。ここで、吉濱は川井へパスを出さず、ゴール方向(吉濱の左斜め前)へ向かってドリブルします。対応していた琉球の沼田圭悟(上図の背番号14)はドリブルする吉濱についていきますが、その間に川井はさらに前方へ駆け上がります。

吉濱は敵陣中央までボールを運び、沼田が距離を詰めてきたところで、上がってきた川井の前方へパスを出しました(下図)。吉濱が一度左前へボールを運んでから右サイドの川井にパスを送ったことで、川井は敵陣の深い位置でボールを受けることができました。また、沼田を中央に引きつけたことで、センターバックの李栄直(下図の背番号9)がサイドへ出て川井の対応をしなければならない状況を作り出しました。身長187cmの李栄直がサイドへ出たことで、ゴール前の高さでは山口に分がある状況となり、イウリがフリーでヘディングすることが可能になったのだと思います。


今シーズン、山口は相手にリードされると一度も同点にできていませんでした。しかし、今節は失点からわずか3分後に追いつきました。この同点弾は高井から吉濱への低くて速いパス吉濱のゴール方向へのドリブルがあったからこそ生まれたものだと思います。


前線のプレス

1-1となった後、山口は攻守で良いプレーを見せていました。攻撃時には選手間の距離が良く、ワンタッチパスや縦パスを効果的に使うことができていました。また、センターバックからサイドハーフや高い位置を取るサイドバックに長いボールを送るなどピッチを広く使って攻めていました。

守備では2トップが相手のセンターバックやキーパーにプレスをかけてボールを奪ったり、長いボールを蹴らせてマイボールにしたりするなど前線の選手の頑張りが目立ちました。また、自陣に攻め込まれた場合でも今季初スタメンとなったヘナンを中心にしっかり対応し、ゴールを許しませんでした。


攻守両面で集中してプレーしていた山口は、42分にカウンターから得点を奪います。

センターサークル付近でパスを受けた鈴木大誠に対し、高井が猛然とプレスをかけます。高井は鈴木のトラップが乱れたところを突いてボールを奪い、キーパーとの1対1を迎えます。高井がしっかりシュートを決め、山口は勝ち越しに成功しました。


攻守で躍動したヘナン

後半も主導権を握っていた山口はコーナーキックから3点目を奪います。

池上が右足でインスイングのボールを入れ、ファーサイドでヘナンがヘディング。相手に体を当てられていましたが、ヘナンは強く叩きつけ、シュートはゴールへ入りました。ヘナンの来日初ゴールで3-1とリードを広げました。

    守備スタッツ - ヘナン ヒートマップ - ヘナン

点差を2点に広げる貴重なゴールを決めたヘナンですが、この試合では守備面でもチームに貢献していました。守備スタッツを見て分かるように、空中戦は4度全て勝利、クリア6回にブロック4回とチームのために奮闘していました。空中戦勝利数・クリア数・ブロック数はいずれもチーム最多であり、個人的にはこの試合のMOMだと思います。


ヘナンは昨年5月の試合で左アキレス腱を断裂する大怪我を負ってしまいました。ピッチを退く際には悔し涙を見せるなど、熱い気持ちを持っている選手です。昨年まではセンターバックを主戦場として戦っていましたが、今年はボランチのポジションに挑戦。昨年の悔しさを力に、次節以降も活躍してくれることを期待したいです。


途中出場の若手の活躍

3-1とリードを広げた山口は、途中出場の若手選手も生き生きとプレーしていました。

71分からトップの位置に入った16歳の河野孝汰は短い時間の中で2本のシュートを放ち、可能性を感じさせるプレーを見せてくれました。また、右サイドバックのポジションで80分から出場した21歳の田中陸は長い距離を駆け上がってゴールを決めました。

83分、田中陸が自陣で相手のボールを奪い、近くの河野へパスを繋ぎます。田中陸は前線へ駆け上がり、河野は最前線のイウリへパス。イウリが右サイドからドリブルでボールを持ち運び、田中陸は中央からゴール前へ上がっていきます。イウリはペナルティエリアに進入し、相手が寄せてきたところで中の田中陸へパス。田中陸がワンタッチでシュートを放ち、プロ初ゴールを決めました。


途中からピッチに入った若手選手が躍動し、試合を決定付ける4点目を奪いました。試合はこのまま4-1で終了。山口は今シーズン初の逆転勝ちで開幕戦以来の勝ち点3を獲得しました。


総括

基本スタッツ

山口は今季最多の4得点で逆転勝ちを収めました。ヘナンや田中陸のJ初ゴールが生まれるなど勢いがつく勝利だったと思います。ただ、守備面ではコーナーキックからの失点が続くなど課題がありました。失点は1に抑えましたが18本ものシュートを琉球に打たれるなど、後半は攻め込まれる時間が多かったです。それでも、今季初出場の山田元気が集中してゴールマウスを守り、守備陣も最後まで体を張っていました。次節は無失点で勝利してくれることを期待したいと思います。


第7節は7/25(土)、アウェーでギラヴァンツ北九州との関門海峡ダービーです。

今節の流れを継続して、連勝してほしいです。