前節の引き分けによりJ2最下位を抜け出したレノファ山口FC。

第19節は水戸ホーリーホックとアウェーで対戦しました。

   フォーメーション図 フォーメーション図

両チームともに3バックのシステムを採用しました。ともに引き分けた前節から水戸は6人、山口は1人スタメンを変更。村田和哉は山口加入後初スタメンとなりました。


村田のスピード

序盤、山口は村田のドリブルやスピードを活かし、右サイドから攻めていました。

攻撃時にタッチライン際にポジションを取ることが多かった村田はボールを受けると、前を向きドリブルで縦へ仕掛けていました。12分にはハーフウェーラインを少し越えた辺りでパスを受けると、そこからドリブルを開始。ボディフェイントを使って対応したディフェンダーを抜くと、右サイドを駆け上がりキーパーとディフェンスラインの間を狙ってクロスを入れました。相手にクリアされたため味方には繋がりませんでしたが、スピードあるドリブルで相手の守備を慌てさせました。

また、16分にも田中陸のスルーパスに抜け出しクロスを上げるなど、この試合では何度も右足でクロスを入れていました。56分間の出場でクロス数は7本を記録。ただ、クロス成功数は0であり、得点に繋がるクロスを上げることはできませんでした。

    攻撃スタッツ - 村田 和哉 ヒートマップ - 村田 和哉


ポジショニング

18分、山口は池上丈二がペナルティエリア内で奥田晃也を倒してしまい、水戸にPKを与えてしまいました。PKは山口一真が決めて、水戸が先制。山口は3試合連続で先制点を取られてしまいました。PKでの失点となってしまいましたが、個人的にはPKを与えるまでの守備が良くなかったと思います。

上の図は池上が奥田を倒す15秒程前の場面を表したものです。この場面の直前、水戸の右ウイングバック河野諒祐(上図の17番)が後ろ向きでボールを受けたため、山口の左ウイングバック田中パウロ淳一(上図の7番)が全速力でプレスをかけにいきました。その結果、河野を水戸陣内へ押し出すことに成功。それを見た浮田健誠(上図の16番)は河野がボールを下げると思ったのか、前方へ動き出しました。

しかし、河野は浮田の逆をついて安東輝(上図の青8番)にパス。浮田が前方へ動いたことで、安東はフリーでパスを受けることが可能になりました。山口は池上(上図の10番)が素早くプレスをかけましたが間に合わず。安東から森勇人(上図の20番)を経由して逆サイドに展開され、その後にPKを与えることとなってしまいました。

山口としては、田中パウロがハーフウェーライン付近までプレスにいった時点で、最低でもボールを下げさせなければいけなかったと思います。ただ、浮田が早めに前に出てしまい安東へのパスコースを開けてしまったことで、下げさせることができませんでした。もちろん、これがPKの直接的な要因になった訳ではありません。ただ、簡単に前に繋がせてしまったのは良くなかったと思います。


ピンチの連続

先制された山口は両サイドからのクロスを中心に同点ゴールを狙っていきました。ただ、シュートまで持っていくことはほとんどできず。前半はわずかシュート2本に終わってしまいました(参考:https://www.football-lab.jp/r-ya/report/?year=2020&month=09&date=13)。

逆に水戸は前半だけでシュート11本。山口は何度も追加点のピンチを迎えました。

41分には最終ラインの裏へ抜け出した中山仁斗が飛び出してきたキーパーをかわして、ペナルティエリア右からシュート。角度が厳しかったこともあり、シュートはポストを直撃しました。ゴール前に跳ねたボールに反応した山口一真のシュートはキーパーの吉満大介が戻ってセーブ。山口はなんとか失点を免れました。

アディショナルタイムにも、ディフェンスラインの背後をついた山口一真がへナンを振り切って決定機を迎えました。ただ、シュートは吉満の体に当たりゴールとはならず。水戸は追加点を奪うことはできませんでした。

山口は高い最終ラインの裏を狙われ、何度も失点の危機を迎えました。このような場面は今シーズン多く見られており、ほとんどの対戦相手は背後のスペースを徹底して狙ってきているように感じます。もちろん山口も対策は練っていると思いますが、防ぎきれない試合が続いています。最終ラインの背後を取られると決定機になってしまうので、そのような局面を1回でも少なくすることが重要になると思います。



被カウンター

1-0と水戸の1点リードで迎えた後半、山口は安在和樹を投入してフォーメーションを4-2-3-1に変更しました。攻撃に重きを置いた山口でしたが、最終ラインの枚数が1枚減ったこともありカウンターからピンチを招く場面が連続しました。相手のパスずれやオフサイドに助けられ辛うじてしのいでいましたが、52分、ついに2点目を決められてしまいました。

水戸陣内深くでボールを持った前嶋洋太がパスコースを探しながらボールを前に運びます。山口にパスコースを切られていたため、前嶋はスピードを上げてさらに前進。へナンと田中陸に囲まれそうになったところで前嶋は森勇人にパスを出し、森勇人とのワンツーで2人をかわして敵陣に進入します。前嶋は山口の最終ラインの背後にスルーパス。抜け出した山口一真にボールが渡り、山口一真はペナルティエリアに進入して左足でシュートを放ちました。これがゴールに決まり水戸がリードを2点に広げました。

また、57分にはショートパスで中央を崩し最後は中山がシュート。水戸が立て続けに得点を奪い、3-0となりました。

    攻撃スタッツ - 山口 一真 ヒートマップ - 山口 一真

    攻撃スタッツ - 中山 仁斗 ヒートマップ - 中山 仁斗

山口は前半途中から決定機を多く作られ、後半に2点を追加されてしまいました。この試合、水戸の2トップは2人合わせて18本ものシュートを記録。決定機やシュート数の多さを考えると、もっとゴールが決まっていてもおかしくなかったと思います。


待望の今季初ゴール

水戸の3点目の直前、山口は小松蓮・森晃太・高井和馬の3人を投入していました。この3人の活躍により山口は追い上げを見せます。

61分、右コーナーキックを得た山口はショートコーナーを選択。森晃太はドリブルで仕掛けてペナルティエリア角付近から左足でクロスを入れます。ファーサイドのほぼゴールライン上で高井がヘディングすると、ボールはキーパーに当たってゴールの中へ。高井の第6節以来の得点で山口が1点を返しました。

66分にはへナンからの縦パスを高井がフリックし、小松へパスが繋がります。小松がペナルティエリア手前から左足でシュートを放つと、ボールは相手2人に当たりながらもゴールの中へ転がっていきました。山口は5分間で2得点。3-2と1点差まで追い上げました。

    攻撃スタッツ - 高井 和馬 ヒートマップ - 高井 和馬

    攻撃スタッツ - 小松 蓮 ヒートマップ - 小松 蓮

小松は18試合目の出場にして待望の今季初ゴールとなりました。前々節にはPKを失敗してしまうなど小松自身、得点が取れずに悔しい気持ちがあったと思います。そんな中、綺麗なゴールではなかったかもしれませんが、今季初ゴールを取ったことは本人にとって非常に大きいと思います。懸命に守備をしたり、諦めずにボールを追いかけたりする姿を見ていたので、チームのために動ける小松にゴールが生まれて非常に嬉しかったです。


パスミスから4点目を献上

1点差まで追い上げた山口でしたが、同点ゴールを決めることはできませんでした。終盤には眞鍋旭輝のフィードミスからカウンターを受け、途中出場のアレフピットブルにゴールを決められ4-2。リードを広げられて試合を終えることとなってしまいました。

眞鍋は82分にもフィードミスをしており、終盤にキック精度の低下が見られました。眞鍋は大卒ルーキーながら、第9節から11試合連続スタメン出場。けが人が多い山口の最終ラインを任されています。過密日程の中、1年目ながら試合に出続け疲労も溜まってきていると思います。今節は疲労の影響もあってか、終盤にパスミスから失点を招いてしまいましたが、この失敗を糧にもっと成長していってほしいです。

   攻撃スタッツ - 眞鍋 旭輝 守備スタッツ - 眞鍋 旭輝


総括

基本スタッツ

山口は今シーズン最多タイの4失点。シュートは29本打たれ、もっと点を取られていてもおかしくない内容でした。ただ、高井の第6節以来のゴールや小松の今季初得点で2試合連続の複数得点となったことは、チームにとって好材料だと思います。


第20節は9/19(土)、ホームで東京ヴェルディと対戦します。

8試合ぶりの勝利のために、前半のうちに複数得点をあげるくらいの勢いで試合に臨んでほしいです。